Nicotto Town


COME HOME


「見えない糸がたどる先」

見えないという。
不確かだという。
曖昧で、脆くて、美しくて、愛おしくて。
そんなものだという。
私とあのコに架かる、何かを。

 きずな。
分厚い辞書で調べてみれば、五つの漢字が出てきた。
「絆」「紲」「絏」「緤」「羈」

人とのつながりを、私達はこう呼ぶ。
何気なく舌にのせて音にする。何気なくインクにのせて文字にする。
たった三音で、たかが一文字で言い表せるほど単純なモノではないのに、
気安く軽々しく意味も無く周りは使う。でもそれの、なんて羨ましいことか。
誰かと誰かを結ぶ存在を、
見たこともないくせに名をつけて認めているのは紛れもなく私達。
それに脅えているのは、紛れもなく私だった。

 あのコはよく笑っていた。
笑えばその場はたちまち大きなひまわりでも咲いたかのように明るく華やいだ。
そんなコだから、いつでも輪の中心にお呼ばれしていた。
そんなコだけど、大体私の隣にいた。 

いつだかの話。
「取り巻きはたくさんいるけれど、本物はアナタだけ」
と鈴を転がすように瞭然と澄んだ声で、そのコは残酷なことを言いのけた。
いくらその場にいないからって、
キミを好いてくれるヒトにどうしてそんな非道いことを言えるのだろう?
無邪気な笑顔に鳥肌がいっぺんにたった。
「ね、ずっと一緒だよね? ね。ね?」
朗らかに宣言された束縛に頷くことしかできなかった。

 「――――、――――!」
さくらんぼみたいに鮮やかで艶やかな唇が綻ぶ。
うす桃色のほっぺではにかみながら小さな足取りで私に近づく。
トコトコトコと小動物のような足音が彼女をよりかわいげのあるコへの手助けをする。
「なあに?」砂糖みたいな女の子の円らな瞳と向き合う。
睫がこんなにも長くって、小さい顔の中で大きい目が更に大きく見える。

「あのね、あのね」
「うんうん、うんうん」

他愛もないおしゃべり。
周囲には間違いなくとっても仲のいい者同士として映るだろう。

名前を呼べば満面の笑みで振り向いてくれる。
小鳥のさえずりで私の名をくちずさんでくれる。
手をふって、ふりかえし。
あたたかなやりとりのはずなのに。 

どうして足が竦むのだろう。
どうして肩が震えるのだろう。
どうして頬が引き攣るのだろう。
どうして冷や汗が流れるのだろう。 

これはきっと「絆」なんて生温いものではないのだ。
手錠も足枷も首輪もないけれどそれはれっきとした轍なのだ。
私を何重にも縛り上げ身動きを封じるイトの先は、あのコに繋がっている。
確信のもと私は断言できる。

悪徳を偽善に
涕泣を微笑に
憎愛を慈愛に
罵倒を睦言に 

変換を強要されてあのコに愛されてしまった。

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2010/12/22 19:11
友達って難しいねー(´・ω・`)




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