Nicotto Town


ドリーム・バー 「デスシャドウ」


春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」9

 第2章     調査

 7月22日 水曜日。小田と太田は菜園場(さえんば)に来ていた。ここは江戸時代、当地に土佐藩主用の菜園場があったことに基づく町名から来ているらしく、現在は飲食店等が立ち並ぶ商店街となっている。二人がここへ来た時には買い物客で溢れていた。
 「うわー、凄い人ね!」
 「うん、夕方前だからね。 しかし、これ程凄い人集りとは思ってもみなかったよ。」
 小田はそう言って、混雑する商店街の様子を撮り始めた。太田は近くにあった魚屋を食い入るように見つめている。
 「鰹のたたきだわ! これ、スッゴク美味しそう!」
 「いいねー、これ! 最高の被写体だよ!」
 まるで絶世の美女に出会ったかの様に鰹のたたきにカメラを向け、必死で撮りまくる。その姿が奇妙に映ったのか、程なくして店主と思われる男がやって来た。
 「いらっしゃい! 何にする?」
 「これ、自家製ですか?」
 太田は鰹のたたきを指さして言った。夏の空で日焼けした顔をニヤつかせながら店主は答えた。
 「勿論やがね! ここらは殆どが自家製で販売しちょうきに!」
 「自家製かぁ。 スゴク美味しそうー!」
 「当然! 自慢のたたきだね! お姉ちゃん美人やからまけてもいいで!」
 「マジで? 一本いくらになります?」
 「そやのー。  600円でな。 買うか?」
 「うーん。  じゃ、3本!」
 「お姉ちゃん、ありがとー!」
 「これ、何日位、日持ちしますか?」
 小田は店主に聞いてみた。
 「そやのー。 冷蔵庫で3日じゃの。 兄ちゃんも買うか?」
 「いや、僕は結構です・・・。」
 「なんや、兄ちゃん。 高知に来たら、たたきを食わんとイカンぜな!」
 「いや、僕は毎回高知に来てますので・・・。」
 「写真だけやったら何にも食えんぜよ!」
 店主は豪快に笑いながら言った。 そんなやり取りの中、30分程撮影を行った。
 「で、これからどうする? 僕は17時20分発の特急で岡山まで行くけど・・・。」
 まだ明るい夕方の高知駅構内の喫茶店で、小田は太田に聞いた。彼女はアイスコーヒーを飲みながら答えた。
 「私、天橋立まで行こうと思っているんですけど・・・。 もし良かったら、付き合ってくれませんか?」
 「天橋立? あの日本三景の一つである、天橋立ですか?」
 「ええ。私の故郷なんです・・・。」
 「天橋立って言ったら、京都ですよ。 チョット待って下さいね。」
 小田は時刻表を取り出した。そして、しきりに考えている。
 「うーん。 どうしても、今日中に天橋立に行くのは無理ですね。飛行機もこの時間では無理ですし、列車でも京都までが精一杯ですね。 私も岡山でチョット仕事がありますし・・・。」
 彼がそう答えると、彼女は暗そうな表情をして慌てて言った。
 「別に今日中でなくていいんです。 昨日も小田さん、言ってましたよね。僕のスケジュールに合わせてくれって。」
 「確かに言いました。」
 「小田さんが、岡山で用事があるなら、岡山に一泊しても良いわけですし・・・。」
 彼は考えた。 確かに昨日、ボディーガードしてくれと頼まれた。おかしな話だと最初は疑ったが、彼女の余りにもの真剣さに渋々引き受けた。さらに、ここ高知から京都北部にある天橋立まで付き合って欲しいと言っているのだ。何とも馬鹿げた依頼だ!
しかし、その依頼を楽しんで付き合っているのも事実・・・。何とも俺もバカになったね!
 「・・・。  そうですね。僕は、貴方のボディーガードでしたね。 分かりました。
 天橋立に行きましょう!」
 「何度も無理を言って、スイマセン。」
 「いえいえ。 僕の方も仕事に付き合って貰っている訳だし・・・。 そうと決まれば 急がないと。 もう列車の時間だよ。」
 小田は時計を見て言った。太田が腕時計を見ると、17時を少し回っている。
 「私、切符を買ってないわ!」
 「大丈夫! 僕に任せて! さあ、急ごう。」
 二人は17時20分発の特急『南風14号』に乗り、夕日に染まる高知を後にした。

#日記広場:自作小説

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2010/09/03 21:48
スイマセン、本日はここまでです。 まだ、ミステリーって程の難事件にもなってないですね・・・。
じらしまくっていて、すいません・・・。 (何か、謝ってばっかりやなぁ~)

 自分でもここから先、文章が繋がっていくかどうか心配で心配でなりません・・・。
ひょっとしたら、『何や、こんな物か』と言われるかもしれませんが・・・。それでも精一杯書かせて貰います・・・。 



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