Nicotto Town


人生カカト落とし


祝・完結 其の一

〈フルメタル・パニック〉(賀東招二作 富士見ファンタジア文庫刊)が十二冊・十二年の歳月を費やして完結した。

まずはめでたい。

まっとうに完結した、というだけでとりあえず賞賛に値する。
ライトノベルは、売れ行きが思わしくなければ、一応の決さえつけることなく打ち切られることもままあるし、人気があっても作家の都合で刊行が止まることも珍しくない。
(いや、〈十二国記〉にシリーズタイトルがついたとき、これで最後まで読めるものだと安心した。作者が書かなくて続きが出ないなんて事態は想定しなかったよ)

以下、ネタバレはないようにとは思うけど、作品の内容に触れます。嫌な人、回避お願いします。

でもって、このシリーズは(終盤刊行に時間がかかりはしたが)実に順当に、広げた風呂敷を畳んで幕を下ろした。
物語の着地点は良くも悪しくも予想を裏切らなかったが、長編十二冊(と短編、そして読者それぞれの時間)を追いかけてきた読者にとって、納得できる着地点ではなかったろうか。

小説として、SFとして、喰い足りない、という意見が出るのは、実はわからないでもない。

ライトノベルだ。

ボーイ・ミーツ・ア・ガール。苦闘は報われ、登場人物は成長し、物語は主人公とヒロインの再会で幕を閉じる。
「ライトノベル」という呼称が定着する以前の開始された話だが、終わるにあたって登場人物に、そして読者に、もてなしの良い優しさを見せていて、良くも悪くもまさに「ライトノベル」だろう。

最近ライトノベルに食傷気味なのだが、だけどこの物語には「良かった」と息をついた。
もちろん『~デイ・バイ・デイ』や『~ワン・マン・アーミー』のような苦境に自らの意志で立ち向かい、くぐり抜けた過程があるからこそ喜べるハッピーエンドだ。
(優柔不断な主人公がふらふらして甘やかされる話が面白いか、考えてればいい)

小説としては、甘い。
たとえば「台無し」連呼された誰かさんの運命は、ライトノベルでなければ違っているだろう。

でもだけど、それでいいと感じた。こんな「ライトノベル」はありじゃないか、と。

五年後に新しい読者がつくかどうかはわからない。十年後、現在の熱心な読者の書棚にこの本は並んでいないかもしれない。でも、今現在の若い読者のひとときの伴走者として共にあり、楽しませ、ときに励ます幸せな物語があっていい、と。

十二年、追い続けた人には感無量だろう。わたしは確か九年くらいの時間を追いかけた。
本当に楽しかった。
読み始めたのは、すこし前にレビューをあげた『翼の帰る処』の作者、妹尾ゆふ子さんのサイト(ブログでなく、もともとのサイト)で評を見てのことだった。
ご本人の作品も面白いけど、このシリーズに出会えたのはこの作家さんのおかげだ。ありがたい。

そういえば、シリーズの最初あたりを読み返してみると、この作者はPBMRPG(郵便を使って遊ぶRPG)マスター出身らしい。
ライトノベル周辺に(原則的には)速度と量をこなせる(はず、の)PBM出身の作家がすくなくないが、この作者は、人気・刊行とも特に安定している。
最近御無沙汰な人もいる他作家さんの動向が、すこしばかり気になる(なかなか新刊が出なかったり、主に書いていたレーベルが無くなったり。パンツ飛ばしてないで新作書いてほしい人もいますw)



最後にちょっと脱線して「最低野郎」(アニメ・『装甲騎兵ボトムズ』のファン)として、すこし。

おそらく、『装甲騎兵ボトムズ』が、この〈フルメタル・パニック〉の発想元のひとつだろうと思われる。
後書きの文言と、主人公・宗介のキャラクター、終盤で見えた構図の類似等、消化して別物になってはいても、原型(と思えるもの)が透けて見える部分もあった。

これ、もしかして、やはり「最低野郎(ボトムズファン、ね)」である作者の「俺ボトムズ」じゃないだろうか?

終盤主人公がどんどん特別になってしまう展開が残念だったボトムズのファンとしては、最後まで主人公を「一兵士」として展開しきったフルメタに喝采を送りたい。
特別でないまま戦い抜く主人公がみられたことに、感謝。

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2010/09/28 00:32
nagataさん
新潮の雑誌に載った短編は読まれましたか?
せめて、戴国の話だけでも決着つけて欲しいですね〜

ぢょほほんさん
漫然と「お薦め〜」と言う文を書くのならともかく、対個人で薦めていいのかとも思いましたが。
ロボットもの(それも多分文章で表現する)の創作をしておられるならやっぱりな〜、と差し出がましく御免なさい。
アニメの影響が大きいライトノベルなのに、ロボットもの(兵器として扱われるロボット)、存外少ないんですよ。
ノベライズや他ジャンルからのスピンオフ、主要素じゃない扱い・他部分に魅力が大きい、みたいなのあるのですが。
有名なのはフルメタと、未完で新人賞を取って続きが出なかったので伝説みたいになった『風の白猿神』とか。
通常ライトノベル扱いされない作品なら『機神兵団』とか。
難しいところで成功してる作品は押さえておいた方がいいのでは、と口を出しました。
いえ、単に面白いってのもあるんですけどw
ライトノベル作家の浮き沈みに関しては……待ってる作品・作家さんがいるのは同様でございます。
出版社に切られてしまう場合もあるみたいですけどねぇ……
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2010/09/25 21:45
すかさはさんに薦められて読み始めたフルメタ、私も読みました。
とても面白かったです。

SF的に食い足りない・・・のはまあ、あるかもしれませんが、
魅力ある登場人物が縦横無尽に活躍するのがライトノベル的
(というか、コミック的でもある)
の一番の面白さではないかと私は考えてます。

だから、ライトノベル的には、フルメタの面白さは100点満点で、やっぱり拍手喝采なのに、私も同感です。


・・・しかしなんですね、ライトノベルの作家はどうも浮き沈みが激しいようで。
私も新作を読みたいけど続きが出てこない作家、何人かいるんですよねぇ。

アレは何故なんだろう?
ファンレター送るとか、何か作家のモチベーションをあげるようなこともしないとだめなんですかねぇ?
(↑おおむね冗談だけど、ほんのちょっとだけ本気)
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2010/09/25 14:08
十二国記 続きが読みたい~~~



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