叶わぬ願いはもういらない…9
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/27 23:06:30
「ルミ?ルミも俺と同じ…過去へ来たのか?」
ルミの横顔を見る、先ほどまで楽しそうな顔でいたルミの顔は悲しそうな顔になっていた…
その瞬間だった。
僕の画面は真っ黒になる。僕は目が覚めた…自分の部屋の天井が見える。カーテンの隙間から太陽光が漏れている、朝だ…
虚しさと悲しさで、もう一度目を瞑る。そこには黒いだけの空間が広がっていた。
「…夢か…ふっ…」
虚しすぎて笑えてきた。これが彼女をないがしろにした罰だ。僕の罪は重すぎる。彼女を失っただけでは許してくれないらしい。
僕は、ただの願望とも言うべきこんな夢を幾度も見ている。酷い時は、連夜続く事もある。何度も何度も見てしまう。これが正夢にならないのかと、どれほど思った事か。
正夢などになるはずが無かった。
今まで何度となく見てきた夢は、現実にならないことをやっと悟った。遅い…遅すぎる。
茹だるような暑さから逃げるようにベッドから出て、大学へと行く支度を始めた。無論、カレンダーは2010年と表記されていた。
カレンダーを確認するなんて愚かな行為だが、確認せねば気がすまないほど夢は現実に近かった。
ついさっき来たような気がするバス停に到着。数人の乗客が暑い中バスを待っている。
バスが到着。僕は素早く乗り、キョロキョロと車内を見る。夢と何も変わらない、夢で見た感覚と。デジャブか?正夢か?いや夢の世界は2008年、今は2010年。いつもと変わらない日常だ。
夢から覚める瞬間に見たルミの悲しい顔には、心を締め付けられた。
そして彼女と別れたときのことを思い出す。
県予選の決勝でルミと出会って、程なく付き合うことになり、何事もなく1年が過ぎた頃だった。
突然、ルミから別れ話を切り出された。
彼女は泣いて、今、付き合うことは考えられなくなったと言うだけだった。明るい彼女がこれほど泣くところを見て、僕は驚いてしまった。
その時の彼女の涙に押され、僕は了承するしかなかった。次の日、僕は彼女の友人から呼び出された。
「…本宮君」
初めて会うルミの友人は怒っていた。
「もう少し彼女のこと考えてほしかった」
僕は…とてつもなく愚かで鈍感だった。
1年間浪人して大学に入った僕は出逢った当時は1年生、ルミは普通に短大に入り2年生の半ば、その頃は就職活動中だった。
そんな大変な時期に僕と付き合ってくれたルミは、見事ある企業に就職が決まり、僕も安心していた。
だか、彼女は不安だらけだったんだ。なかなか決まらない就職先、で入った企業での大変な慣れない仕事。
今思えば、思い当たる節は多々ある、明るく笑っていたかと思うとふと見せる不安げな顔。そんな顔を僕は見逃していた。
「ルミもあなたに相談しなかったことは悪いと思うけど…」
いや、僕が悪い。
まだまだ大学生を続けられる僕は彼女に学生のノリを押し付けていたんだ、就職活動中の不安な彼女に、そして制約の厳しくなった社会人になっても…
ルミが相談しなかったんじゃない、相談できるような雰囲気に僕がしなかったんだ。
それからしばらくして、ルミはその会社を辞めたそうだ。
「私たちが励ましてもダメだった、きっとあなたの声が欲しかったのよ」
その言葉が胸に突き刺さった。
そんなことを思い出しながら、僕はバスに揺られていた。
すいません、夢オチで
でも、これからまだ続きます
お楽しみに^^
まさかの夢オチ!
予想してなかったので、ビックリです。
それにしても、彼女の表情。引っ掛かりますね。