Nicotto Town


ドリーム・バー 「デスシャドウ」


春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」11

 カメラのレンズを望遠仕様に取り替えて撮影してると、後ろから声を掛けられた。
 「おい、こんな所で何してるねん!」
 谷本が振り返ると、男が二人立っていた。一人は格幅の良い青年。もう一人は少し痩せた印象のある青年だった。
 「何って、写真を・・・・。  おぉー、春田! 久しぶりやね!」
 谷本は突然の声にカメラを落としそうになりながらも格幅の良い青年、春田と呼ばれる人物に声を掛けた。彼は谷本の小学校からの友人で、今でも時々遊びに行く程の仲である。
 「相変わらず、風景写真でも撮ってたんかいな。 暇人やね!」
 春田は苦笑して答えた。谷本は笑って返す。
 「アホ言え! 仕事やっちゅうの! 所で、隣の奴は誰やねん。」
 彼は春田の隣にいる青年の事を聞いた。春田は笑いながら答える。
 「俺の仕事仲間や。」
 「仕事って、ホテルのか?」
 「ああ。彼の実家がこっちやから、遊びに来てん。」
 「なるほど。 って、今日は平日やで。 普通は仕事してるんちゃうんか?」
 「今日は休みやねん。 って、実質休みなのは俺らだけやけど・・・。」
 「そうなんか・・・。」
 「お前も趣味は大概にせえよー。」
 「だから、仕事だっちゅうに!  所でお前ら、昼飯は?」
 「まだや。ここらへんの店が一杯やから、近場で良い所ないか?って、こいつに聞いてた所(とこ)やってん。」
 「丁度、昼過ぎやでな・・・。 それ、俺も一緒に付き合っていいか?」
 「俺はかまへん(良い)けど・・・。 赤岩、お前、どうする?」
 春田はもう一人の青年、赤岩と呼ばれる人物に聞いた。彼は軽く微笑んで了承してくれた。
 「ありがとう。んじゃ、行くか。」
 3人はポートタワーを後にして、南京町にあるラーメン屋に入った。注文した物が来るまでの間、谷本は春田と赤岩に殺害された山岡ついて何か知っている事がないか聞いてみた。
 「この男、確か昨日東寺で殺されたんとちゃうんか?」
 春田は水を飲みながら言った。
 「そうやねん。実は、ウチの先生が調査してた人物やったらしいねんけどな・・・。」
 「調査って、身辺調査か?」
 「どうやらそうみたいやわ。 で、そのニュース以外にこいつを見たことないか?何か東京から出てきたみたいで、最近こっちで仕事してたらしいねんけど・・・。」
 「うーん、見たことないな。 赤岩、お前はどやねん?」
 「俺もないわ。」
 「そっか。 いやな、お前らホテルのフロントやってるやろ? この 山岡って男、恐らくどっかで寝泊まりしてたと思うんやけど、1週間程の滞在やったら普通はホテルに宿泊するやろ? まあ、宝石店を経営してたらしいけど、そんな男が民宿なんて考えられへんし・・・。そう思って聞いてみたんやけど・・・。」
 「なるほどな。」
 「でも、それやったら、何で京都で調べへんの? 京都のホテルを当たったらいいやんか。」
 赤岩は丁度運ばれてきたラーメンをすすりながら言った。
 「それは警察の仕事。 まだ生存してるんやったらともかく、もう死んじまったからな。」
 谷本は湯気で曇るメガネを外して言った。
 「じゃ、何でここまで来てるんやな。」
 「まあ、それは仕事上の秘密って事で・・・。」
 「勿体ぶらんと教えろや。」
 どうやら春田は谷本が勿体ぶって言わないと思っているらしい。現に今まで過去にそんな風な言い回しを彼がしてきたからだ。
 「分かったよ。 ホントは仕事上の秘密なんやけどな。 でも、ここじゃマズイし別の場所で。」
 三人はラーメン屋を出て、近くの喫茶店に入った。クーラーが良く効いており、汗をかいた彼らにとっては店内が少し寒い気がした。既に昼休みが終わった時間帯ともあってか、店内はガラんどうとしていた。
 「さっきの続きやけど、どんな秘密やねん?」
 赤岩は身を乗り出して聞いてきた。谷本はまだラーメンの味が残る口の中を洗い流すかの様に水を含んだ。
 「これや。」
 彼は港が写る写真を出した。
 「・・・・、港やね。  ひょっとして、ココか?」
 春田は写真を見て聞いた。
 「当たり。 さっきポートタワーで写真を撮ってたのは、この場所を確認するためやねん。」
 「貨物船が写ってるな。」
 「で。これと、殺された男とどういう関係があるねん?」
 「春田。お前、この事件に興味があるんか?」
 谷本は、丁度運ばれてきたアイスミルクティーを口にして言った。
 「別に。 でも、普通は気になるやろ。家の近所で起きた、でっかい事件なんやから。」
  「そりゃな・・・。」
 「で、どうやねん・・・。」
 「そやな。 まあ、経緯から話そか・・・。」
 谷本は今朝の出来事を二人に話した。

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