Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「次期王の花嫁」3

「平行世界シリーズ」

  次期王の花嫁

3


 マキセは一人の剣を受けとめ、すぐさまクーデノムに向かおうとした男に蹴りを食らわし転倒させる。

 その隙に別の男はクーデノムに向けて剣を振りおろす。

 彼女を守りながら一振り目を素早く避けたクーデノムに、男は素早い動きで剣を切り返す。

 キンッ

 小さな金属音が男の剣を止めていた。

 クーデノムが護身用に持っていた懐剣で受けとめたのだ。その背後からマキセが剣の柄で男を殴り気絶させる。

 そして、マキセが先に転倒さした男が再び起きあがろうとした所に、足の太股をかすり衣服を地に杭止めた、懐剣。

「そこで何をしている!

と突然声を出しながら現れた数人の男は同じ衣服に身を包んだルクウートの警備士達だった。

 その後ろには先程の少年、エイーナ。

 どうやらいつの間にかいなくなっていたのは危機を察知して彼が助けを求めに行っていたようだ。

 エイーナは警備士とは違う、金髪と茶髪の男性二人と一緒だ。

 マキセが転がっている男達を警備士に引き渡している時、クーデノムは彼女に声をかける。

「巻き込んでしまって申し訳ありません。足の方は大丈夫でしょうか?」

「あ、はい。少し挫いただけなんで、動かさなければ痛みもありません」

 クーデノムの腕に掴まって立つ彼女。

「姉上」

「セーラ」

 側までやってきた3人が声をかける。

「お父様」

と、セーラと呼ばれた彼女は金髪の男性の方を見上げた。 

 なるほど、姉弟揃って髪と瞳は父親似のようだ。

 しかし外見の年齢的に大きな子供を持ってるようには見えない。

 ま、クーデノムもどっちかというと童顔な方なのだが。

 彼はまだ足に負担をかけないようクーデノムに掴まっている姿を眺め、チラッとセーラの足へ視線を落とす。

「足?」

「これは私が階段を踏み外して勝手に…この方は落ちそうになった私を助けてくださったんです」

 クーデノムは掴まれている彼女の手をそっと放させ、近寄ってきた茶髪の男の方へと差し出す。彼女の手を受け取った男は、その手を自らの肩に置かせ少し屈むと、腰と膝裏に腕を回し抱き上げた。

「えっ、ちょっと待って、シキア」

 慌てる彼女だが、彼の方は慣れてる模様。

「助けてもらったようで、感謝する」

 父親の方から人好きする笑顔で礼を言われ、恐縮してしまう。

「いえ、こちらこそなんか巻き込んでしまったようで、申し訳ありませんでした」

「悪いのはあいつらの方みたいだからな」

 警備士に捕らえられ連行していかれる後ろ姿を見

 送り、ふと思案顔をする。

「……今夜、君達は何か予定はあるのか?」

「いえ、これといっては……」

「では夕食に招待しよう。と言っても他人が主催の立食式パーティだがな」

「えぇ…でも……」

 突然の申し出に戸惑うクーデノムだったが、相手は引く気はないらしい。

「遠慮するな、出資はルクウートだ」

 そう言って彼は笑い、強引に約束をする。

 そして、

「私はテニトラニスのコセラーナだ」

とその男性は名乗った。

 

 一旦彼らと別れ、クーデノムとマキセは宿へと戻った。

 パーティならそれなりの格好を、と準備のためだ。

 マキセも騒ぎのせいで試合に出られなかったため、試合放棄で2回戦敗退になってしまった。

 せっかくの登録料もマイナスだ。

 遊学として気軽な旅の途中のため軽装しか持っていない二人だったが、とりあえずは厚手の上等なマントを留め金でまとって出来あがり。

 そんな中、ひとり黙って考え込んでいるクーデノムにマキセが言葉をかける。

「どうしたんだ? 難しい顔をして」

「さっきの人…名前に覚えがあったので思い出してみたんですが……」

「え!? 誰か分かったのか?」

「リサニル大国の王弟だった、今のテニトラニス国王ですね」

「王? 一般の観客席にいるもんなのか?」

「普通はいないでしょうけど」

「ま、例外もあるか」

 チラッとクーデノムを見る。
「北陸のリサニルからの輸入品は船の関係でテニトラニス経由になることか多いから、許可の印で目にする名前だ〟コセラーナ=テニトラニス〝」

「リサニルからの……酒か…?」

「リサニル産が一番美味しいんですよ」

 マキセの笑いにまじめに返す。

「じゃ、誘われた夕食は各国の王貴族が集まってるわけか」

「そうなってるだろうね」

「ま、これからの練習だと思えばいいんじゃないの?」

 乗り気でないクーデノムの表情を見ながら、意味有り気な笑みを口元浮かべたマキセ。

「社交は苦手なんですよ」

「仕事のかけひきは得意なのに?」

「…………」

                    【続く】

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2010/08/11 02:02
www カオスさん。覗いてくれてありがとうございますっ
今回は恋愛要素が強くなっていますから。
好みが分かれるかもですね。
私も途中で放り出した本がいくつあることやら(笑)

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2010/08/10 23:52
どうも読む気がしないなぁwww
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2010/08/08 01:18
コメントありがとうございます。v
平行世界シリーズはひとつの世界の話で、年代がいろいろです。
だから「平行世界=パラレルワールド」と名づけたの。
また「決して交わらない世界」という意味も含まれています。
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2010/08/07 18:04
なんとなく、繋がりが見えてくるようなこないような。
他の話とリンクさせる、というのは私もよくやります。というか書いてる話が全部一つの世界の話ですからねw
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2010/08/07 07:05
拝見
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2010/08/06 23:48
文字がいっぱいで言葉が書けなかった。
てなことで、第3話です。
新キャラ登場。
てことで、「平行世界シリーズ」の別話も平行してUPしたいと思います。
何がてことでなのかは、読んでみればわかるかも。




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