Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「次期王の花嫁」4

「平行世界シリーズ」

次期王の花嫁

4

 

クーデノムとマキセは約束の場所へ時間通りにやってきた。

ルクウートの王宮側にある豪華な建物が立ち並んだ地域。

祭典にやってくる各国の王貴族のために立てられた別荘…宿代わりだ。

数日続く祭典の間は、いろんな屋敷が夜会を開き、騒いでいるのである。

『出資はルクウート』と言ったコセラーナの言葉通りとすれば、王宮主催のパーティということだろう。

待ち合わせ場所にはコセラーナと一緒にいたシキアと呼ばれていた彼が待っていた。

「ご案内します、こちらへどうぞ」

柔らかな物腰は普段から身に付いたものだろう。

セーラを気軽に抱き上げた行動を見ても、王の一番の信頼を得ている者なのだと感じる。

そんな人を迎えによこしてくれるという待遇に、一種の申し訳なさを感じながらクーデノムとマキセは華やかな宮殿へと足を踏みいれた。

クスイは王宮はあるけれどいまいち華やかさには欠けている。

他国のように王貴族がいないのが原因のひとつだろうが、殆ど国の役所といった役割を果たしているだけの建物だ。と言っても、他国の客を迎える最低限のものは揃っているのだが。

豪華さを競うよりも、賭けを楽しむ国民性なんだろう。

シキアに連れられ広間に出ると、すでに数十人もの人々が夜会を楽しんでいた。

「コセラーナ様を呼んで参りますので、失礼します」

そう言ってシキアは会場に二人を残し去って行った。

 

壁際にたたずむクーデノムから離れてマキセは立っていた。

ちょっと所用と側を離れ、会場に戻ってきた所。

傍から見る彼の姿はどことなく不思議な雰囲気を感じ、すぐに見つけることができる。

それは自分のみが感じているのではなく、皆が思っていることだった。

「やぁ、来たね」

そう言ってマキセに話しかけて来たのはコセラーナだった。

「お招きありがとうございます。クーデノムはあっちの方にいます」

マキセが促す手の方向に所在なさ気なクーデノムの姿を見つけたコセラーナは笑みを口元に浮かべた。

「彼は不思議と目を惹く存在だな。どういう人物?」

コセラーナの問いに軽い口調で、

「『マジメで融通がきかない。生意気で周りは結構、煙たがっているんじゃないかな』と自分で思っているようなヤツですね」

「なるほど」

とマキセの答えに微笑むコセラーナ。

「近寄り難いというより…壊したくないという感じか」

「そうですね。誰も気にしながら話しかけられない」

クーデノムの周囲では何人もの人…大半は若い女性だ…が彼を覗き見しながらヒソヒソと会話をしているのだが、クーデノム自身は全く気付いていない。

優しげな表情に柔らかい空気を放つクーデノム。

誰もがその中に入って雰囲気を壊すことにためらいを覚え、行動できないでいるのだ。

マキセもはじめは周囲の者と同じ反応だったのだが、クーデノムに対する好奇心の方が強かった。話しかけると以外と気さくな性格で、すぐうちとけて仲良くなった。

「なかなか、いい青年だ。うちに欲しいくらいだなぁ」

サラリと口にする言葉にマキセも軽く対応する。

「あげられませんよ」

「うちにくればリサニル産の酒も呑み放題だぞ」

「うわぁ…本人が聞いたら揺れることを」

「……やめとこう。酒蔵がいくつあっても足りなさそうだ」

「確かにね」

クスクス冗談っぽく言うコセラーナにマキセも返しながら内心はちょっとドキドキだった。

クーデノムが酒好きという情報は語っていない。

彼がどこから情報を入手したのか…クーデノムがコセラーナの名前からテニトラニスの王だと判断したように、彼も覚えていたのかもしれない。文官として書類などに書かれたクーデノムのサインを。

「うちの姫もどうやら彼を気に入った様子なのだが…範囲内だろうか?」

楽しそうに告げる言葉。しかしそれは別の重みも担っている。

クーデノムを見て気に入ったのか、それとも今の彼の立場を知ってのことなのか、コセラーナの表情からはどこまで情報を握っているのか全く判断できない。

敵に回せば怖いタイプだ。

でもマキセにしてみれば、彼を敵に回す必要などないのだ。

むしろ味方に……。

壁際に居たクーデノムが何かを見つけたらしく、動くのを視界に捕らえた。

その先にいる彼女の姿を見て、マキセはコセラーナに笑顔を返す。

「それは…姫の押し次第だなぁ」

【続く】

第4話です。
マキセ視線って、考えたらなかなか無かったよね。
クーデノムとマキセのキャラ設定イラスト、用意ができましたらサイトアドレスを載っけようと思っています。

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2010/08/11 05:08
拝見。マキセに対しての印象が動きました




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