創作小説「魔導士の式典」(2/3)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/20 22:32:17
「平行世界シリーズ」
魔導士の式典
第2話
案内された部屋には優雅にお茶を楽しんでいた男が一人。
「エイーナ!? 久し振りだな。ちょっと見ぬ間に大きくなって」
椅子から立ち上がり歩み寄られてぎゅーっと抱擁された。
「伯父上、セリフがもう老けてますよ」
「…生意気になったなぁ」
エイーナの髪を無理にくしゃくしゃにかき乱して頭を撫でた。
男の名前はグーベナマ=リサニル。
北陸の大国・リサニル国の王弟。現在は参謀として王のなくてはならない片腕として地位を確立している。
エイーナの父・コセラーナ=テニトラニス王は、元はリサニル国の第3王子で、グーベナマの弟にあたる。
結婚もせず子供もいないためか、、エイーナはこの伯父のグーベナマに可愛がられていた。
「頼まれていたものだよ」
机の上に置かれていた布袋を手渡される。受け取った袋を開いて中身を確かめるために掌に数個、取り出した。
2センチ程の加工されていない原石。それが袋一杯に入っている。数にすれば、数十個くらいだろうか。
光に反射して透明無色の石は輝いていた。
テニトラニスとの国境近くの川沿いで多く採れる水晶。
国の管理下におかれ殆ど売買されない代物のため、闇相場ではかなりの高特価がつく。
質の悪い不透明や半透明のものは他国でも採れるのだが無色透明はなかなか見られない。
グーベナマが持ってきたのはその水晶の欠片。
形を造るために削られた、いわば屑石の部分だ。
「こんなの、何に使うんだ?」
小さくても売れば相当の金額になるのは判っているのだが、そんな金の稼ぎ方をするような奴ではないと知っているからこその問い。
「この石との相性、僕とすごく良いんですよ」
ニコッとエカーチェフとしての顔が顕われる。
「親友を助けるための布石なんです」
カルマキルの第2の城をエイーナは訪れた。
学術の勉強と称して数年間カルマキルに留学していたので、何度も王都からこの宮殿に遊びにきたものだった。
その後、ルクウートに剣術を学ぶために留学をしてから……
一室の部屋に足を踏み入れる。
毎日、花が生け直され光も風も心地良いのに、現実から切り離されたような空間。
ベッドに眠っている一人の若者。
死んでいるかのように眠り続けてもう数年。
眠っていても身体は少年から青年へと成長を遂げている。
原因不明の病気で眠り続けている彼。
シーフィラノ=カルマキル。
この国の第一王子。
何も出来ない自分に腹を立てながら何度、この寝顔を見下ろしただろう。
「魔導師の資格を取って、助けにきたよ」
そう、自信のある笑みを浮かべて言った。
一年前。
ソハコサへ魔導士の勉強をしながらシーフィラノの元へ見舞いに行った時、彼を包む空気というか気配が、異質なものに感じて試してみようと思いたっのだ。
「シノと二人にしてもらえませんか?」
集中力を高めるため周囲に控える者を室外に追い出し、シーフィラノの眠るベッドを中心にして簡易の〈魔法陣〉を作った。
自らもその中に入り装飾のイヤリングに使われていた水晶を掌に握り締める。
「外界の干渉を総て遮れ〈結界〉!」
円と水晶が光を放ち、二人を薄い膜の張ったように包み込む。
そして…その中で彼は目覚めた。
しかしそれは肉体を伴わないものだった。
『……エイーナ?』
疑問符のついた問いを発したのはまだ幼さの残った姿をした精神体だった。
眠ったままの身体から起き上がるようにして現れ、ベッドの上に座っている。
記憶よりも大きいエイーナを見て、隣にある成長した自分自身の肉体を見て、理解しようとするために一瞬、間を置いてから再びエイーナに視線を向けた。
『…エイ、俺は今、どうなってるんだ?』
シノは昔から何事にも冷静に判断できる子供だった。
それは決して冷めているわけではなく、情報処理能力が長けていたと言っていいだろう。
シーフィラノと共に城を抜け出しイタズラをして遊び回っていた記憶はまだなくしちゃいない。
「…原因不明の病気でずっと眠ったままなんだよ、シノは…」
『……あぁ!?』
「でも、その原因が少しは判ったかもしれない……」
それから少しそのまま今後の計画を立てた。
眠りの原因は〈魔導〉に関係あるかもとエイーナが考えていた通りだったのだが、どうすれぱシーフィラノの肉体は目覚めるのか、だ。
〈結界〉を解けば精神体のシーフィラノも肉体に戻り、再び眠ってしまうだろう。
必要なのはもっと強い魔導の力と…肉体を目覚めさすきっかけ。
そこでシーフィラノが思い出したのは一人の女の子だった。
【つづく】
第2話をお届けです。
次回で終わりです……たぶん。
そんなに加筆修正はしないと思いますのでww
人体練成?
ふむぅ
結構、背景浮かぶのは なぜに?
????
精神と肉体の練成術は違う?
友達申請しました
よろしくです。
(^^)
こういう風につながっていたのかぁ~~
ふむふむ