~争いの無い世界~*亡き兄貴の亡霊Ⅳ*
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/17 16:23:45
午前10時45分。
言われたとおりに玲は召喚族の里から少し離れた丘へ来た。
そこには、何時から来ていたのか、木の下で本を読んでいる塑羅がいた。
塑羅「来たわね」
少しずつ近づく玲に気づいた塑羅は、手に持っていた本を閉じて地面に置いた。
塑羅「前に…図書館で私ともう一人いたでしょ?あれは私の兄貴」
塑羅は召喚族の里を見ながら言った。
玲は何も言わず、無言で話を聞いていた。
塑羅「あの兄貴が外国へ行ってもう一度生活をやり直さないかって言ってきたのよ」
玲「ちょっと待ってよ」
おかしな事に気がついたのか、冷たい感じの声で言った。
玲「小さい頃に湖に浮かぶあんたの兄さんの死体を見たんでしょ?なのに、どうして疑わないの…?」
塑羅「星姫に聞いたのね…」
溜息をつき、少し間を開けて言った。
塑羅「確かに私だっておかしいと思った。でもあれは本物の兄貴だったのよ」
玲「……」
玲は思わず口を噤んでしまった。
塑羅「明日からには召喚族の里に来れない。だから…」
玲「星姫と慧璃には言わないで…か」
塑羅「……できるだけ沢山の人を悲しませたくないのよ」
玲「そんなの…自分勝手すぎる」
ボソリと呟いた。
塑羅は玲を見ると、玲は俯いていた。
玲「もう知らない!止めもしない!あんたなんか…あんたなんか外国でもどこでも行けばいいわ!」
塑羅「違う!私は…!」
言おうとした言葉が一瞬消えた。頭の中が真っ白になり、何が言いたかったのか分からなくなった。
塑羅「……さようなら…」
何が言いたかったのか、そのまま分からないまま別れを告げる。
その言葉で玲は顔を上げると、そこにはもう誰もいなかった。
玲はまた悲しくなった。
自然と涙がこぼれてくる。
伝えたかった言葉があったのに、伝えられなかったのが心残りだった。
――――――――――――――「元気でね」って伝えたかったのに―――――――…
翌日の午後2時。
その日は一ヶ月に一回だけ行われる召喚獣を出せるかどうかのテスト。
召喚族たりとも肝心の召喚獣を出せなかったら意味が無い。
始める順番は出席番号。
次々と召喚獣を簡単に出す人や、出せなかった人と様々である。
大ババ様「よし、次」
大ババ様の掛け声でテストを受ける場所まで歩く。
玲「始めます」
一言言い、深呼吸をしてから足元に魔法陣を出す。
召喚族の人々が見守る中、呪文を唱える。
が…
普段は呪文を唱えた後に出てくるはずの玲の召喚獣・ウンディーネが出なかった。
玲「……!?」
毎月成功していた召喚獣を呼び出す召喚魔法が、今回に限って出てこなかった。
あせる玲はもう一度魔法陣を出し、召喚魔法の呪文を唱える。
だが、やはり召喚獣は出なかった。
どうしてこうなったのか…原因は本人が分からなければ大ババ様や他の人も分からない。
力が抜けて、地面に膝を突くと、呆然とする。
玲「どうして…」
そう呟くと、傍で見ていた慧璃が叫ぶ。
慧璃「大ババ様!玲ちゃんは体調が悪いみたいなので救急室へ連れて行きます!」
突然で吃驚し、大ババ様がうなずくと、慧璃は玲の手を引いて走った。
玲「慧璃!?私は何処も…」
慧璃「いいから!」
無我夢中になって走り、救急室へ連れて行った。
救急室にて
慧璃は玲をベッドに座らすと、隣に座り、聞いた。
慧璃「ねえ、玲ちゃん。何かあったんでしょ」
玲「何も…」
慧璃「召喚獣は主の心を読めるんだよ?召喚獣は主の気分や気持ちによって出てくるの。でも出なかったでしょ?あれは何かあったとしか考えられない」
玲「そう…かもね。言いたいけど…口止めされてるし…」
玲がそういうと、慧璃は目を瞑った。
ゆっくりと目を開けると、慧璃は口を小さく開けて言った。
慧璃「塑羅さんがお兄さんと外国へ…ですか」
溜息をつくと、玲はそっぽ向いて呟いた。
玲「読まれちゃったか…。同じ意思を持ってるあんただったら丸分かりなのね…」
慧璃「どうして言わなかったんですか?」
玲「塑羅は沢山の人を悲しませたくないって言ってたから…」
慧璃「だからって何時までも心の奥底にしまっても意味が無いと思います。相談をするからこそ大切な友達って言いませんか?」
玲「……生意気な奴」
フッと玲は微笑んだ。
自然と目に涙がこぼれ出る。
玲「もう…会えないよね…」
ポツリと呟くと、慧璃は玲の頬を抓る
玲「いたた!」
慧璃「らしくないですね。それでも召喚族一の最強なんですか?」
励まされたのか、貶されたのか…
玲はどちらか分からないけど自分の中では励まされたと思っている。
のち、危険な目に会う事も知らずに…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~続く
やっと出来たー!
昨日うっかり消してしまった奴完成したー!
文字数がマズイのでそろそろw
感想待ってますノシ
いやいや、それ程ではないですよ^^;
次も頑張って描きますよーb
話に引き込まれます^^
続きが楽しみですwww
友達思いなだけですよb(オマ