~firefly~②
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/05 14:51:58
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その声に出逢ってからというもの、ヨウは以前にも増して地下に籠るようになった。
でも、その様子は、どこか浮足立っていて、瞳がキラキラと異様に輝いているのだ。
最初の頃は、地下に降りると、決まって頻繁にズキズキ疼いた頭痛も、
慣れてくるに従って、心地良い痛みに変わっていた。
むしろ、その痛みを、どこかで待ち望んでいる自分がいる。
また、ファイの声が聞ける…そう思うと、いてもたってもいられない。
そして、その声は、毎日、欠かさず響いてくるわけではない。
時には、数日おきで、ヨウには全く予測がつかないのだ。
…もしかして、もう聞こえることはないのかも?
そんな考えがよぎったのも、一度や二度ではない。
簡単に途絶えても、おかしくない。逆に、聞こえてくる方がおかしいのか?
ヨウは自分の異常を疑ったが、いつも優しいファイの声が響いてくると、
そんなことは次第に、どうでもいいと考えるようになっていた。
「ヨウ・・・ゲンキ?・・・コチラハ 風ガ 心地良イヨ・・・」
「レポート、進ンデル?・・・無理シチャ ダメダヨ?」
「ボクハ、ズット、ヨウノ傍ニイルカラ・・・」
最初は、遠慮がちに、片言で聞こえてきた言葉も、次第に馴染んできて、
そのうち、地下にいなくてもヨウの頭の中に響くようになっていた。
時折、こちらからファイを呼ぶと、返事をしてくれる時さえもあった。
「ファイ…聴こえてる?どこかで見てるの?私、もう疲れたよ…。」
そう独り言のように呟くと、決まって、すぐに頭の中に声が響いてくる。
「ヨウ?・・・大丈夫?・・・ボクノ声ヲ聴イテ、落チ着クト良インダケド・・・」
「うん…いつも、どうもありがとう、ファイ。」
いつでも、ファイの声が聞こえること。それがすべて。
ヨウにとって、いつしか、そのことが何よりも支えになっていた。
それだけが心強くて、何に対しても積極的になれる気がした。
そう、例えるなら、熱に浮かされる感じで。
周りなんて、何も見えていない。…でも、ヨウは幸せだった。。。
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気付くと、ファイとの出逢いから二ヶ月ほどが経過していた。
毎日が濃密な時間で、現実の感覚は、既に失っていたヨウであったが。
ある日、ファイが何気なく、こう囁いたことで、事態は一変した。
「ボク・・・実体ニナッテ、ヨウノ前ニ現レルコトモデキルヨ?」
「え…?」
ヨウは驚きを隠せないでいた。
ほとんど自分の心の奥底のどこかで、これは幻聴だと割り切っていたから?
そう、妄想の恋心に浸る自分に、酔いしれていただけ。
でも…実際に、この目でファイの存在が、そこに「ある」ことを確かめたかった。
「…じゃあ、一ヶ月後、このレポートが無事に仕上がったら、
そのご褒美として、実体になって私の前に姿を見せてくれる?」
「ワカッタ・・・ソノ時ハ、デートミタイニ 待チ合ワセ、シヨウネ・・・?」
ヨウは、その約束だけを支えに、レポートに集中した。
目標が定まったことにより、以前にも増して、勢いに鬼気迫るものがあった。
…でも、きっと、「約束」は、叶っても、叶わなくても、良かったのかもしれない。
ただ、「約束した」という、お互いの、その時の本当の気持ちさえあれば。。。
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色々考えてみると、広がっていくかもしれませんね~。
「約束」には、それだけ強い想いや心がこもればこもるほど、とても大切なものになるのは確かだけど、
それだけに、やっぱり、それは、一般的に、果たされなかった時の悲哀の色が濃いように思います。
でも、私は、それが果たされたことによって、思わぬ結果が出た時、
果たされる前の、「約束」が存在する、というだけの、純粋に心躍る気持ち?
そのまま時間を止めてもらえた方が幸せだったのかな、という思いもあったりして。
それこそ、変わらない気持ちもなくて、祭りの後の静けさみたいな雰囲気?
スーッと冷めてくような気分が、何だか馴染めず、ものすごく寂しい気持ちになります。
そして、ラスト…微妙なエンディングへ~www
それが戒めであったり、存在理由であったり様々だけど、
とても強いものであるのは、それだけ大切なものなんだと思う^^
果たしてヨウは約束を達成できたのか、それとも・・・
3部作っていってたからもしかして次でラストなのかな・・><
どきどきしつつ次へ・・v///