Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「次期王の花嫁」1

「平行世界シリーズ」

  次期王の花嫁
(続・次期王の行方)

「特別休暇をやろう。ゆっくり他国を遊学してくるといい」

 いつものように決裁の書類を抱えて王の側に赴いた時に、突然提案された言葉。

「はい!?

 思わず持っていた書類を落としそうになり、慌てて持ち直した。

「周辺諸国のことを知っておく必要があると思わぬか?」

「……お言葉ですが…貴方よりは詳しいと私自身は思っておりますが!?

「知識より、実際に見て来いと言っておるのだ」

「……何か企んでおりますね」

「そんな人聞きの悪い…ここ数年ずっと忙しかっただろう」

「仕事を滞らせる貴方のお陰でね」

「……この先もまた忙しくなるだろうから、ゆっくり休養させてやろうと言ってるだけだろう」

「…………」

 笑う王を不信感を隠さず見つめるクーデノム。

「マキセに供をさせる。王の命令だ」

 

   *    *    *    *    

 

 王の突飛な命令から自国のクスイ国を出発したのが1ヶ月程前。

 王宮の文官であるクーデノム=ガディと彼の親友である武官の近衛士、マキセ=トランタは、剣術の国ルクウートに来ていた。

 ルクウートでは一年に一度、剣術の祭典が催される。そのメインイベントが世界中から集まってくる強者が参加する剣術試合。

別にあて先などないに等しい旅。時期が合うなら見物しようと足を運んでやって来たのだ。

 賑わいの街中、試合は誰でも登録料を払えば参加できるらしく、勝てば賞金も付くという。

「マキセ、出場してみれば?」

「どうしようかなぁ…」

「俺の護衛ばかりじゃ、腕も鈍るでしょ。狙われることはないからね」

「いえいえ、影からいつも狙われてますよ」

「俺を鬱陶しく思ってる者にか?」

「いや、かわいい女の子たちに」

「口先ばかり上達してるな、お前は」

 せっかく来たんだと登録を済ませ、選手席へと向かうマキセと別れ、クーデノムはひとり、一般の観客席に陣取った。

 明日が決勝で今日はまだ予選のようなものなので、まだ観客も会場を埋め尽くしていない。

 比較的空いている席に座り、のんびりと見物体勢。

「お兄さん、こんな所で一人で見物かい?」

 背後から突然声をかけられて振り向いた。

 年は同じくらいの青年だが、瞳の奥には剣呑そうな光が見て取れる。

 手には数枚の紙と紙幣。

「どうだ、ひとつ乗らないか」

 にやけた笑いを口に浮かべた男はクーデノムにそう囁きかける。

 手に持った紙は試合の対戦表。

 男の背後には同じような男達がいろんな人に声をかけていた。

 剣術の試合に賭けを持ちかけているらしい。

 覇気のない雰囲気と皆から言われているクーデノムは、そういう男達にとってはいいカモなんだろう。

 一般市民から見れば一応、上等なモノを着込んでいる。

「勝てば2倍以上の配当が約束されるよ。そうだな…この試合なんかは集中してるけど、こいつは2倍、だけど相手には5倍の配当がつくぞ」

 対戦表を見たクーデノムは微笑する。

「いいよ」

 そして、口にしたのは男達の予想を裏切った答え。

「その5倍の方に、1000ルートで」

「え? い、1000をこっちに!?

「そう。勝ったら5000だ」

 慌てふためく男に念押しして賭金の1000ルートはちゃんと持ってるからと、札束を取り出し笑って見せた。

 そして始まった試合は、大斧をかついだ大男に対して長剣を持った細身の青年。長い茶髪を一つに束ねた姿はよく見知っている、マキセ=トランタ。
 開始の音が鳴り響くと二人は構えを取る。

 クーデノムが賭けたのはマキセにだ。

 誰もが体格差から大男に賭けが集中して彼の勝利を予想したのだろうけど。マキセの強さを知っているクーデノムとしては、迷う必要はなかった。

 当たらなければイミがないとばかりに振り上げた斧を避けると、マキセは相手の死角から素早く切りこむ。

 傷つかないようあえて防具に当て、衝撃を与える。

 よろけた所に剣の切っ先を首元に当てた。

 歓声の中、試合はあっけなく終わりを告げた。

「終わりましたね。では5倍の5000をよろしくお願いしますね」

 にこやかに言い放つクーデノムとは裏腹に、男は表情を無くして青い。

「倍率を提示したのはそちらですから」

「おーい、クーデノムどうした?」

 闘技場の下から試合が終わったマキセが声をかけてくる。

「マキセのおかげで勝ちましたよ」

「そりゃ良かったなぁ」

 男は隙をつくようにしてその場から走り出した。

                          【続く】

次期王の行方の続編です。
予定は12回程度になるかな。
よろしくです。

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2010/08/05 21:37
そうなんすか?
失礼しました!

黙って読みまする~
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2010/08/05 18:03
コメントありがとうございます
…そうか、クーは苦労性だったのか・・・(笑)←作者があまり気づいてない!?

ハラミ。さん。
どっちかと言うと、クーがカワイイ系で、マキセはアニキ系(笑)
起動修正は・・・面白いからそのままで(爆)読んでけば変わるかな?

あいりぃさん。
痛い目見るぜ☆ はなかなかイイとこ突きまする (><)/))

マキセの見どころを増やすための剣術大会でしたが、おいしいところをかっさらったのは・・・クーでした。

友申、よろしくおねがいされましたですー!! v(^0^)

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2010/08/05 12:51
続編キター(・∀・)

いいコンビですよねうふふw
個人的にクーデノムは苦労性ながらも意外としたたかなんじゃないかと思うのですよ。
見た目と普段の態度で判断したら痛い目見るぜ☆的な。
わー間違ってたらすみませーん。

あ、友申させていただきましたです。よろしくおねがいしまーす!
アバター
2010/08/05 07:14
拝見。
続編も読みまする。

苦労性のクーデノム(美人)と
やんちゃ系悩みってなに?食えんの?の体育会系マキセ(カワイイ系)
の旅路ですか?

この認識に軌道修正を加えてください。
読んでけば変わるね、きっと




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