広島
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/29 02:04:40
太田川は 山あいを出たところで 分岐を繰り返し
いくつものデルタを形成する。
広島の街は そのデルタの上
幾本もの川か゛ 街のあいだを流れ
水の都と呼ばれていた。
その太田川が 分岐する前の 広大な河川敷
神話の時代から変わらぬ時の流れのように
清冽な水を 滔々と送り続けている。
澄んだ大気の中 夕日は赤く色づかず
空気の一粒一粒を 輝かせはじめる。
光り輝く空気の粒の中に 溶け込む 由美子の姿を
私は 土手の上から 眺めていた。
ひとつ下級生の由美子との出会いは 文芸部。