忘れることのできない名曲 ⑤ 熊谷幸子
- カテゴリ:音楽
- 2010/08/03 15:23:02
素晴らしい曲を遺しながらも、今は表舞台を退いている。でも時折どうしようもなく聴き たくなる。そんなJ-POPの女性アーティストを中心に、「忘れることのできない名曲」として10回連続でピックアップしていきたいと思います。あなたの お気に入りが見つかれば幸いです。
熊谷幸子には強い思い入れを持っています。素晴らしいソングライティング能力と透明感のある声と歌唱力を持ち合わせながら、圧倒的にそれに見合っていないと言わざるを得ない流布と評価しか得ていません。
二回ほど彼女の小さなライブのようなもの(FM放送局主催)に行きましたが、「派手さ」とはまったく縁遠い極く普通の女性が淡々とエレピを弾きながら歌って いたのを覚えています。ステージをこなす上でのテクニックはただ一つ、想いを込めた自作の曲をまっとうに真摯に表現するだけ。実際、当初はOLと二足のわ らじをはいていただけに、その飾り気のない姿は商業ビルの打ちっぱなしコンクリートに囲まれた小ホールによく溶け込んでいました。
デビューシングル「好きと言わないで/恋の色」以降、計13枚のシングルのうち、タイアップがつかなかったのがたった1枚という恵まれたバックアップの反面、単独アレンジャーによる破綻の無さが災いしたのか、冒頭の結果に終わってしまいました。
その中で彼女の一つのピークは、TVドラマのヒットで主題歌「風と雲と私」が日本中のお茶の間に流れた頃でしょう。親しみやすいメロディと爽やかな歌声はそれまでほとんど無名に近かった彼女の名を多少は知らしめることができました。でもそのB面に収められた「紫陽花の坂道」は数多い作品の中で異色の出来映えでした。
和風を意識したペンタトニック系のメロディに梅雨を思わせる湿度に満ちた歌詞、いつもどおりの明瞭さに幾分物憂げな気持ちを織り交ぜているような歌い方。 それまでの作品群とは明らかにスタイルが違いました。センスの良さや作曲テクニックに頼らない、生身の静かなる感情の発露が感じられます。
話は 逸れますが、ユーミンに「A HAPPY NEW YEAR」という曲があります。メロディも内容も共通点はないのに(唯一同じアレンジャーということだけ)、「紫陽花の坂道」を聴くといつもこの曲が思い 出されます。たぶん女の人が雨の中「はねをあげぬよう 小走りに急ぐ」さまと「待つ人のもとへ」の情景が、「A HAPPY NEW YEAR 大好きなあなたの部屋まで 凍る街路樹 ぬけて急ぎましょう」とシンクロするのでしょう。
いずれまた別の機会に、今度は熊谷幸子の真骨頂であるアップテンポの曲たちも紹介できると思います。けれどもその前にこの「紫陽花の坂道」だけはどうしても述べておきたかったのです。1994年発表、3rdアルバムと5thシングルのB面に収められています。
熊谷幸子 「Poison Kiss」収録
【お詫び】 当初10回の連載を予定していましたが、マイナーな(笑)方ばかり取り上げてしまったものでアンケートが最下位になり、連載打ち切りになってしまいました。
いずれまた構想を練り直しまして、今度はもっとマイナーな方達を紹介する所存ですので皆様方におかれましてはこの夏の暑さにも負けず首を長くしてヤレヤレとご期待くださいませ。
でも、ヤレヤレをちゃんと掴んでくれて嬉しかったりもする。
「風と雲と私」はとっても好きな曲です♬
歌声はちょっと森高千里っぽく聴こえるのはわたしだけでしょうか?
CMソングとかでも よくお聴きしますよね
ヤレヤレ