北の少年 激闘編 1
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/19 16:56:12
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
中天に座す明るい月が、煌々と下界を照らしていた。
昼間は騒々しいアルバの都も、青白い月光の中で静かに眠りについている。
窓から入る月明かりの中、ロウ・バルトは浅い眠りから目覚めてかっと大きく両目を見開いた。
そのまま半身を起こして、両手を握りしめる。
小刻みに肩を震わせて、くぐもった笑い声をあげ始めた。
「ふ、ふふふ、は、ははは、ついに目覚めたか。私の愛しい獣が・・・!」
くぐもった笑い声が、大きな哄笑に変化していく。
端正な彼の表情が、狂気を帯びた醜い引き攣った笑顔へ変わっていった。
「ははは、はははは、それは私のものだロウ・ヴェイン・・・!私こそがそれに相応しい。けっしてお前などに相応しいものか。・・・私こそが相応しいのだ!」
ロウ・バルトは両手を突き出して、目に見えぬ物を掴み取ろうとした。
だが両掌は、虚しく空を掴んだだけだ。
「必ず・・・!」
虚しく空を掴んだ掌を目の前にかざして、彼は歯をくいしばった。
「必ずお前を殺して、あれを、我が手に、する。あれは、私にこそ相応しい。待っていろ、ロウ・ヴェイン!」
ロウ・バルトが目覚めた時間は、ちょうどロヴの短剣が光り輝いて文字が変化した瞬間と同じであった。
彼が心から求めているものは、ロヴの短剣である。
あれさえあれば、自分がロウ・ゼオンの次代の王になれる。
あれを自分の物として支配すれば、北と南の大地すら支配できる。
ロウ・バルトは心からそう信じていた。
「あれの価値を理解できないロウ・ヴェインなど、この世から消えてしまえばいいのだ」
彼の哄笑は何時までも続いて、ただ1人しかいない彼の寝室にこだましていた。
同時刻、ジェンはロヴが抜いた短剣の変化を目撃しながら、ロウ・バルトの哄笑を聞いたような気がした。
哄笑しながら『殺してやる』と叫ぶ彼の姿が手に取るように見えた。
これも人狼が『視せた』せいなのだろうか。
誰よりもロウ・バルトの悪意を身近に感じるようだ。
ロウ・バルトに狙われているロヴ以上に。
(ロヴは私が守る)
瞬時にジェンはそう決心した。
ロヴは真の王になると決意した。
それならば私は全身全霊をかけて、この北の少年王を守ろう。
彼が王座に付くその日まで。
短剣の輝きが消えると同時に、ジェンは少年の前に跪いた。
そして戦士の誇りを賭けて、剣の誓いを捧げた。
今、ジェンは愛馬ルーダに騎乗して、バールオアシスを後にしようとしている。
このオアシスにはたった2日の滞在だったが、あまりにも多くの変化と事件があった。
劇的に変化をしたのは斜め前をゆく、騾馬にのった少年だ。
バールオアシスに着いたときは、無邪気なただの少年だった。
外見にさして変化はない。
まだまだ幼さの残る、十代半ばの赤毛の少年だ。
だが、その心は。
未熟ながらも、王たる者の自覚をもった一人前の男性になろうとしている若者だ。
苦しんでいるロウ・ゼオンの民人を思って、王になる決意をした若者なのだ。
ジェンは少年王の姿をながめつつ、内なる声で自分の相棒に問いかけた。
(カイル、私たちはどこに向かうのだろうな?)
(そやな、大変な旅になりそうやな・・・不安か、ジェン?)
(ああ、不安だ。だが、誓いは守り抜く)
(そうか、ほな、俺も頑張るでぇ~)
肩に座っているカイルが、そっとジェンの頬をなめた。
自分が付いているから心配しなくてもいいというように。
ジェンはそっと、カイルの喉を撫でた。
なめらかな銀の毛皮をとおして、カイルの暖かさが伝わってくる。
自分には相棒のカイルがいる。
1人ではない、それがこれほど心強いと思える。
ロヴには自分とカイルが付いている。
ロウ・バルトは1人だけ、自分の世界に自分しかいない。
ロヴと彼の差はここにある。
ロヴは他人を拒否しない。他人を信じる心がある。
だが、ロウ・バルトは…。
何も誰も信じようとはしない。
信じているのは、自分と自分の力だけ。
欲しているのは、ロヴの持つ短剣とそれを手にした時の力だけ。
人狼が『視せた』ロウ・バルトはこんな人物であった。
(ロウ・バルト、これからお前が相手にするのは私だ)
(それと俺やで)
ジェンとカイルは果てしなく広がる砂海を見据えた。
まだ見ぬ黒の魔法使いロウ・バルトに、そう心の中で宣言した。
ロウ・ヴェインを倒す前に、私たちがお前の相手をすると。
お待たせしました。やっと、新しいお話に突入です。
悪役が出張ってきますよw
描ききれるのか魔法合戦??
ジェン、力押しが私の得意技だ。頑張っておくれやで^^;
いよいよ、新しい話に突入^^:
前章長かったけど、物語の中味はほんの2週間ほどしかたってない><
ロヴの故国までなにやら長い道のり・・・どうかお付き合いくださいね。
私もがんばるからね。
カイルは頼りになる相棒であり、癒しも与えてくれる最強の子だよね~♥
ロウ・バルトの恐ろしい登場から始まり、ドキドキ感満点だね!楽しみにしています!!
しかしパールオアシス滞在がたった2日だったとは…本当に濃い2日だったね~
激闘変と名づけつつ、敵役のロウ・バルトがよく解らない人物ですよね~
ロヴの短剣の方が目だっているような気がする。
題名にふさわしい内容になればいいんですが。
剣に力が宿って 守ってもくれる・・・
私も ゲームで悪と戦ってますので 気持ちが入ります (。・ω・)ゞデシ!!
ロウ・バルトに同情しますか^^;
暴走キャラコンビですから・・・いっしょに宴会したらどうなるんだろうw