創作小説「雷獣」(6)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/24 03:32:36
雷獣~復活遊戯~
はじめあき
第6話
10年間、北院で育ち、あまり遠出をすることがなかった戯加にとって、西院の周囲は珍しいものばかり。
西院の敷地外に立ち並ぶ露店へと足を向ける。生活感溢れる雑多の中、法衣をまとった女が戯加を見つけニヤリと笑う。
真っ赤な唇がなまめかしい。
それに気づかない戯加は近づいてきた女に突然腕を掴まれた。
「ようやく見つけたよ。私の雷獣」
「!? 放せ!」
「創造主を忘れるなんて、いけない子だねぇ」 「何のことだよ!」
女は戯加の問いには答えず、何かを握った手を彼の額に近づけた。
「おや? 憎悪の心がないね。育ち方が悪かったか?」
顔をしかめた女が掌を開くと、そこにはひとつの琥珀。
「戯加!」
息を切らして走ってくるエンユ。
「エンユ様」
「……法術士、か」
「戯加を放せ!」
勢いついでにそのまま《法術》で風の刃を造りだし、ひるんだ女の腕から戯加を奪い取る。
「大丈夫か?」
「とりあえず大丈夫です……」
「お前が……余計なことを……」
二人の様子から信頼と情を感じ取って女はワナワナと怒りを顕す。
「せっかく父なし子に仕立て上げるために女の腹に孕ませたものを……母からも世界からも疎まれる存在として、世を憎むように生み出した獣を……」
「残念だったな、真っすぐに育って」
フッと笑みを口に浮かべる。
「しかし、まだ手はあるよ。ねぇ」
戯加に向かって話し出す。
「母に、殺されかけて苦しかったかい?」
視線が邪法士と合った戯加は、瞳を反らせなくなる。
「その後、キミは何をした?」
「―…あ……」
言葉の暗示にかかり、過去の出来事を思い出す。
「母親を、自ら放った雷撃で殺しただろう」
『アンタナンカ、ウマレテコナケレバヨカッツタノヨ!』
首にかけられた手は白く、細い指。
シニタクナイ そう思った瞬間に、雷光に打たれた母の姿。
目前で炎に包まれた姿をただ見ていた。
「いつまでそんな人のマネごとをする、雷獣よ」
戯加の瞳が金色に輝く
天から降りた一瞬の閃光。
そして戯加は底にある記憶を思い出す。
千年以上、大地に根を降ろした神木に落ちた雷。
焼け跡に残った琥珀に宿った小さな生命。
石から温かい肉体を与えられ、自我意識を持ったのはいつの事だったのか……。
そして、彼女が持っているのは元の琥珀のカケラ。
その光の中で戯加の身体は変化する。
金の毛を纏い、額に一本の角を持つ雷獣に。
「……戯加」
変わった姿に驚きを隠せないエンユ。
「貴様、魔獣使いか」
「魔獣使、瑙羅(ノーラ)だよ」
「雷獣、行け!」
瑙羅が戯加をけしかける。
自我を失っている獣姿の戯加は威嚇しながらエンユと対峙する。
前脚を強く踏み出し向かってきた雷獣の前につむじ風を起こし、勢いを奪う。相手が戯加なだけに下手に攻撃して傷つけることができない。そんな様子に瑙羅は勝ち誇った笑みを浮かべて見ている。
琥珀で雷獣を操る彼女を狙おうとしても雷獣に妨げられ実行できない。
「エンユ!」
エンユに追いついたクルトが声を上げる。
彼が示した視線の先によく知った気配が近づいて来ていた。
エンユの放つ風術に反応したのだろう、自らの主の元へと。
そして、瞬時に風を読む。
天に向け延ばした手を、振り下ろす。
何らかの攻撃を仕掛けてくると雷獣を盾にし、身構えた瑙羅だったが、エンユからは風ひとつ起こらない。
「失敗か?」
と、彼女が嘲笑を浮かべた時、背後からの気配を感じて振り向いたが、反応が遅い。
勢いよく彼女の腕に飛来したモノがぶつかった。
第6話
10年間、北院で育ち、あまり遠出をすることがなかった戯加にとって、西院の周囲は珍しいものばかり。
西院の敷地外に立ち並ぶ露店へと足を向ける。生活感溢れる雑多の中、法衣をまとった女が戯加を見つけニヤリと笑う。
真っ赤な唇がなまめかしい。
それに気づかない戯加は近づいてきた女に突然腕を掴まれた。
「ようやく見つけたよ。私の雷獣」
「!? 放せ!」
