Nicotto Town


フリージア


叶わぬ願いはもういらない…7

階段を降りてきたルミは、僕には目もくれず松原の隣に行く。松原は僕の少し離れた右斜め前にいてルミは自然と松原の右隣に位置した。
 残念ながら僕から尚更離れている。もちろん自己紹介なんて雰囲気じゃない。
 僕は僕で久しぶりに会う同級生と近況を話していた。僕にとっては近況ではなく約二年前の事だから、話をあわせるのが大変だった。
 大半が大学生活の話題だったのだが、僕は浪人して大学に入り一年目の夏だからようやく大学生活に慣れてきたと話さなければならなかった。
 今日来ている仲間の中では浪人していたのは僕だけなので、みんなより一学年下だというこも少しからかわれたりしたが、この集まり以来みんなとは会っていないので楽しく和気藹々と話、そして応援した。
 
 試合のほうは相変わらず僕の知っている8対2ままで九回ツーアウト、最後の打者は三振だった。
 僕たちの母校は負けた。
 みんなうなだれたが、選手たちの健闘をたたえた。試合が終わったので僕たちは球場を後にする。
 結局僕はルミの後姿ばかり見ることになった。松原もいっこうに紹介などすることなく、階段や通路もルミの後姿を追いかける形となった。
 「どうする?これから」
 観客が帰っていく中、僕たち十数人は球場前の広場に溜まりだした。
 みんなのまとめ役でもあった神田が口火を切り、みんな自然と輪になり話し合う。カラオケでも行こうかという結論になった時、後ろから肩を叩かれた。
 「本宮君」
 振り向くと松原とルミだった。
 「本宮君には、まだ紹介してなかったね。この子私の短大からの友達で野川るみさん」
 「はじめまして野川です」
 「ああ、どうも、はじめまして本宮です」
 実ははじめましてじゃないんだよと心で言い、僕はおどおどしながら挨拶した。
 「すいません、皆さんとは違う学校なのに付いて来ちゃって」
 「大丈夫なんじゃない。僕たちのクラスはそんなの気にしないやつらばかりだから」
 カラオケにいく段取りが決まり、おのおのの車で○○カラオケに行くことになる。
 僕はすかさず神田の車で一緒に行かない?というつもりでいた。過去も松原とルミは車では来てはおらず、この移動時に一緒に乗っていったんだ。
 だから今回も、そうしようと思ったのだが…すこし問題が起きた。
 
 「おい、あれなんだ?」
 友人がこの広場から見える球場の関係者専用入り口付近を指差した。
 そこでは二人の大人が言い争いをしていた。その声がかなり大きかったので僕たちみんなは全員そちらのほうを見る。
 二人の言い争う声はこちらまで筒抜けで聞こえる。俺たち呆然と見いってしまった。
 よく聞くと、二人はラジオで試合中継をしていたアナウンサーと解説者のようだった。解説者は確か内村とか言ってたな。




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