春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」23
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/18 01:02:43
「何かしら? あっちでみんな集まってるわ。」
列車を降りた直後、改札口へ向かう途中で太田は言った。
「改札口で何かをしているみたいだね。」
二人が改札口へ向かうと、丹後七姫の一人でもある乙姫が観光客を出迎えていた。
「乙姫さまだわ!」
「乙姫って、竜宮城の乙姫かい?」
「そうよ。 ここ、宮津市には竜宮城伝説が残ってるの。 だから乙姫さまみたい。」
「イベントって、これか・・・。」
「そうみたいね。」
彼女が辺りを見渡すと、そこかしこにキャンペーンのポスターが貼られていた。どうやら、各主要駅にある丹後七姫のスタンプを押すと記念品が貰えるらしい。
二人は観光客でごった返す駅を抜け、天橋立に向かって歩く。
「駅前通りは余り変わってないわね・・・。 駅はかなり様変わりしたけど。」
「天橋立まではすぐなのかい?」
「ええ。 目と鼻の先よ。」
二人は駅前の国道を渡り、天橋立に向かう道を歩く。ここにも海水浴場があるらしく、浮き輪を持った子供達が目の前を走っていく。小道は両側に土産物屋が並び、ここも観光客で賑わっている。すると目の前に橋が見えた。コンクリート製の橋だが、何故が運転席みたいな操縦室が付いている。
「ここから先が、日本三景の一つ、天橋立よ。」
「何か、橋に操縦室みたいのが付いてるね。」
「あれね・・・。 見ていたら分かるわ・・・。」
彼女がそう言った矢先、係員が出てきて道をロープで封鎖した。
「通れなくしちゃったよ・・・。」
小田が呆気に取られていると、橋が徐々に回転し始めた。太田は指をさして言う。
「あそこに船着き場があるでしょ? ここは宮津港から来た観光船とか地元の漁船が通 る海路になってるの。 橋があると行き来出来ないから、回転させてる訳。」
「成る程。そのための操縦室なんだね。」
「そう。 でも・・・、ちょっと時間が掛かるみたいだから、文殊堂(もんじゅどう)へ行きましょ。」
「文殊堂?」
「お寺よ。 『三人寄れば文殊の知恵』って言葉、聞いたことない?」
「それくらい知ってるよ。 こう見えても大学は出てるんだ。」
「へえー。 以外・・・。」
「大きなお世話さま!」
「ゴメンね。 で、ここがその言葉の発祥地なの。」
「成る程・・・。 場所は何処にあるんだい?」
「あそこよ。」
彼女が指さした方向。距離にして10m程の所に門扉があった。
「近いね! 目の前じゃない・・・。」
「じゃ、行きましょうか・・・。」
二人は古びた門扉をくぐり、お寺へ入っていった。お寺も観光客で賑わっているのかと思っていたが、人気はまばらでどこか閑散としていた。
「海水浴シーズンだから、こっちの方は人がこないみたいだね。」
それ程広くない境内の木立を抜けて彼は言った。参道の賑わいとは違い、ここではセミの鳴き声の方がうるさい位だ。
「今日は暑いから・・・。 天橋立の小道を歩いた方が涼しいんでしょうね。」
彼女は空を見上げて答える。 木々の間から見える軟らかな木漏れ日とは裏腹に、昼過ぎの時刻とあってか、気温は既に30℃を越えてそうな雰囲気だ。海から来る風がなければ木陰でもかなり暑く感じる天気だった。 二人は本堂へたどり着き、並んでお参りをする。
「何をお願いしたの?」
帰り道、彼女がにこやかに話しかける。小田は少し考えたフリをして答えた。
「うーん、 もっと仕事がしっかりと出来るようにって、お願いしたんだ。 君は?」
「無事に、旅が出来ますようにってね・・・。」
彼女は小田の腕を組んで答える。出会って数日しか経ってないのに、ホントのカップルみたいだな・・・。そう思い、照れ笑いを堪えながら彼は笑顔で見つめ返した。




























物語は更にここから複雑化して行きます。 複線だらけで帰ってこれるかな・・・。と、チョット心配していますが・・・。(原作者がそんな事、言うなよな!)
某アニメみたいに「夢オチ」とか、そういう面白くないネタではない事をお約束しましょう・・・。
でも、この回のラストだけ見てると、ミステリーって言うより恋愛小説化してるような・・・。^^