創作小説「本物を探して」2
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/08 01:01:33
第2話
そして、彼が私の横を通り過ぎようとして瞬間を狙って。
私は足を出して、引っ掛けさせて貰った。
意表をついた私の出方に、対応が遅れて、彼は半分見事に足につまずいた。見事には、こけなかったのよね。
体勢を整えて、すぐ走り出そうとしていた。
ここで、私の出番なのよ。
「お兄さん。そのままの体勢で私の跡について来て。人が一杯で彼らにはこっちの行動が見えないはずだから」
すぐはぐれそうになる彼の腕を取って、建物の路地へと人目を阻んで潜り込んだ。 彼を追っていた奴らは目的者を見失ってオロオロ、キョロキョロしている。
いい気味だわ、へへーんだ。
心の中で舌を出しながら、私は美しい彼とその場から離れた。
「ありがとう。どうも助かったよ」
優しい笑みを浮かべて彼が言う。
ほんと、間近で見ると本当に綺麗なのよ、この人。
青い瞳が宝石のよう。
「いえ、どういたしまして」
なんか自分の方が照れてしまう。
「俺の名前はコセラーナ。君は?」
「私は……クイレイラ」
そう。私の名前はクイレイラって言うの。まだ全然言ってなかったわね。
クイレイラ=テニトラニス。これが正式な名前なの。
「レイラって呼んで」
にっこり笑顔で私はそう、付け足した。
しばらくの間、この町に泊まると聞いて私は彼、コセの泊まる宿屋を探し始めたの。評判の良い宿屋は結構金がかかってしまう。
「いくらくらい持ってるの?」
ちょっと失礼かなって思ったけれど、やっぱり必要だから聞いて見たんだ。そしたらコセは、
「金は持ち歩いていないんだ」
と、笑顔で言ってくれるわけ。でも、いろんな物を詰め込んでいる布袋から小さな近着袋を取り出して私に見せた物は、キラキラと眩しく輝く宝石。
「こちらの方が金になるし、持ち易いんだよ」
にっこり笑って彼が言った。
どこの金持ち息子なのだ? と問いかけたかったのだが、自分の身元を聞かれるのも厄介なので止めにする。
案外、こいつはしっかり者なんだな、と思い返した。
その宝石を質屋に持って行き、質の悪いものを先に金に替えて貰った。それでも大層な金額だ。
宿屋に予約を入れてから、再び街に繰り出して行った。
もう日も沈みかかって夕焼け空が真っ赤だ。
久し振りに楽しい気分。
コセは隣の大国、婚約させられた王子のいる国からやって来たのだと言うので、その国の事をいろいろ教えてもらったのだ。
養子に来てもらうのであまり関係がないのだが、やっぱり気になるものだ。彼は物知りで、特に王家については詳しかった。
何とか第2王子の事に探りを入れようとしていた時、視界によく見る恰好の奴らがいた。
この街の警備隊。
たぶん私が抜け出したのがバレて、捜しに来たのだろう。
「やっばー」
小さく呟いた言葉をコセは聞きとめる。
「どうした?」
「ちょっとあいつらに見つかるとやばいのよ」
もう、逃げる体勢を整えて走り出そうとしていた私を、コセは引き留めた。
「こっちの方が見つかりにくいよ」
一緒逃げてくれたのだ。
街にたくさんの警備隊が歩いている。走り回って私は息を切らしているのに、何故かコセは切らしていない。
「こんなに…レイラ、お前何やったんだ?」
そんな事言われても答えられない。
心の中でそう叫んでいた。
ただ見つかって城に連れ戻されるのが嫌で逃げているだけなのに、こんな真剣になって匿ってくれてるのに、言える訳ないじゃない。
「もう通りには出て行けないな……」
夜回りも込めて警備隊がうろうろしているのだ。
やっぱり素直に言って、出て行こうかしら。
一生懸命になってくれる彼が気の毒に思って、私は本当の事を話そうと決心した、時に、
「こっちに来る!」
声を上げて来た。
私達のいる場所は袋小路。逃げる場所は、ないのだ。
ここが年貢の収め時か……。
なんて心で呟いて見せた。
が、その時。
コセの顔が、目前に近付いていた。
「え!?」
何も判らないまま、次の瞬間には。
唇が重なり合っていた。
続きは一挙公開します。
いいぞもっとやれwwww
感想は、終わってから改めてしますよー。