映画の核心部分に触れるネタバレは回避しますが、勘のよい方にはわかってしまうかもしれませんので、ネタバレが嫌な方は読まないで下さい。

ハリーポッターとヤマト、どちらも「自己犠牲」がキーワードの映画で、どっちを観ようかな？　と迷っていましたが、アナライザーも出るらしいと聞いて、ヤマトにしました。

子供の頃夢中で見たアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の35年ぶり実写リメイクです。
監督は「三丁目の夕日」の山崎貴。
お話はアニメ劇場版の1と2をあわせたもので、２時間の尺にあわせるために色々な変更がなされています。
森雪のコスモタイガー、ガミラス（デスラー）、イスカンダル（スターシア）の在り様、勿論主人公の古代進は今風のちょっと軽い男です。
オープニングで「無限に広がる大宇宙」のナレーションで自分でも意外でしたが、落涙。
一番深いところにそっと触れられた気がしました。
このナレーションを筆頭に、アニメ版の名セリフがあちこちで使われています。
途中で諦めてハンカチ握り締めたまま観てましたｗ
いえ、シナリオが素晴らしかったわけではありません。むしろアニメを見ていて、本を少し読み込んでいる人間ならば、あまりにもお約束の展開に「ありゃ～」と感じる方もいるでしょう。
ただ、そういったものを凌駕するものがありました。
それは出演者全てから感じられる原作への愛です。
それはそうでしょう、出演者ほぼジャストオリジナルヤマト世代です。
あの西田（徳川）機関長からすらも「ヤマト」への愛情が感じられました。
色々酷評もあるでしょう、キムタクは徹頭徹尾キムタクでしたし、人間関係を重視したために、ヤマトの特徴であるワープや波動砲の使いかたが安くなったのは否定しません。
しかし、先にも述べたとおり２時間の尺に納めるため、旧作ファンの夢を壊さない（壊しても最小限で納める）為の努力には拍手を送りたいとおもいます。
もしキムタクだからと尻込みしている方がいるのなら、あえて言います。
キムタクだからこの程度の違和感で済んだのだと。
私は頭の中で色々な役者さんを置き換えてみましたが、どれも原作とはかけ離れていました。キムタクだからはなから「仕方が無い」と割り切れたのだとおもいます。
これが監督の計算だったとしたら、凄いことですが……

ストーリイは先にも述べた通り1と2の複合、目新しさは皆無ですが、演じていた役者さん達が素晴らしかったので、個々に感想。

真田志郎（柳葉敏郎）
原作から大きな変更もなく、また一番原作に近い役作りでした。実写ならこうだろうな、とおもわせる演技でした。
私は真田さんのファンだったので、後半はもう本当に……

島大介（緒形直人）
一児の父という変更あり。但し、古代進が一度軍から身を引いた直接の原因につながっている設定内容の変更でした。
相変わらず抑えた演技が上手い。

斎藤始（池内博之）
今回のヤマトで一番意外だった程、ハマってました。しかも、上手い。凄く、上手い。
ちょっとびっくり、彼の他の出演作、見てみようと思いました。

沖田十三（山崎努）
各レビューでは酷評されていますが、病を推してイスカンダルを目指し、志半ばで古代に指揮権を渡さねばならないほどの重病人の役は鬼気せまっていました。
後半軽い敬礼すらできなくなった艦長が、敬礼の代わりにウインクしたことに幾人の人間が気がついたのか……！　ここのシナリオは神でした。

森雪（黒木メイサ）＆古代進（木村拓哉）
好評価ではありません。が、この二人のありようがまさしく原作と実写の違いを端的にあらわしているとおもいます。
考えてください35年前のアニメをそのまま持ってきて、現代の観衆に支持されますか？
今春に公開されたアニメ版は酷評以前に鳴かず飛ばずでした。
もし、今、現代で、興行成績を上げて商品にするのなら、この二人のキャラクター変更は否めません。
良し悪しではありません。これが時代の流れだとおもいます。
主役の二人がどちらかでも旧作のイメージを残していたら、もっと違和感に苛まされたとおもいますが、きれいさっぱり、この二人はアニメのキャラから自由でした。
だからこそ、よかったとおもいます（賛否両論の嵐ですけどね）

100％素晴らしい映画だった、とは口が裂けても言いません。
何箇所も「……」とおもう場面、ありました。
が、もしキムタクだから、という理由だけで観るのを躊躇っているのなら、観てください。と申し上げます。
キムタクは先にも述べたとおり、徹頭徹尾キムタクでした。その潔さゆえに、過去の古代進を懐かしむ間もなく、頭の中では宇宙戦艦ヤマトの戦闘班班長になってしまいます。

古代進は確かにいませんでした。キムタクはいたけれど……
待つ女森雪もいませんでした。未来をつかむ強さを秘めた女はいたけれど……

でも、映画を作った全員が35年前のアニメへのオマージュを貫いた、良作品でした。

ちなみに、海外での公開もきまっていると思いますが、日本人独特の美学が海外で受けるとは思いませんので、苦戦すると思います。