創作小説「WANTED」8(最終話)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/17 22:38:28
「平行世界シリーズ」
WANTED
第8話
しかし口調は同じでも声質が違う。
少年ぽさが抜けた、青年の声だった。
シーフィラノはベッドから起き上がり、ちょっとふらつきながらも床に足をつける。
3年間眠ったままの身体はやっぱりどこかぎこちない。
支えようとしたケーノサの腕をやんわりと遮って、アルカディアの前に立つ。
まるで自分の躰かどうかを確かめるみたいに、ゆっくりと。
「ちょっと、シノ!? 大丈夫?」
思わず手を出したアルカディアの腕は、遮ぎられることなくシーフィラノに届いた。
「あははははははは……」
荒い呼吸と供に笑い出すシーフィラノ。
「本当に…ディアが起こしてくれたね」
呼吸を整えてシーフィラノが話す。
「ずっと…逢いたかったんだ。俺のために危険な目に合っているのも知ってた。だから、俺が迎えに…守りに行ったんだ……」
シーフィラノの言葉を聞いてあの頃の忘れていた記憶が鮮明に蘇ってくる。
あれはシーフィラノだったんだ……。
あの言葉で自分が救われたのを覚えている。
淋しさの中から救い出してくれた。
「ディアがいてくれて良かった。お陰で助かったよ」
安堵の息を吐きながら、そっとシーフィラノの腕がアルカディアの肩に回される。
心臓がドキッとして早鐘を打ち始める。
今まで一緒にいたシーフィラノの身長は自分と同じくらいだったのに、見上げなければ顔が見えない程、背が高くなっている。
それに加え3年も眠っていたとは思えない逞しい身体。
顔がほてって来るのが判った。
彼は一緒にいたシノとは違う、年上の男の人だ。
意識してしまったら、動揺して今までみたいに平気でいられない。
「えーっと…じゃ、私は役目を果たしたみたいなので、帰ります」
シーフィラノの腕から逃げるように、一歩、下がったのだが、
「何言ってんの」
「え?」
ぐいっと腕を取られ、引き寄せられた。
「俺の側にいるんだろ。このまま帰すわけないでしょ」
「シノの方こそ何言ってんの。大国の王子なんでしょ。私が相手になるわけないじゃない」
「相手にするかどうかは、俺の権利だよ」
さらに引き寄せられ、目前で青い瞳が真っ直ぐ見つめてきた。
「何のために迎えに行ったと思ってるの? ディアを直接見るために決まってるだろ」
迎えに行くだけなら遣いを出して、きちんと説明をして招待することもできた。
でもそれをしなかった理由は、彼女の人とナリを見るだめだ。
「俺の側に居たくないわけじゃないんだろ?」
耳元で囁かれた言葉に、思わず頷きそうになって、はっと我にかえる。
「…………」
『言霊の祝福』。
思わず頭に浮かんだのはケーノサの言葉。
コレはもう捕らわれてしまっているのだろうか、言霊の呪縛に。
真剣な表情をした青い瞳が目の前にある。
いや。
ここに来るまで、ずっと側で見守ってくれていた、優しい瞳だ。
「ディア、俺の言葉を信じろ」
「……わかった」
頷くと共に、唇に温かさを感じた。
ディア=アルカ。彼女の本名。
彼女が持っていた形見の剣に刻まれた紋様から、剣術の国・ルクウートの王家に使える剣術師範のアルカ家の者と判明。
正式にシーフィラノの婚約者として認められるのは、そう遠くない未来のことである。
【END】
1992, 6.21 完成
2010.10.17 書き直し完成
はい。ようやく編集がおわりました。
最終話をお届けします><
ちょっとは前よりマシな終わり方になったかなと思います。←前を知ってるヒトはいないだろうけどww ←でも探せば読めたり・・・イヤイヤ <(`^´)>
てなことで、次は「魔導士の祭典」へいきます。
WANTEDのウラサイドストーリーでございますww
ディアたんも嬉しそうですね@@
次もたのしみにしてます♪
異世界のシンデレラストーリー(?)のハッピーエンドで良かったw
年表をみるかぎり、この二人の子孫が何かしらの物語に影響しそうなんだよねぇ~~w