Nicotto Town


ドリーム・バー 「デスシャドウ」


春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」18

 「お前さん、彼とはどういう関係なんだい?」
 谷本が山岡について詳しく聞いてくる事を疑問に思ったのだろうか。マスターがグラスを拭きながら言った。
 「関係って言う程のものでは・・・。 仕事仲間って言った方がいいんでしょうかねー。」
 彼は頭を掻きながら答えた。
 「あんたも宝石商かい?」
 「いやいや、調査会社の人間です。 彼の死に疑問を持つ人がいまして・・・。」
 相変わらず嘘が下手だなぁと思いながら谷本は答えた。
 「調査会社? 事件だったら警察が調べてるんじゃないのか?」
 「ええ・・・。 まあ、諸事情が色々ありまして・・・。」
 「ふーん。 じゃ、理由は聞かないでおこう。 俺にすりゃ、常連客が一人減っただけの話だからな。」
 「恐縮です・・・。」
 「所で、さっきの骨董の趣味だがな・・・。」
 「はい?」
 「俺の予想だが、彼にはそんな趣味はないと思うぞ。 実は俺は骨董品集めが趣味なんだが、彼からそんな話は一言も出ていない。 俺も年期が入ってるから、そこそこの話は出来るんだがな・・・。」
 マスターがそう言って、壁の方を見た。谷本もその方向を見ると、壁に絵が飾られていた。
 「リトグラフなんだがね。1800年代に描かれた洋物の絵画だよ。 俺の宝物だな。」
 その絵は田園風景の中に風車が描かれている。ヨーロッパの片田舎という雰囲気を持った絵画だ。
 「良い絵ですね。」
 「そう思うか? でも、作者が分からんのだ。 まあ、弘法さんで買った物だから大したやつじゃないと思ってるがね。」
 「いつ頃、購入されたんですか?」
 「去年の秋口だよ・・・・・・。」
 そう言うと、マスターは黙り込んでしまった。
 「・・・。 何か思いだしたんでしょうか?」
 谷本は、不自然なマスターの態度を見てそう聞いた。彼は水を一杯飲んでから答える。
 「いやね・・・。 あの時、偶然にも山岡さんを見かけた事を思い出したんだよ。」
 「彼をですか?」
 「遠目だったから自信はないんだがね。 彼はその時、ウチの店には立ち寄っていなかったし・・・。 見間違いかと思ったんだが・・・。」
 「何をしていたんでしょうか?」
 「さあ・・・。人で一杯だったし、一瞬だったからな。」
 「その時の山岡さんは一人だったんですか?」
 「それも覚えていないんだ。」
 「そうですか・・・。 じゃ、最後に一つ。 彼を見かけた場所と時間は?」
 「R高校の門扉前だよ。 いつもそこの骨董商で品定めをするんだ。 時間は確かお昼前だったかな? 俺は弘法さんがある時は、店をバイトに任せてるからね。」
 「成程。 マスター。 どうもご協力、有り難うございました。」
 谷本は喫茶店を出た。地下の飲食街はまだ昼前と言うこともあり、それ程人の出入りがない。
 {害者が秘書らしき人物とここを出たのは丁度今頃だろう。 これじゃ、目撃証言も出そうにないな・・・。}
 彼は地下街をウロウロとし始める。飲食街を抜けると、ファーストフード店があり、小さめのフードコートとなっていた。そこには幾名かの修学旅行生が楽しくお喋りをしている。フードコートの右側には京土産を売っているお店が並んでおり、ここでも観光客がショッピングを楽しんでいた。
 {ここも無理だな・・・。観光客なら大した話を聞けそうもない・・・。}
 谷本は階段で地上に出る。目の前は烏丸通りで丁度タクシー乗り場となっているらしく、数台が停車している。
 {チョット早いけど、府警本部へ行ってみよう。何か情報が掴めるかもしれない・・・}
 彼は目の前のタクシーに乗り込み、京都府警へと向かった。

#日記広場:自作小説

アバター
2010/09/15 09:12
ロクでもない小説なんかじゃありませんよ!
私は楽しみにしています^^

アバター
2010/09/14 00:39
今回は第17話~18話を掲載しました。

 自分の好きな事をやっているとは言え、時たま気持が萎える事があります。その時、伝言板に「小説見てます。 トチロ~さんのペースで書いて下さい」とか書かれてると、『うわ~、期待されてる・・・。頑張らなきゃ!』って思います。 正直、ホントありがたい話です・・・。 作者冥利に尽きますね・・・。

 こんなロクでもない小説でも見てくれてる人がいるんだって思うと、気持が萎える所か、気力が沸いてきますね。 お陰様で、順調に物語を書くことが出来ます。 この場を借りて、お礼申し上げます。
ホント、どうも有り難うございます。

 この先、何話まで続くか分かりません。が、頑張って、でも頑張りすぎない様にして掲載して行きますので、どうか宜しくお願いします。



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