創作小説「魔導士の式典」(1/3)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/19 19:55:26
第一話
式典が終わるとすぐに宮殿を後にした。
魔導の国・ソハコサの城や魔導士の学校では年に一度の“魔導士の祭典”が催されている。
とはいっても、他国にはあまり知られていない祭典だ。
それでも国をあげての祭。
式典では高等魔導士の任命が行われ、数名のものが“魔導師”として名乗ることを許される。
広場では学生魔導士が簡単な魔導を披露して参列者を楽しませている。
そんな中、宮殿の側に止められていた馬車に周囲を気にしながら乗り込んだ少年。
魔導師となったの彼の名前はエカーチェフ。
17歳という年齢でありながら、今回“魔導師”としての任命を授かるため、式典に出席していたのだ。
高齢の者の任命が多い中、珍しく若い彼の姿を見ようと学生達らが押し寄せ、今までよりも盛り上がった式典になった。
彼が魔導師に任命される理由はその術の特異性。
〈空間術〉である結界や転移を自在に操る魔導士の数が稀少だったからだ。
彼が乗ったのを合図に動き出した馬車の中で、少年は魔導師の証である深緑色の上着を脱いだ。
顔の半分程を隠している黄土色の長い前髪を掻き揚げると蒼い瞳が現れる。
車窓から賑わっている街に視線を向け、馬車の中の向かいに座る男に声をかけた。
「カルマキルまで、どれくらいかかる?」
「ここから船でヤナテトシムの川を下り、カルマキルの港へ着くのは、早くても明日の昼過ぎですね」
「そうか…休みは7日間。無事に解決出来ればいいけど」
「式典はどうでした? エイーナ様」
話題を変えるように言った男・シキアの言葉に、エカーチェフことエイーナが少し自嘲気味の笑顔を見せる。
「まるで、見世物の気分だったよ」
「でも、楽しんでらしたのでしょう?」
「…まぁね」
エカーチェフと名乗り、魔導士の勉強を始めて約2年半。自分でもこんなに早く魔導を会得出来るとは思ってもみなかった。
もともと備わっていた素質と剣術で学んだ目に見えない《気》の流れや集中力が功を期したんだろう。
そして、魔導を習得しようと決意した本来の目的を、今から果たしに行く。
――彼を目覚めさすために……。
港町。
商業の国と呼ばれる、貿易盛んの祖国を思い出させるほどの賑わいで、平日にも関わらず市が立ち、人通りの激しい街道。
学問の国と呼ばれるカルマキル大国の第2の城と呼ばれる宮殿が高台に見える。
川を下って港に着いた船から降りたエイーナの姿は、魔導師の装いだったソハコサの時とは全く変貌していた。
もしソハコサでの知り合いに会っても誰も彼が魔導士エカーチェフだとは気づかないだろう。
長い黄土色の髪で表情を隠し、口数も少なくおっとりしている。魔導はすごいが性格がトロくて天然がはいっていて、存在感や華がいまいち感じられない…それがエカーチェフに対する認識。
しかし今は、父親譲りの深みのある蒼い双眸に金色の髪。
きっちりとした衣装にマントを羽織った姿は、人の上に起つ高貴さと存在感を与えていた。
事実、これが本来の彼の姿。
エイーナ=テニトラニス。
この港町から一日かけて海を渡った所にある北陸。小さいながらも大陸との玄関口として栄えている豊かな国、テニトラニス小国の王子だ。
「シキア、頼んでいたものは?」
「はい。直接お渡ししたいとの伝言を頂いたので、使いのものが来ているはずなのですが……」
シキア=タヤ。エイーナが生まれたときから側にいる従者だ。
ズラリと停泊している船を一望して、ひとつの豪華な船を見つける。
一人の見張りの者がエイーナとシキアの姿を見つけたようで仲間に連絡をして走りよってくる。
「テニトラニスのエイーナ様とシキア様ですね。お待ちしておりました。案内させていただきます」
水兵式の最敬礼をして二人を船の方へと招き入れた。
【続く】
はい。予告通りエイーナ主人公の短編です。
コレも3話で終わる予定です。
よろしくおねがいしまーすww
(^^)
魔道なら
少し我輩も心得が
時空一致の
法則
なんてね!
三話でおわっちゃうの?
もっと続ければいいのに・・・w
楽しませて頂きますゞ