「山男とサーファー」20
- カテゴリ:日記
- 2010/10/01 03:31:24
十
そこで俺は、ふと目が醒めた。
ナンガのふところに抱かれて、俺はビバークしていた。
雲が切れて紺碧の空が見える。
『なんて夢だ』
俺は苦笑いを浮かべて、青氷を削り取り、コンロで氷を溶かして、コッヘルにコーヒーを入れゆっくり飲む。薄い酸素の元では火力が弱まり、低高度での五倍以上の時間をかけて水に戻し、更に湯に変える。
軽めの朝食。チョコレート一枚。牛缶を開いて、直火で温めて、ゆっくり食べる。
あせりは禁物だった。
雪崩がおきるかおきないかは、天のみぞ知る。運命が俺を生かしてくれるなら、このままアタックを再開できる。
俺は1本のボンベを取り出して、10分ほど吸う。頭は完全な正常状態になった。
俺は電池の消耗を避けるため、トランシーバーをオフにしていた。
早速オンにして、BCと交信を始めた。
「こちらは絶好調。ベースキャンプどうぞ」
「こちらBCのYです。きのうは散々でしたね。何か問題ありますか、どうぞ」
「大丈夫です。頑丈なツェルトのおかげで助かった。天候がいいうちにアタック再開します、どうぞ」
「Tです。無理するなよ。ボンベは使ったか? どうぞ」
「今寝起きで、ボンベ1本使用しました。おかげで頭すっきり。下からは良く見えますか? どうぞ」
「あんまり無理するなよ、成功祈る、どうぞ」
「サンキューです。これで通信終わります」
俺は素早くテントをたたみ、ナップザックに入れて、カラビナをはずす。
腹に少しでも温かな食い物がたまると、不思議と力が湧き上がってくる。チョコレートの影響も大きい。
小用をテントの中で済ませていたが、便秘がちの為か、大の方は出ない。
もっとも、食欲もないから、ここ一週間軽めの食事で済ませていたせいもあるかもしれない。
外に、小用に使った缶詰の空き缶を置くと、10秒ほどで、中味はたちまちのうちに、カチカチになる。マイナス30度の世界は、それほど過酷だ。マイナス50度までの経験があったから、それに比べればまだ天国である。
自然を汚すのは、毎回いやな思いになるが、荷物をできるだけ軽くする為に、不用な物はそこに置いていく。小用をした缶や、空ボンベを、そのまま放置し、『大自然の神様御免なさい』と手を合わせて、俺は再びアタックする。
本当の紺碧の空。
しかし、紫外線が強いため、マスクの上から黒のゴーグルをつける。露出しているのは鼻と口だけ。
しばらくなだらかな斜面を歩く。
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- ɭɛʂʂɨɕɐ❁
- 2010/10/01 05:31
- いつのまにやら 20 Σ(@д@;)
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