春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」27
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/21 00:42:32
「有り難うございました・・・。」
パトカーを降り、小田は声を掛けた。
「小・・・田さん・・・、でしたっけ? また、お伺いする事もあると思いますので、宜しくお願いします。 では・・・。」
相模と呼ばれる刑事はホテルを出ていった。辺りはすでに夕闇迫る時間となっていた。
「今日は疲れたよ・・・。」
小田がため息を吐いてホテルに入ろうとする。それを太田は制止する。
「どうしたの?」
「ねえ、別のホテルにしない?」
どうやら彼女は、警察の勧めたホテルに宿泊する事が嫌な様だ。
「何かあったのかい?」
「だって、このままじゃ、警察の監視の元で宿泊するのよ。 何か嫌じゃない?」
「まあ、確かにね・・・。 俺は気にしないけど・・・。」
「私は気にするの! とにかく、対岸まで行きましょ。」
彼女はスタスタと歩き始めた。
「おい、待ってくれよ!」
彼は疲れた身体を奮い立たせて、彼女を追っていった。
「ねえ、昔、何か警察とあったのか?」
天橋立を歩く太田に、彼は問いかけた。
「別に・・・。 ただ、嫌いなだけよ・・・。」
日も暮れた時間帯である。街灯の明かりが頼りの天橋立を対岸に向かって歩いていく。既に辺りには海水浴客の姿もない。
「まだ、現場検証をやってるのかな?」
彼は後ろを振り返るが、結構な距離を歩いてきたせいか、暗がりで見えなくなっていた。
「小田さん、置いて行くわよ。」
先に歩いている太田が声を掛ける。
「待ってくれ!」
彼は小走りして彼女に追いつく。
「しかし、長いな・・・。 どれ位あるんだ?」
「そうね、3.3㎞って所かしら。まだ1/4程しか来てないわ。」
「3.3㎞! で、まだ2㎞以上もあるのかよ・・・・。」
「文句言わないの! ほら、そこの神社でお水飲んできたら?」
彼女が指をさした方向に小さな神社があった。
「天橋立神社って言うの。 その近くに井戸があるんだけど・・・。」
「ああ、あるよ。」
先に向かった小田が叫ぶ。太田が追いついて話す。
「名水100選にも選ばれているお水よ。周りを海に囲まれてるのに、コンコンと真水が湧いているの。不思議でしょ。」
「旨い水だな。 良く冷えてる・・・。」
「井戸水だもの。 さあ、遅くならない内に行きましょ。」
二人は再び歩き始める。道中は自転車が数台通っただけで他に人影もなく、無事対岸にたどり着いた。




























さて、再び殺人事件が起こりました。一体、殺害された人物は誰なんでしょうか? 今後の繋がりは?
数々の複線がはびこる中、次回をご期待下さい。