調子に乗ってみました2
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/19 19:49:36
「ではまず、わたしの家族について説明させていただきます。
わたしの他には、太陽の鏡を贈る予定だった妻のロザニデ。彼女はわたしとおなじく、コークとリムに所属しており、明日で27才になります。それから12才になる長女のミリル、10才の長男ハリス…このふたりは共にジマショルグとバハウルグに所属しています。そして次女のセイカと、次男のポール…こちらは双子で、まだ学生です。
わたしが妻のために太陽の鏡を買ったは今から3日前、7日の事で、
自宅であるバハ区北邸に帰ると、妻に見つからないよう、こっそりとアイテム庫にしまいました。
ところが今朝になってアイテム庫を開けたら、鏡は跡形もなく消えていたのです。ええ、夕べは確かにありました。納品できなかった王魚をしまうために開けた時、確認しましたから。
時間ですか? 大体夜二の刻ちょっと前くらいでしょうか。家族はプルト闘技場に行って留守だったので、わたしはそのまますぐに寝てしまったんです。
「あたなは眠りが浅い性質ですか?」
私の質問に、依頼人は「いいえ」と答えた。
「わたしは一度眠ると、朝まで目が覚めない方で… しかし妻は反対に眠りが浅い性質ですし、異常があれば、何よりまずわたしを起こすと思います」
「もう一つ。奥さんはウルグのランクは高い方ですか?」
私の言葉に、依頼人はかなり面食らったようだった。
「ええまぁ、わたしと1位を争っているくらいですから…しかし今それが何の関係があるんです?」
私はそれには答えず、ソファから立ちあがると、「答えは恐らく奥さんが持っています。今からお宅へ伺ってみるとしましょう」そう言って首をひねる依頼人を急き立て、バハ区北邸へと向かった。
「あらあなた。朝からどちらへ行っていたの? そちらの方は?」
「私はシャーロッテ・ホームズ。…ロザニデさん、あなたにお伺いしたい事があるのですが、夕べ個人商店に商品を並べに行きましたね?」
「え、ええ。それが何か?」
「その中に太陽の鏡があったと思うのですが…」
「ええ確かに。アイテム庫の中にあったので、高く売れると思って…」
ここで私の推理を、順序だてて説明してみる事にしよう。つまりこういう事である。
・依頼人は太陽の鏡をこっそりしまったと言っているが、アイテム庫は家族共有であり、入れてある物は家族であれば誰でも持ち出せるのは、周知の事実である。
・奥さんは年齢から言ってもかなり長くリムウルグに所属しており、ランクも高い。となれば、当然出店権は持っているだろう。
・ましてやあの旦那だ。妻を贔屓しないとも限らない。
以上の点から、太陽の鏡は奥さんが持ち出し、店に並べたと考えるのが妥当である。
そこまで聞くと私は依頼人の方を振り返り、「これにて解決ですね」そう言うと、リム区北邸を後にした。
そんな訳で今日からバハウルグで働くことにした。
私は早速、バハウルグで借りた福音のカマを片手に温泉前に座り込むと、道端に生えている草を刈り取り、家に持ちかえって調査することにした。
その夕方、調査を進める私のもとに、こめかみに血管を浮かばせたシャイアルが家に怒鳴り込んで来た。
「ホームズさん、作物の採取は是非ともバハの寝所でお願いしたいんですがね!」
私は顕微鏡から顔を上げると、「これは私の仕事に必要なことなんだよ」と、丁寧に説明してやったのだが納得しないらしく、「とにかく、二度と馬鹿な真似はしないようにお願いしますよ」
そう言うと壊れそうな勢いで扉を締め、出て行ってしまった。
やれやれ・・・