春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」21
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/16 00:31:53
「で、その依頼主である太田 陽子なんだがね・・・。」
木村は少し言葉を濁した。
「どうやら太田金融、つまり、太田 有三の娘だそうだ。」
「ええ~っ!」
谷本は驚いて奇声を挙げる。
「何で・・・。 何で娘が親の・・・、おそらくは片腕として働いている山岡を身辺調査するんですか?」
「何故かは分からん。 が、陽子は父の意見に反対していたらしいと言うのが、警視庁の回答だった。 現に、10年程から親元を離れて生活しているらしいからな。」
「と言うことは・・・。山岡を調査する事によって、親のやっている事を辞めさせようとした・・・。」
「と、考える方が妥当だろう。 結晶大麻は彼女からもたらされた物だったんだろ?」
「だと思います。 依頼用のファイルに一緒に綴(と)じてありましたから・・・。」
「彼女だったら、簡単ではないにせよ、そういう証拠物を手に入れる事は可能な筈だからな。 まあ、ともかく。 山岡の関西圏での仕事が何となく分かってきたよ。」
「じゃ、何故彼は殺されたんでしょうか?」
彼は聞いた。
「殺害の動機だよね。 実はここが一番ネックになってるんだ。谷本君の調査で、山岡が密輸に荷担していた事は分かったんだが、それが原因で殺害されたとは思えないんだ。 むしろ、何だかのトラブルに巻き込まれたと考えた方が妥当だと思う。」
「昼日中にですか?」
「まあ、そうだ。 しいて言うなら、大村さんの事務所に来た太田 陽子は重要人物だな。重要参考人と言ってもいい。 現時点で、山岡との接点がある人物は彼女だけだからな。殺害された当所、東寺の饅頭屋で山岡と一緒だった所を目撃されてるしな。」
「あれ、太田 陽子だったんですか?」
「ああ。 昨日君から聞いて、警視庁に問い合わせ、写真をファックスして貰った。それを、今朝その饅頭屋で聞き込んで来たんだ。 案の状、彼女だった。」
「って、事は。 喫茶店のマスターが目撃した秘書らしき人物って言うのも・・・。」
「十中八九(じゅちゅうはっく)、彼女だろうな。」
「じゃあ、彼女を指名手配しなきゃ・・・。」
「谷本君。 あくまで、これは仮説なんだ。 証拠があるわけでもない。それだけで、指名手配は出来ないよ。
所で、大村さんは何処に行くと言ってたんだ?」
木村はニヤついて聞くと、彼は即答した。
「あっ!!! そういえば、今朝の事務所に留守番電話が入ってまして、まあ、先生だったんですが・・・。 太田 陽子を追っかけて、天橋立に行くと言ってました!」
「ほらね。 自ずと答えは出てるだろ? 高知、岡山ときて、今度は天橋立か・・・。まるで逃避行だね。」
「警部。何で先生が太田 陽子を追っかけてるって事を知ってるんですか?」
「だって、君が俺に話しただろ? 依頼人を追いかけて高知へ行ったって。 しかも岡山に行ったって事まで、そこにいる小山に話したそうじゃないか。高知、岡山ときて、今度は天橋立まで着いて行ったって事になると、尾行していると考えて当然じゃないかね?」
「そりゃ、まあ。 確かに・・・。」
「ほれほれ。 また君の携帯に大村さんからの着信でも入っているんじゃないのか?」
木村は苦笑して谷本の携帯が入っている鞄を指さして言う。彼は慌てて携帯を取り出し、確認する。
「確かに、留守番電話が入ってました。 でも、先生じゃありませんでしたよ。 僕の親友でした・・・。」
谷本は携帯を閉じて答える。
「警部、チョット失礼しますね。 その親友が、重要なネタを仕入れてきたらしいんで。」
「そうか。 じゃあ、俺もそのネタを食べに行くよ・・・。」
「寿司じゃないんですから・・・。 では、失礼します。」
彼は府警本部を出て、事務所に戻っていった。




























いやいや、話の展開が複雑になればなるほど、書いている方は訳分からなくなってきますね・・・。
って事は、呼んでいる人はもう一つ理解出来ないのか・・・? これじゃ、ダメだな・・・。
とりあえず、次回から第3章に入ります。物語は段々と佳境に入って来ました。今後の展開は一体どうなるのでしょうか? 次回をお楽しみに!!