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■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味(5)

■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味|上 生の哲理|二 (2)

併しながら此の種の思想に對する根本の難點は、認識して要望するといふ心理的順序が立たなくなるといふことであらう。善乃至神といふ理想は、其の實、理想みづからとしては、古來未だ曾て我等の知識に上つたことが無い。神といひ善といふものゝ内容は、人間に思想の歴史あつて以來、三千年の昔も今も同樣に茫漠であるといつてよい。茫漠として取りとめの無い一體物といふが如き意識はあつても、明確な認識は無い。又個々の事象に化着しての認識はあつても、此等を總括しての認識は無い。此に於いてか起こる疑問は、此の如き理想といふもの、畢竟は認識して而して要望するに非ずして、逆に先づ要望して而して認識するのでは無いかといふ事である。言ひかへれば、我等に先づ或る種の要望がある、之れを總括して要望其のものに認識作用を被らしたのが即ち理想では無いか。



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*註1:併しながら
「併し」は原本では正字体が用いられている箇所もあるがここでは「併」。

*註2:難點
「難」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/nan.jpg

*註3:認識・知識・意識
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg

*註4:要望
「要」の俗字。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
「望」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bou.jpg

*註5:善乃至神・神といひ
「神」の旧字体。「示」+「申」。
「乃至」は「ないし(接続詞)」。

*註6:内容
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。

*註7:歴史
「歴」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/reki.jpg
「史」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_humi.jpg

*註8:又個々の
「又」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mata.jpg

*註9:起こる疑問は
「起」の正字体。「走」+「巳」。

*註10:畢竟
「竟」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_tsuini.jpg

*註11:非ずして
原本には「非すして」とあるが誤植と思われるので改めた。

*註12:逆に
「逆」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註13:被らした
「被」の俗字体(か?)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hi_kaburu.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/05/23/初校)




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