創作小説「ジオラの記憶」(1/3)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/30 22:17:40
はい。復活遊戯シリーズの短編でございます
「雷獣」よりも過去に何があったのかを説明するために書いたお話でーすww
短編ですので3話で終わります。
北院の奥。
聖剣が奉じられた祭壇の前に一人の男が佇んでいた。精悍な表情には年を重ねるにつれ刻まれた皺がいくつも見られる。
風を司る北の法術院。現在の北院の長を務める、ジオラだ。
静かな空間に時折、聖剣が小さく反応を示すのを黙って見ている。
聖剣――『風の聖剣』と呼称されるそれは、かつての創建国者の宝剣。
東西南北にある法院にはそれぞれ『地の金貨』『水の聖杯』『火の聖棒』が奉じられている。
自ら持ち主を選ぶとされ、選ばれた者が法院の長となる。
反応を繰り返す聖剣を見つめ、ジオラは今ここにいない養い子である青年の無事を祈る。
死に別れた親友そっくりに育った、忘れ形見の片割れ、エンユ。
妙な胸騒ぎを、近頃ずっと感じている。
それは過去の日々…邪法士の里でのことを思い出させた。
20年前、逃げ出した時のことを――。
数日間、仕事のため街に出て戻ってきた時、ジオラは親友の嫁さんが懐妊したという知らせを人づてに耳にした。
酒でも持って祝ってやろうと夜遅くに彼の家に向かった。
山の奥深い場所にある隠れ里。
『邪法士』と世間一般で言われる存在は、国が認めた法院に属していない違法な術士の呼称であった。
地水火風の自然の力を持って人を助ける術を行う法術士に対して、邪法士は人を陥れる術を依頼に応じてやっている闇の者達だ。
里の中でも強い影響力を持つ親友レントの家。寝静まった家人を起こすのは忍びないと慣れた足で直接、彼の部屋の窓辺へと足を運んだ時、少し開いていた窓から声が聞こえてきた。
「お兄様」
若い女の声は先日、里長の子息に嫁いだ彼の実妹・晏華のもの。
客ならば出直そうかと足を戻しかけた所に、
「私、お兄様の子が欲しいんですの」
「何、馬鹿なことを」
「あら、私は本気ですのよ」
「晏華、お前には夫がいるだろう」
「お父様が勝手に決めた、ね。でも大丈夫。あの人にはまだ指一本触れさせていませんもの。私はお兄様のものよ。お兄様だけを愛しているわ」
「俺は家族としては愛している。だが女性として愛しているのは妻だけだ。妹以上の感情など俺にはな…い……」
カシャンとグラスの割れる音。
「晏華、何を入れたんだ」
「お兄様はあの女に騙されているんだわ。お兄様は私だけのもの」
「晏華!」
「私、お兄様の子供が欲しいんですの。その子はいづれこの里の長になるわ、ねぇ?」
「やめ…ろ……」
窓の下で会話を聞き、逃げ出した。
逃げ出すことしか出来なかった。
昔から知っている仲の良い兄妹。いつも妹の晏華が兄であるレントについてまわっていた。
そして、数ヶ月前に結婚し妻になったモーラとも砂を吐きそうなくらい仲睦ましいのも見知っている。
――あの時、声をかけて気まずいながらも部屋へ入り込んでいれば……。
後になってずっと苦しみ続ける思いなど知らぬまま、驚きで混乱を抱えたまま家に戻ってきたのだ。
それから、数ヶ月、表面的には何もないまま時は過ぎた。
腹の脹らみが目立ち始めたモーラとレントは相変わらず仲が良く、腹子の育ちも順調のようだった。
そこに、突然の報告が里中に告げられる。
晏華の懐妊。
里長は孫が出来たと喜び、長位を息子に譲ることを決めた。
見るからに表情を硬くしたレントに、あの日、窓の下で会話を聞いたと告げると、ようやく彼は胸のつっかえを吐き出したように真実を話した。
実妹である晏華に薬を飲まされ、混濁した意識の中で押し倒されたこと。赤子の父である可能性は否定できない、と。
そして、モーラは無事に出産を迎えた。
てことで、番外編第1話をお届けです。
結構、暗めな話です><
複雑!
ハードだね
今回は
(^^)
なんだか、めずらしい展開だー
短編なの?
長くいこうよ~~~w
おぉ,まるで昼ドラ展開ですね(ty
晏華...なんちゅーことをΣ
本作も楽しませて頂きます(*>ω<*)