春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」22
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/16 23:37:54
第3章 悲報
「西舞鶴、西舞鶴です。 北近畿タンゴ鉄道宮津線はお乗り換えです・・・。」
急行丹後1号は定刻通り12時48分、西舞鶴駅に到着した。列車は切り離し作業の為、ここで5分ほど停車する。
「そうか、分かったぞ!」
小田は急に何かを思いだしたかの様に叫んだ。周りの乗客が何事かとこちらを見る。
「ビックリしたー。 小田さん、脅かさないでよ。」
太田は胸に手を当て、ため息を吐いて言う。
「何が分かったの?」
少し落ち着いた彼女が問いかける。小田は当たりを見渡して答えた。
「いやね、ずーっと考えてたんだ・・・。 ホラ、京都駅を出る時に、陽子さんが『途中で別れるなら、網野行きは車掌がいないのか?』なんて聞いてたよね?」
「えっ、ええ。」
何だ、そんな事か・・・。そう思いつつ、彼女はホッと胸をなで下ろして相づちを打つ。
「ホラ、分からないかな? 第三セクターだよ。」
「第三セクター・・・? 何それ?」
太田の頭の中は疑問符で一杯だった。彼女自身、鉄道はさほど詳しくはない。小田からの質問の意味が分からないのは当然だろう。
「そうか・・・。そこから説明しなくちゃダメなんだね・・・。」
彼はため息を一つ吐いた。
「んじゃ、説明するね・・・。」
彼の説明が長いので簡略させて貰うが、第三セクターと言うのは、国および地方公共団体が経営する公企業を第一セクター、私企業を第二セクターとし、それらとは異なる第三の方式による法人という意味である。(ウィキペディア調べ)
「分かったかな?」
「・・・・・・・。」
「うーん・・・。簡単に言うと、一般市民がお金を出し合って、運営していく方式って言ったら良いのかな?」
「それで・・・。 どういう関係があるの?」
「つまり、運営している会社が違うから、車掌そのものが交代するんだよ。」
「・・・。 そっか、列車は線路の上を走るだけだけど、運営会社が違うからそれによって替わるって事なのね。」
「そういう事。 だから恐らく、運転手も替わると思うよ。」
「なるほど・・・。 納得したわ・・・。」
ホントどうでも良い事だけどね・・・。そう思いながらも、彼女は小田に相づちを打つかの様に答えた。彼は納得したのか、にこやかな表情で外の景色を見ている。
列車は定刻通りの12時54分に駅を出発した。目的地の天橋立まで約30分程の行程である。
「本日も北近畿タンゴ鉄道宮津線をご利用下さいまして、ありがとうございます・・・。」
車掌の案内放送が流れる。乗務員の名前が告げられた後、キャンペーンの告知案内が始まる。
「ねえねえ、天橋立駅でイベントをやってるみたいよ。」
「みたいだね・・・。」
列車は由良川添いを走り、丹後神崎という小さな駅を通過すると、由良川の河口を渡る鉄橋にさしかかる。ここから天橋立まで、右手方向に日本海が見渡せるのだ。
「見てみて! みんな海水浴してるー。 気持ちよさそう!」
太田は子供のようにはしゃぎながら窓の景色を見る。
「ホントだね~。いいなぁ。」
晴天の影響で、夏の海がキラキラと輝いて見える。砂浜では子供達が賑やかにはしゃいでるのが手に取るように分かる。
「昔、子供の頃、ここの浜で泳いだ記憶があるの。 地元じゃ、結構有名な海水浴場よ。」
列車は山間のカーブへと差し掛かる。右手に海を見ながら、わずかな隙間を縫って走っていく。
「鉄道雑誌によると、この線区の山場らしいね。 もっとも見所のある景色らしいよ。」
小田は手帳を開きながら話す。しかし彼女は見向きもせず、車窓から見える景色に没頭している。 列車は宮津を過ぎ、定刻通りの13時26分に天橋立に到着した。




























まさにミステリーですね。
この中に色々なものがちりばめられているかと
思うと、ほんと一つたりとも見逃せないと思います。
前回に言っていた通り、新章に突入しました。 所で、文章にやたらめったら、鉄道の記載が出てくる事をお許し下さい。 鉄道物のミステリーを書くと、ダイヤグラムが物語に関わってきますので・・・。その辺りは、西村 京太郎のミステリー小説に影響されてるのかもしれませんね・・・。
僕の小説は、登場人物の深層心理を細かく分析して書いているつもりでいてます。 どうでも良い内容でも、物語に深く関わってくる可能性がありますので、気を付けて読んでいって下さい。
なお、『ここら辺、こういう風にしたらどうかな?』という質問も随時受け付けています。どうか、遠慮なしにコメントして頂ければ幸いです・・・。