春谷探偵物語 第1巻「序章~始まりは殺人~」3
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/01 00:24:10
8時56分、L特急しまんと3号は坂出を定刻通りに発車した。小田はその列車の自由席に腰を降ろし、イスをリクライニングさせて考えていた。
{あの女性は一体、何者なんだろう? ひょっとして、本当にダイビングのインストラクターをやっているのだろうか? 刑事が嫌いと言っていたが、過去に何かあったのだろうか・・・・・・・・。
小田はふと目を覚ました。そうか、あれから眠ってしまったんだ。時計を見ると10時を少し過ぎた所だった。やれやれ、1時間も眠ってしまったんだ。と思っていると、座席のテーブルに手紙が置いてあるのに気が付いた。彼は封を開けて中を読んだ。
{先程は御免なさい。 お詫びといっては何ですが、今日の午後5時に、高知駅のコンコースにある喫茶店『ジュフラン』で待ってます。 Y・O}
彼はすぐに立ち上がり、車内を探した。が、すでに下車したらしく何処にも見あたらなかった。小田は席に戻り、また考え始めた。
{あの女性の名前は分からなかったが、イニシャルは分かった。 だが、本当の名前の イニシャルだろうか? 偽名のイニシャルかも知れない。しかし、偽名ならイニシャルなんて使う必要はないはずだ。 それと、このお詫びの手紙。17時か。まあ、ダメ元 で行ってみるか。}
L特急しまんと3号は定刻通りの11時に高知へ到着した。小田は喫茶『ジュフラン』の位置を確認してから、まずは『はりまや橋』へと向かった。
「へえ、これが土佐電(土佐電気鉄道)か。色々な路面電車が走ってるな。」
小田ははりまや橋をバックにして土佐電を入れて写真を撮った。角度を変えて幾枚かシャッターを切った後、高知城、桂浜と向かい、予定をこなしていった。
「さすがに今日は暑いな。くそっ、海水浴客が羨ましいぜ。」
桂浜は海水浴客でごった返していた。砂浜でビーチバレーをしている女性に被写体になって貰い、海水浴の風景を次々と撮っていった。
「さてと、今度は高知港だ。丁度、夕方の水揚げが始まる時間だな。」
小田はタクシーを拾い、高知港へ向かった。タクシーが到着と同時に船が港へ帰ってきたらしく、彼は一目散に船に向かった。そして水揚げシーンをカメラに収めていった。
「さてと、そろそろ良いかな。 ん、もう4時半だ。待ち合わせに間に合わなくなるな。ホントは龍河洞スカイラインにある展望台からの夕焼けを納めたかったんだが。」
小田は再びタクシーを呼び、高知駅へと引き返した。
16時55分、小田は高知駅にある喫茶ジュフランのイスに座っていた。しまんと号の車内に置いてあった手紙が真実なら彼女はここにいる筈だが・・・・。
「5分前なのに、まだ来ていないのか。取りあえず、今日の取材をまとめよう。」
そう思ってバッグからテープレコーダーを取り出そうと下を向いた瞬間、頭の上から声が聞こえた。
「失礼いたします、小田様でしょうか?」
彼が顔を上げるとウエイトレスがこっちを見ていた。
「ああ、そうだが。 何か?」
彼は不思議そうな顔をして答えた。ウエイトレスはホッとした表情を浮かべながら言った。
「お客様にお電話が入っています。」
「ああ、有り難う。」
小田はイスから立ち上がり、カウンターに置いてある電話へと急いだ。
{一体、どこからの電話だ?}
そんな事を考えながら、受話器を取った。
「もしもし、小田ですが・・・・。」
「あっ、私です。坂出の喫茶店でお会いした・・・・・。」
あの女だ、そう思った小田は話をきりだした。
「ああ、あの時の女性(ひと)だね。」
「よかった、ちゃんと待っていてくれたんですね。」
「手紙に書いてある通り、ジュフランで待っていたよ。君は一体、どこにいるんだ?」
「五大山の展望台です。終バスに乗り遅れて・・・・、御免なさい。」
「五大山と言うと龍河洞スカイラインにある展望台だね。」
「ええ。で、すいませんがここまで来て貰えますか?」
「そりゃ構わないが、今からだと三十分位かかるよ。」
「構いません。展望台にあるレストランの前で待ってます。」
そう言うと女性は電話を切った。小田は支払いを済ませると、駅前のタクシー乗り場から五大山へと向かった。




























わたしも気合を入れて読ませていただきま~す!