「あ 1/3人目」
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/22 23:02:57
「あ」五十音の始まりの音、人間が思わず出す声。
二つ繋げれば、ちょっとした感動を表す言葉になる。そうして、僕は逃げ道をつくる時、あ、と閃くのだ。ああ、世界が二つあれば良いのに、と。僕は孤独だ。 この世には、「地球というか、「世界」というものは二つあるのだと常々僕は夢想する。
大抵、物事がうまく運ばず今いる世界からどこか遠くへ走り去りたいとしょうもない思考が浮かんだ時に、だ(周りの亜種はこれを責任転嫁と指摘する)
仮に世界が二つあるとすれば、一つ目の世界は本物で二つ目の世界はきっと偽物だ。僕が今いる世界は当然後者で、森羅万象万物の全てが真実の世界を模倣しているに過ぎない。それ故、こんなにも亜流が溢れ返っている。今までに発見された新大陸も地動説も万有引力も、所詮は二番煎じ。奇跡の大発見は、本物の天才がいつまで経っても後れをとる僕らを見兼ねて秘密裏に導いた真似事。味気ない結果を覚える理由なんて、どこにもない。
僕ハ義務教育ヲモ放棄シマス。
それから、ピラミッドも万里の長城もモナ・リザもナスカの地上絵も所謂贋作。つまらないつまらないつまらない! 面白味なんてどこにも見当たらないエピゴーネンの山は、僕を失望させる。この退屈さは、一種の阿鼻地獄だ。それならいっそ、本当に死んで地獄へ行ってしまいたい。剣山や血の池、閻魔大王はお粗末なまがい物にしては刺激的。かもしれない。
結局、妄想の域を超えない僕の願いは今日もここで終了。日が暮れ、もうすぐ夜になる。そして滞りなく朝は訪れるだろう。今日と寸分の差異も見当たらない、明日が。鴉が一羽、啼いていた。
「あ 1/3人目」 (厨二病乙)
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部活のお題「あ」で作った小説の1章目みたいな。
僕口調の甘ったれは大好物です。