短編「ルーズリーフ」
- カテゴリ:自作小説
- 2010/12/24 01:21:23
「ルーズリーフ貸して」
「はい」
「さんきゅ」
僕らの交わした会話は、これぐらいにしか価値のないものだった。
でもあの時過ごした時間には、少しでもいいから価値があったと思いたい。
転入生として。
あいつは何故かふらっとこの町にやってきた。
なんていうかつかみどころがなくて、普段から何考えているんだか分からない、そんな奴。おまけに無口だったもんだから、なおさらよく分からなかった。
今思えば、あいつはあいつで自分なりに考えていることがあったのだろう────だなんて、つまらないことを考えてみる。だけどそんなのは至極どうでもいい話だ。
とりあえず、彼は本当に何も喋らなかった。当たり前だけど、友だちも出来なかった。ちょっとでもいいから自分の思ってることぐらい素直に喋ればいいのに、なんて当時隣の席だった僕も思っていたけれど、もうすぐ彼が僕に話しかけてくることになるだなんて、その時は思ってもいなかった。
「ルーズリーフ貸して」
何の前触れも無く何の躊躇も無くあいつはつぶやいた。
言うまでもなく僕は戸惑う。
まあそりゃあ全然喋らないあいつが僕に対して話しかけてくるだなんて想定外だったということもあるが、それ以前に今は授業中だったからである。
いや、案外これは普通のことなのかもしれない。ルーズリーフが必要になったときにはやむを得ず誰かから借りるしかないだろうし、一応授業中である今現在において話しかけることのできる人間は隣の席の人間に限られてくるし。
「はい」
とりあえず無視するのも変なので渡しておく。
返ってきたのは意外な返事だった。
「さんきゅ」
なんだ、やけに軽々しいじゃないか。
しかし話したこともない人間だったとしても、クラスメイトである限り普通であることなのかもしれない。友だちだったら当たり前だ、なんて自分で勝手に納得する。
『友だち』というその単語に僕は少しの違和感を覚えた。はたして、僕らは友だちなのか? まあその頃の僕らが友だちだったかそうではなかったのかのジャッジは曖昧なところだが────何ヶ月かの時を経て僕らはもう十分に友だちと呼べる関係になっていた。まあ、あいつが無口なのは変わらなかったけど。
だけど。
転校生として。
あいつは何故かふらっとこの町を出て行った。
この町に来たときと同じように、ふらっと出て行った。
なんでだよ。
なんで転校なんかしたんだよ。
僕ら、友だちだっただろ?
なんで何も言わずに出て行ったりしたんだよ。
そんな僕の心の中の叫びなんてお構い無しに、いつもあいつと一緒に帰っていた通学路にはカラスがうるさく飛びまわっていた。
もちろん、彼も何も残さずに去ったわけではなかった。
僕の家の郵便ポストに、一枚のルーズリーフが入っていたのだ。
『好きなように書け』
ルーズリーフには小さな字でそう書かれていた。
なんだよこれ、もしかしてずっと前に僕が貸したルーズリーフを返しにきたのか?
しかも相変わらず、文面になっても無口なのはそのままなんだな、なんて僕は笑った。
それにしても随分昔のことだから、僕もあんまり覚えてない。あいつも今になって思い出したことなのかもしれないし、ずっと返しそびれてたのかもしれない。
だけど僕はいつまでたっても、この文章に書かれたことを深読みしてしまう。『好きなように書け』だなんて意味有りげな言葉、深読みしない方がおかしいと僕は思う。
あともう一つ、不思議なこと。ポストの中に入っていたルーズリーフはところどころ破けてぼろぼろだったし、折り目もついていた。だけどそれは、僕の使っていたルーズリーフと同じメーカー、同じ材質、同じ厚さ、同じ行数、それと僕の癖であった四隅の折り目まで何もかもすべて同じだった。
そう、そのまさかである。ポストの中に入っていたルーズリーフは、僕があの時あいつに貸したルーズリーフそのものであったのだ。あいつはルーズリーフが必要だったんじゃなかったのか?だとしたらなんで使わなかったんだ?
僕は、こう考えている。あいつは友だちが欲しかったんじゃないかって。誰かと話すきっかけが欲しかったんじゃないかって。
あいつとは未だに連絡もつかないけど、僕はあいつに出会えてよかったと思っている。でも、あいつが居なくなったからといって落ち込んだりすることない。そんなことは、あいつだって望んでいないはずだから。
『好きなように書け』
だから僕は、自分だけのルーズリーフに、自分だけの道のりを書いていこうと思う。失敗したら、もう一度綴じ直せばいい。だってルーズリーフって、そういうものだろう?
僕は自分の行き方に誇りを持って生きていくことにする。それは僕のたった一人の親友が教えてくれた生き方なのだから。
どうしよう・・・
待ってますぞよ☆←
読んでくれてありがとう!
俺も久し振りに読んだけど、またこんな話書きたいな・・・
なんか、すごく感動するような…
改めて、すごぉぉぉくいいお話しだと思いました!
これからも仲良くしていただけると嬉しいです^^
もしかしてこれって夢!?夢なんだよね!?
という訳でみなさんコメント感謝です^^
次の小説のお題も出してくれるとうれしいです☆
あと、
すっごい長く書けるなんて(・0・)
うちも、
見習わないと!!
タイトルだけはつかったんですねww
転校生かっけええ!!!ww
今回は友情をテーマに書いてみました。
字数多いくせにわかりにくいですね、すみません。
駄目出し、感想などありましたら是非コメントください。
それと、「小説について2」見ていってくださいな。。。