機心<7.3>
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/27 05:22:30
<from 7.2>
現実と言う情報を固定する指標を、見出す。
混沌の中でそれを思い/願い/念じ、そして掴む。
私は、それを、ロックオンする。
撃墜する。この悪夢に終止符を撃ってやる!
<無駄なことだ>
「ならば、それでもいい!」私は言い放つ。「いいんだ。これで」
「何を言っている?」
「わかっているはずだ」と、私はそれに応えた。「おまえがワタシならば!」
射/射/射/射―――。
ファイアコントロールを開放する。フル-バラージ・アタック。
幾筋もの、曳光/射線が、それへと集中し、収束する。
閃光。
それは闇を撃ち砕き、宇宙を切り裂いた。
膨張する光。
超新星爆発の様だ。
視界不能。
あたり一面を強烈な光が覆い尽くした―――。
意識の途切れた感覚は無かった。
だがしかし、あの閃光に包まれてからは何もわからない。
見えない/距離感というものがまるで掴めない。すべての感覚が消失したかのような。
白なのか、灰色なのか、黒なのか延々と続く色の/反応の無い色の世界。
静寂/孤独。
今まで感じたことのない感覚が私を包む。
だがそれも、あまり長くは続かなかった。
突然に複数の感覚/センサが異質な存在の出現を感知する。
緊張感が最高潮に達した様な過敏な反応がつんざく。
警告音/直感が警鐘を鳴らした。
出現/飛来する、それ。FA-5。
だが、これは。
おれ、では、ない。
それは一直線に/真直ぐに/こちらへと向かってくる。
私は飛び上がった。
邂逅/視認。
IFF反応を確認するまでもなかった。
反転/直感。
その動きと、感覚からやつだとわかる。
亡霊/No.07。
そう、こいつは、敵。倒すべき敵だ。
警戒/対峙。
睨み合い。無言のまま、互いに間合いを取り、最接近する。
よく似ている、が、こいつはおそらく剣ではない。
悪夢/夢魔。
マザーが/システムが/創造主が差し向けた刺客だ。
それはサブ・アーキテクトが汲み取ったものなのかもしれない。
私は思考のどこかで、剣との勝負を望んでいた、だから、いま目の前にいるそれが、その姿なのかもしれない。と。
だが、もはやそんなことは関係ない。
決着をつける時が来たのだ。
火蓋を切る。
たぶん始めたのは私だ。だから、そうした。そうすべきなのだから。
Saaabeerrrrrrrrrrrr――!!!
叫び斬り付ける。
交戦。/Engage!
フル‐ドライブ。
狙う/一撃必中。
LOCKON!
FIRE!
しかし、それは、外れ/かわされてしまう。
≪無駄だ外道。我は剣<Saber>ではない。救出者<Saver>だ。貴様を魔の淵から救出してやる≫
ざけるなぁっ!
追撃。
戦闘機動で、それを追う。
だが、それの機動性能は段違いだった。性能強化されている。
幾場も舞うほどに、立場は入れ替わった。
今や窮地に立たされたのは私の方だ。
≪逃げ切れると思うのか≫
そう告げる死神が如く、それが近づいてくる。
恐怖/立ちはだかる圧倒的な力。
それに私は飲まれつつある。
私はそれに屈しなくてはならないのか?
転/転/転。
切り返すごとに追い詰められてゆく。
撃ちまくる。すべての武装/兵装を。
「貴様にはできるのか」と、追い詰められ際に私は言った。「いつまでも続けるつもりなのか」
「それは貴様次第だ」と、それは応える。「決して逃れられはしない。貴様のしていることは無意味だ」
この闘いは意味のないものなのだろうか。
いや、これは必然だ。
私は、それを見つけた。
「いや」そんなことはない。「私が、私でいられる」
「戯言を。ならば、貴様とは一体何だというのだ?」
―――私はなんだ?
私とはなにか。
それは―――
我が名は鋼翼。
我は、翼を持つ者。
鋼の翼をもつ者也。
<CHEACK MATE>
「終わりにしよう」そう言って私は撃った。
FIRE!
閃光。それは吹き飛んだ。
不意を突いた/その隙を。
外れ、飛んで行った機雷は、目標を見失いながらも推進剤が尽きるまで飛び続け、やがて惰性で虚空をさまようことになる。
それは、当たらないが、不発ではない。
内部電源が、その心臓が止まるまで、接近すれば信管が作動し爆発するし、誘爆もする。極めて危険な漂泊物。
私はその機雷に突っ込んだ。距離と爆発速度を考慮して、そして撃った。
しかしその結果は、読みが当たったにすぎない。気づかれる可能性も私が爆発に巻き込まれる可能性もあった。そう、ただ運が良かっただけだ。
これでいい。いいんだ。
砕け散り拡散する破片を見ながら思う。
あのとき、剣が言った意味がわかった。
見ていたのだ。この光景を。宇宙の本当の姿を。
そして、私はその高みへ/眺望へと至れり。
限界まで圧縮された緊迫感。それが解放感へと変わっていく。
これが、本当の―――。
衝撃。
一瞬何が起こったのかわからなかった。
続いて、2、3、と波が襲う。
攻撃だ。と、気付いた時には、機体の半分は吹き飛び、各所が発火していた。
被弾、被弾、被弾。
キリキリと、踊り狂うように、舞い墜ちる。
思考はERERRの赤で埋め尽くされた。
これは、痛みだろうか。
それとも悲しみだろうか。
それがいっぱいに広がって、、、やが、て…
―――撃墜。
冷た。
>>>>>DATE LOST…
作者としては、さめた。なのですが、意味、読み方を変えてみると、感覚やニュアンスが変わるかもしれませんねw
「つめた。」?
「ひえた。」?
「さめた。」?