春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」24
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/21 00:22:22
「キャーーーーーーーーッ!!」
そんな二人が元来た参道を歩こうとしていたその時、女性のこの世とは思えぬ悲鳴が聞こえた。
「何だ? 今の声は!」
「本堂の裏手の方から聞こえたわよ。」
「行ってみよう!!」
二人は本堂の裏手へと廻った。裏側は古びた民家が建ち並んでおり、何軒かは廃墟と化していた。その廃墟と化した民家前の道路に女性が倒れていた。
「おい、しっかりするんだ!」
小田は女性を抱き起こして叫ぶ。かすかに反応が返ってくる。どうやら気絶しているようだ。
「この暑さだから、日射病にでもなったのかしら・・・。」
「にしては、叫ぶ必要もないだろ。 ともかく、救急車を・・・。」
小田は倒れていた女性を日陰に移した。その間に太田は携帯で救急車を呼ぶ。
「すぐに来るそうよ。」
連絡を終えた彼女が心配そうに女性を見つめる。自分より若い年代だ、学生だろうか?そう思いながら、救急車の到着を待つ。
「それにしても、彼女は一体どうしたんだ? この場所じゃ何も驚く事はないだろうに。」
小田は辺りを見渡して言う。辺りが閑散としていたせいか、悲鳴を聞いたのは彼らだけだったようだ。
「何か、驚くような事でもあったのかしら?」
太田は彼女を介抱しながら言う。
「ちょっと辺りを見てくる。」
「あっ、小田さん!」
小田は彼女が倒れていた廃屋を覗いてみる。かなり昔に建てられた家だろうか?。板張りの家のガラス戸には古びたカーテンがぶら下がっており、廃屋になってからかなりの年数が経っている事を証明している。そのカーテンから見える景色は畳がめくり上がり、ボロボロの床下が見えている。
「さほど変わった様子もないな・・・。 これだけ古い民家だから、ネズミでも出たのかな・・・。 んん?」
辺りを伺っていた彼が思わず唸る。民家とは反対側の場所、ここも廃屋だったのだろうか? すでに家の原型を留めておらず、雑草が伸びきった所に黒い物が横たわっていた。
「・・・・・! あれは、人だ!!」
慌てて駆け寄ると、男が倒れていた。
「おい! しっかりする・・・・・。」
介抱しようと男を抱きかかえるが、男性はグッタリしていて動かない。抱きかかえた拍子に、両腕がダランと垂れ下がる。
「し、死んでる・・・・。」
「小田さん! 救急車が来たわよ!」
フイに我に返り、振り返ると道路に太田が立っていた。
「どうしたのよ! 唖然としちゃって・・・。」
「来るんじゃない!」
こっちに来ようとしていた彼女を慌てて制止させる。その後ろには救急隊員らしき人物も立っている。
「すいません! 警察を・・・、警察を呼んで下さい!」
何か異常を感じたのであろう。救急隊員が近づいてくる。
「どうしました? 何かあったんですか?」
「人が・・・・、男の人が・・・。」
近づいてきた救急隊員が目を見張る。小田に抱えられている男性の胸に、ナイフが刺さっている!
「おい! こっちもだ!」
救急隊員が慌てて叫ぶ。数名の隊員が周りを取り囲む。隊員の一人が無線で連絡を取りだした。
「お、小田さん・・・。 あっ! この人・・・・。」
太田が近づいて、驚きの声を挙げる。隊員の一人がそれに気づき、声を掛ける。
「知っている人ですか?」
「い、いえ・・・。 人違いでした・・・。ちょっと知り合いに似ていたもので・・・。」
彼女はドギマギしながら答えた。
「そうですか・・・。 ともかく、警察が来るまで少しお待ち下さい。」
「分かりました。 えっと、その・・・。」
隊員が戻ろうとした時、太田は声を掛けた。
「か、彼女は無事なんでしょうか?」
「ああ。大丈夫です。 どうやら、この人を見て気を失った様ですね。救急車の中で意識を取り戻しました。 大事を取って、一応病院へ搬送しますが・・・。」
隊員は笑顔で答えた。太田はホッと胸をなで下ろした。
「そう。 良かった・・・。」



























