創作小説「本物を探して」4
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/08 01:08:35
「平行世界シリーズ」
第4話
侍女に案内(される振り)をされて広間へと入って行く。
顔合わせだけだから、思ったよりも人の数は少ない。でも重要な家臣などが一杯いる。
まるで品定めをするような雰囲気。その中で私は父王の隣の用意された席へと着いた。
それと同時に、コツコツと軽やかな足音が響いた。
数人の供を付けただけの若者。
金髪が光りに照らされて輝きを放っている。
私と王の前までやって来ると、膝をついて深く礼をした。
「お招き、どうもありがとうございます」
準備されていた言葉をそのまま言っている口調だ。
政略結婚は周知の事実。暗黙の了解なのに、こんなまどろっこしい筋書きを書かなきゃいいのに……。
遊びに来た王子を私が見、王子が私を見咎めて、結婚する、なんて、こっちの方がバカバカしく、恥ずかしくて出来ないわよ。
顔を上げた彼は……結構、カッコよかったりして……。
絵画とはイメージが全然違うけど、まぁこんなもんなんだろう。
それに続けて従者達も、顔を上げる。
「え!?」
思わず声を出してしまい手で口をふさいだ。
相手は私の事が判らないらしい。
でも、見たことがある顔。
従者4人のうち2人。
前、街へ出かけた時にコセを追いかけていた奴ら、だったのだ。
「どうした? クイレイラ」
父が顔色が変わった私に気づいて、声をかけて来た。
「父上! この者達は賊です!」
私は椅子から立ち上がって叫んでいた。広間全体にざわめきが起こる。
「クイレイラ!?」
「先日、私が街へ行ってた時にそこにいる従者の者にお会いしましたわ。私を人質にして『剣を差し出せ』って!」
私の言葉にギョッとして王子が従者を振り向く。見覚えのある2人は青くなって、必死の形相だ。
ざまぁ見ろ。前のお返しよ。
「騒ぐでない」
父はざわつく広間を一瞬にして静めた。
さすが国王だわ。
そして、彼らに向かって質問した。
「『剣』と言えば、リサニル大国の王子ならば王から授かったと言われる宝刀を持っていると聞いていたが……」
チッと舌打ちしたのが、聞こえた。
「持ってるはずないよ。そいつらは偽物だから」
と、戸口からの突然の声。
忘れもしない、忘れられない声の主。
コセラーナがそこに、立っていた。
「コセ!」
私が叫ぶ。
彼はこちらに視線を移すと父王に向かって、礼をした。
「突然の無礼、深く御詫び申し上げます」
しっかりとよく通る声。威厳すら、感じられる。
ニセ王子の側までやって来て、腰に下げた剣を鞘のままの状態で首元に突き付ける。
「貴様、何者だ? 何故リサニルの王子として名乗る」
「…………私はタヤカウ国の者。この結婚によって両国が同盟を結ぶのを黙って見ている訳にはいかなかったのだ」
リサニル国と同じくらいの力を持つ大国だ。
「名は?」
「…………シキア=タヤ」
シキアが名乗ると共に、従者の一人が剣を抜いて来た。
コセは咄嗟の事で避けたが、ほんの少し掠ってしまった。左腕から血が流れ出す。
「きゃあ!」
私は思わず叫んでしまった。
その声に父は重臣達に命じようとしたのだが、
「ここは私に任せて、手を出さないでいてくれませんか?」
と、コセがはっきりした口調で宣言したのだ。
でも、んなことしたら……。
「お父様、今すぐ止めさして下さい」
「しかし。彼がそう言っている以上……」
へんな所で律義な父王だ。
「このままでは彼らの方が、やられてしまいます」
私は咄嗟にそんな事を言っていたのだ。
なんかもう頭の中はパニックを起こしている。自分が何を言っているのか判らない。
「それなら余計に彼の剣術を見てみたいものだな」
悠長な事を言っている父王。
「この広間を汚すつもりですか!?」
思わず父王に向かって叫んで、コセの元に走り寄って行った。
コセが自らの剣を抜いた。
見たことのない、美しい刀身。
それもそのはず、刀身は透明なのだ。水晶のような物で造られた見事なまでの剣。
「コセ!」
「レイラ、来るな!」
厳しい口調に歩んでいた足が止まる。
静かな空気が流れる。
身構えたまま、身動きしない。
緊迫しつつ~次へGO!