創作小説「次期王の花嫁」4
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/08 00:52:59
「平行世界シリーズ」
次期王の花嫁
第4話
クーデノムとマキセは約束の場所へ時間通りにやってきた。
ルクウートの王宮側にある豪華な建物が立ち並んだ地域。
祭典にやってくる各国の王貴族のために立てられた別荘…宿代わりだ。
数日続く祭典の間は、いろんな屋敷が夜会を開き、騒いでいるのである。
『出資はルクウート』と言ったコセラーナの言葉通りとすれば、王宮主催のパーティということだろう。
待ち合わせ場所にはコセラーナと一緒にいたシキアと呼ばれていた彼が待っていた。
「ご案内します、こちらへどうぞ」
柔らかな物腰は普段から身に付いたものだろう。
セーラを気軽に抱き上げた行動を見ても、王の一番の信頼を得ている者なのだと感じる。
そんな人を迎えによこしてくれるという待遇に、一種の申し訳なさを感じながらクーデノムとマキセは華やかな宮殿へと足を踏みいれた。
クスイは王宮はあるけれどいまいち華やかさには欠けている。
他国のように王貴族がいないのが原因のひとつだろうが、殆ど国の役所といった役割を果たしているだけの建物だ。と言っても、他国の客を迎える最低限のものは揃っているのだが。
豪華さを競うよりも、賭けを楽しむ国民性なんだろう。
シキアに連れられ広間に出ると、すでに数十人もの人々が夜会を楽しんでいた。
「コセラーナ様を呼んで参りますので、失礼します」
そう言ってシキアは会場に二人を残し去って行った。
壁際にたたずむクーデノムから離れてマキセは立っていた。
ちょっと所用と側を離れ、会場に戻ってきた所。
傍から見る彼の姿はどことなく不思議な雰囲気を感じ、すぐに見つけることができる。
それは自分のみが感じているのではなく、皆が思っていることだった。
「やぁ、来たね」
そう言ってマキセに話しかけて来たのはコセラーナだった。
「お招きありがとうございます。クーデノムはあっちの方にいます」
マキセが促す手の方向に所在なさ気なクーデノムの姿を見つけたコセラーナは笑みを口元に浮かべた。
「彼は不思議と目を惹く存在だな。どういう人物?」
コセラーナの問いに軽い口調で、
「『マジメで融通がきかない。生意気で周りは結構、煙たがっているんじゃないかな』と自分で思っているようなヤツですね」
「なるほど」
とマキセの答えに微笑むコセラーナ。
「近寄り難いというより…壊したくないという感じか」
「そうですね。誰も気にしながら話しかけられない」
クーデノムの周囲では何人もの人…大半は若い女性だ…が彼を覗き見しながらヒソヒソと会話をしているのだが、クーデノム自身は全く気付いていない。
優しげな表情に柔らかい空気を放つクーデノム。
誰もがその中に入って雰囲気を壊すことにためらいを覚え、行動できないでいるのだ。
マキセもはじめは周囲の者と同じ反応だったのだが、クーデノムに対する好奇心の方が強かった。話しかけると以外と気さくな性格で、すぐうちとけて仲良くなった。
「なかなか、いい青年だ。うちに欲しいくらいだなぁ」
サラリと口にする言葉にマキセも軽く対応する。
「あげられませんよ」
「うちにくればリサニル産の酒も呑み放題だぞ」
「うわぁ…本人が聞いたら揺れることを」
「……やめとこう。酒蔵がいくつあっても足りなさそうだ」
「確かにね」
クスクス冗談っぽく言うコセラーナにマキセも返しながら内心はちょっとドキドキだった。
クーデノムが酒好きという情報は語っていない。
彼がどこから情報を入手したのか…クーデノムがコセラーナの名前からテニトラニスの王だと判断したように、彼も覚えていたのかもしれない。文官として書類などに書かれたクーデノムのサインを。
「うちの姫もどうやら彼を気に入った様子なのだが…範囲内だろうか?」
楽しそうに告げる言葉。しかしそれは別の重みも担っている。
クーデノムを見て気に入ったのか、それとも今の彼の立場を知ってのことなのか、コセラーナの表情からはどこまで情報を握っているのか全く判断できない。
敵に回せば怖いタイプだ。
でもマキセにしてみれば、彼を敵に回す必要などないのだ。
むしろ味方に……。
壁際に居たクーデノムが何かを見つけたらしく、動くのを視界に捕らえた。
その先にいる彼女の姿を見て、マキセはコセラーナに笑顔を返す。
「それは…姫の押し次第だなぁ」第4話です。
マキセ視線って、考えたらなかなか無かったよね。
クーデノムとマキセのキャラ設定イラスト、用意ができましたらサイトアドレスを載っけようと思っています。
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- ハラミ。
- 2010/08/11 05:08
- 拝見。マキセに対しての印象が動きました
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