『ノルウェイの森』鑑賞しました!
- カテゴリ:映画
- 2010/12/19 20:59:02
昨夜、話題の村上春樹原作、トラン・アン・ユン監督の映画『ノル
ウェイの森』を鑑賞してきました。
美しい森、木々、ミドリ・・・・・、美しい湖、池、川、雨、雪、ミズ・・・
・・・、ノルウェイの森という小説の美しい世界観が圧倒的な映像美
で描かれていました。
原作は一度しか読んでいませんが、初めて読んだときの印象のま
まにしておきたかったので・・・・・・、もう何年も前のことで記憶が
あいまいのところもあると思いますが、小説の導入部は確か主人
公ワタナベがハンブルク空港に着陸したとき機内のスピーカーか
らオーケストラ演奏の「ノルウェイの森」が流れてきていたと思いま
す。
「ノルウェイの森」は「Norwegian Wood」、この英語をジョン・
レノンが歌の歌詞の最後の方でオチのように使っていると古くから
言われているようですが、それは「Knowing She Would」とも
聞こえるからです。
このことは小説『ノルウェイの森』には重要なことだと思います。
つまり、「I was」が省略されていて、「ぼくは彼女がそうしたいこと
を知っていた、わかっていた」という意味になります。
ハンブルク空港に着いた30歳後半のワタナベが、そこから過去へ
フラッシュバックしていく形で本編が始まっていきます。
そしてこの小説の重要なところでは、ビートルズの「Norwegian
Wood」が流れてきます。
映画制作費などの問題があるでしょうが、ヒロイン直子の好きだっ
た「Michelle」などもっとビートルズの曲を流してほしかったです。
小説のタイトルにもなった「Norwegian Wood」、この曲の特徴
的なものはインドの楽器「シタール」が使われていることでしょうか。
この音楽世界にはまっているようだけど、どこかはまりきらない、
そんな不安定さがあります。そのことは、この世界に生きていて生きようとしているけれど、
どこか馴染めないで生きられないような気がするという小説の
世界観と重なってきます。
ビートルズの「Norwegian Wood」の歌詞の中に「This bird
has flown」という一節がありますが、曲名の副題でもあっ
たと思います。
「このかわいい小鳥は、飛んでいってしまった」という日本語訳に
なりますが、ここはメタファーで歌詞全体を読めば「彼女は行って
しまった(逝ってしまった)」という意味であることがわかります。
そしてこの部屋の住人彼女の部屋は、彼に「どこにでも座って」と
促していますが、彼は部屋中見回したがどこにもイスがなく仕方
なく敷物の上に座ったとあります。
そしてワインを飲んでいますね!、おそらくそこに座り込んで話を
しながら・・・・・・。
このワインを飲む歌の世界観は、映画の中にも反映されていまし
た。
何もない部屋は、何もない彼女の心の投影、何もない部屋は、彼
の存在の投影、人は完全なものではなく不完全なもの、それを補
うために人は人を求めていく、不完全な部分を補おうとします。
キズキと直子はワタナベにそれを求め、何かを必死で補おうとし
たのだと思われます。
レイコさんは最後にワタナベにそれを求め、補い新しい出発をし
ていきました。
「ノルウェイの森」はここまでにして、最後に確かあとがきに村上
春樹氏はビートルズの「A Little Help From My Friends 」をあ
げていたような記憶があります。
「a little Help」、「ちょっとした手助け」、みんなの力を借りれ
ばというベクトルを示していたような気がします。
すみません、何年も前に一度読んだきりなので・・・・・・(><;)
映画は主人公ワタナベ、松山ケンイチ氏の話し方がいいですね!
水原希子氏の当時のモダンな感じのミドリもかわいらしいです。
そして直子ですが、菊地凜子氏の演技力はいいのですが直子は
19歳~21歳ですよね?!年齢的にちょっと・・・という感じがあ
り、また横顔の映像シーンが多いので・・・という感じが・・・・・・・。
演技力をとると仕方がないのかもしれませんが・・・・・・。
全体的に、「ノルウェイの森」の1つの世界観が抽出された映画
だと思いました。
小説の重要な部分がちょっと抜け落ちていると思われるところも
ありましたが・・・、人は少しずつ足りないものを補いながら生き、
みんなが少しずつ「a little Help」しながら生きていく、生きて
いる人間の生きていこうとする力、人を通してしか世間と接点が
持てなかった人間、辛いことも嫌なこともいろいろとあるでしょう
が強く生きていこう、それでも生きていこう、そんな後味を残して
くれる作品でした。
映画の最後にミドリに聞かれて迷うワタナベ、それは私たち自身
でもあり、最後の方にワタナベが「死者とぼくの・・・・・・・」という
科白が印象的でした。
映画のエンドロールが終了しても、しばらく音楽が流れていました。
それはこの作品の余情でもあり、この作品を鑑賞したあとの余白
でもあると思いました。