「山男とサーファー」2
- カテゴリ:日記
- 2010/09/07 05:52:05
(2006年にウエブリーブログに掲載したものです。文章がおかしいけど、行などはどうしても修正できません。4あたりで、修正できているので、我慢して読んで下さい)
ある時、あいつの恋人が「私とサーフィンとどちらを選ぶの?」と詰問した。馬鹿な話さ。愛するものに命を賭けている時、それがたとえ人間であろうと自然であろうと、二者択一などできる筈がないのさ。そこで俺は困惑しているあいつに代わって、後になって彼女に説明してやったのさ。
娘さんよくきけよ 山男にゃほれるなよ 山で吹かれりゃよ 若ごけさんだよ・・・ (作詞:神保信雄氏。作曲者:不明。6番までのうち1番)
彼女は俺の歌うこの唄を聴き終わった時、涙を流していたっけ。 台風一過の海は、穏やかで透明なマリンブルーに染まっていた。嵐の時にはどこかに身を潜めていた海鳥が、今はライトブルーの空を高く低く飛翔し滑空している。なにごともなかったかのように。 昨日、あいつのボードが浜に打ち上げられていた。みごとにまっぷたつにへし折れたボードが、半分砂に突き刺さっていた。しかし、あいつの姿はどこにも見当たらなかった。 海よ、お前にはあいつがどこに行ったのか分かっているんだろ。お前にも、ひとりの勇敢な若者が、お前に挑んで敗れ去ったことを理解できるだろう。今あそこから、一艘の漁船が出て行くのが見えるか。お前が奪い去った男の恋人が、あの漁船に乗っている。黒のドレスを着た美しい娘だ。海よ、彼女の涙がお前と同化したならば、彼女の悲しみを知ってやれ。変わり果てたあいつの姿を、決して彼女の目に触れさせないでくれ。 俺は灯台のある岬から、限りなく青海原の続く太平洋に向かって、あいつの好きだった百合の花を捧げた。