「創造主を忘れるなんて、いけない子だねぇ」 「何のことだよ!」
女は戯加の問いには答えず、何かを握った手を彼の額に近づけた。
「おや? 憎悪の心がないね。育ち方が悪かったか?」
顔をしかめた女が掌を開くと、そこにはひとつの琥珀。
「戯加!」
息を切らして走ってくるエンユ。
「エンユ様」
「……法術士、か」
「戯加を放せ!」
勢いついでにそのまま《法術》で風の刃を造りだし、ひるんだ女の腕から戯加を奪い取る。
「大丈夫か?」
「とりあえず大丈夫です……」
「お前が……余計なことを……」
二人の様子から信頼と情を感じ取って女はワナワナと怒りを顕す。
「せっかく父なし子に仕立て上げるために女の腹に孕ませたものを……母からも世界からも疎まれる存在として、世を憎むように生み出した獣を……」
「残念だったな、真っすぐに育って」
フッと笑みを口に浮かべる。
「しかし、まだ手はあるよ。ねぇ」
戯加に向かって話し出す。
「母に、殺されかけて苦しかったかい?」
視線が邪法士と合った戯加は、瞳を反らせなくなる。
「その後、キミは何をした?」
「―…あ……」
言葉の暗示にかかり、過去の出来事を思い出す。
「母親を、自ら放った雷撃で殺しただろう」
『アンタナンカ、ウマレテコナケレバヨカッツタノヨ!』
首にかけられた手は白く、細い指。
シニタクナイ そう思った瞬間に、雷光に打たれた母の姿。
目前で炎に包まれた姿をただ見ていた。
「いつまでそんな人のマネごとをする、雷獣よ」
戯加の瞳が金色に輝く
天から降りた一瞬の閃光。
そして戯加は底にある記憶を思い出す。
千年以上、大地に根を降ろした神木に落ちた雷。
焼け跡に残った琥珀に宿った小さな生命。
石から温かい肉体を与えられ、自我意識を持ったのはいつの事だったのか……。
そして、彼女が持っているのは元の琥珀のカケラ。
その光の中で戯加の身体は変化する。
金の毛を纏い、額に一本の角を持つ雷獣に。
「……戯加」
変わった姿に驚きを隠せないエンユ。
「貴様、魔獣使いか」
「魔獣使、瑙羅(ノーラ)だよ」
また西院の一室で異変が起こっていた。
台に置かれた4つの聖具。
数人の警護のものが見守る中、突然光を放ったのだ。
「何だ?」
「聖具が!?」
慌てて側に寄るもの、上の法術士を呼びに行く者とで大変な騒ぎになった。
ゆっくりと光を放ちながら宙に浮かんだのは、剣のみ。
異変を聞き付け駆け寄ってきた法術士の中を、剣は開いていた窓から外へ飛び出した。
呆然と見送ってしまった後にはっと我に返った彼らは慌てて剣の後を追った。「雷獣、行け!」
瑙羅が戯加をけしかける。
自我を失っている獣姿の戯加は威嚇しながらエンユと対峙する。
前脚を強く踏み出し向かってきた雷獣の前につむじ風を起こし、勢いを奪う。相手が戯加なだけに下手に攻撃して傷つけることができない。そんな様子に瑙羅は勝ち誇った笑みを浮かべて見ている。
琥珀で雷獣を操る彼女を狙おうとしても雷獣に妨げられ実行できない。
「エンユ!」
エンユに追いついたクルトが声を上げる。
彼が示した視線の先によく知った気配が近づいて来ていた。
エンユの放つ風術に反応したのだろう、自らの主の元へと。
そして、瞬時に風を読む。
天に向け延ばした手を、振り下ろす。
何らかの攻撃を仕掛けてくると雷獣を盾にし、身構えた瑙羅だったが、エンユからは風ひとつ起こらない。
「失敗か?」
と、彼女が嘲笑を浮かべた時、背後からの気配を感じて振り向いたが、反応が遅い。
勢いよく彼女の腕に飛来したモノがぶつかった。
その衝撃で手に持っていた琥珀が転げ落ちた。
【つづく】
第6話をお届けでーすww
この小説には華麗なキャラが描かれてあるのですww
友達に頼んだら描いてくれましたのですww
イラストは自由に使っていいよと言われてますので、またWebサイトに期間限定かもですが、UPしたいと思っていますww
にゃ、日付変わっちゃったw
でも 漢字むずかしい
苦戦
(tot)
それで雷獣なのか!
ごめん、やっとわかった(ってそりゃそうだ)
ちなみにイラストはノーラさんですよね?
魅惑的な胸をもっていると勝手に想像(妄想)してますけど?w