創作小説「次期王の行方」5/最終
- カテゴリ:自作小説
- 2010/08/02 23:15:41
「平行世界シリーズ」
次期王の行方
「マキセ?」
「国の内外を問わず、総て把握している彼が私はふさわしいと思います」
「ほう」
彼の言葉に興味を持ったらしい王はそのまま続けるようマキセを促す。
「彼なら今更新しく仕事を覚えることも必要なく、皆からの信頼も厚い。今回の事も彼が王になれるようにはなっていない。ですから、私はここで彼を推薦します」
「どうする? クーデノム?」
「……っ……」
「……私もマキセ殿の意見に賛成ですな」
王の横に控えていたクーデノムの上司でもある文官長のハイニが頷いた。
「私も、クーデノム殿になら……」
「…俺も」
それに続くようにして次々と声を上げていく人々。
「クーデノム」
「…私は王になる気は……!」
「次期王はクーデノムに選ばせるとは言ったが、決定させるとは言っておらんからなぁ」
「王!?」
「どうだ、クーデノム。ここにいる皆が望んでいる」
皆の視線が集まって反論が思いつかない。
「…………」
「クーデノムが次期王にふさわしいと思う者は挙手してみろ」
王の言葉にざわめきながらも広間の殆どの者が手を上げた。
「これでは断る理由もなかろう」
笑いを堪えたような王の物言いに、諦めの表情を見せたクーデノム。
それを見た王は笑顔で宣言する。
「次期王は、クーデノムに決定する!」
ひときわ大きい歓声が広がる中、一人の従臣が王に疑問を投げかける。
「ところで王のご子息はどこに居られたんですか?」
その問いに一瞬で静まりかえる皆を見て、苦笑を隠せない王だ。
「本当に見つけられなかったようだなぁ……」
説得どころか誰も見つけることが出来なかった事実が以外だというように。
広間を見渡し一人の青年に目を止める。
「マキセ」
「え!? あ、はい」
突然名前を呼ばれ慌てる彼に、広間全員の視線が集まった。
「私が言った次期王選びでの条件を覚えているか?」
「はい。ご子息を見つけ、説得した者を側近に、と」
「そうだ」
満足そうに微笑んだ王は再び皆に向かって宣言する。
「その条件からして、マキセ、お前に次期王の側近を命じる」
シーンと静まり返った中を王は歩き、側にいた青年の肩に手を置いた。
「正真正銘、私の息子。クーデノムだ」
「……えぇー!?」
一層ざわめきが大きく広間全体に広がった。
「私に似ず、マジメに育っただろ?」
「あなたがいいかげん過ぎるだけです」
王はクーデノムの言葉を首をすくめて聞き流し、怒号のような騒ぎの中、満面の笑みを浮かべる。
「今夜は祝宴だ!」
* * *
「黙っててすみませんでしたね」
「いや、さすがに俺も驚いたけどね」
いつまでも続くだろう祝宴を抜け出したクーデノムとマキセは、慣れたいつものクーデノムの部屋でいつもより豪華な中身のグラスを傾けていた。
北陸の農耕の国・リサニル産の年代モノの果実酒。
国の輸入取引にクーデノムが個人で買い入れている代物だ。
「私も、あの時に推薦されるとは思わなかった」
「あはははは 俺の計画的犯行だな」
「私は人の前に立つような性格じゃないから、王にはなりたくなかったんだ」
「お前は自分を過少評価しすぎだな」
「…そうは思わないが」
真剣にそう思っているのだろう彼に、マキセは苦笑してみせる。
「今も国を支えているのはクーデノムの腕だ。皆もそれを認めていたから賛成したんだろ。強気で引っ張るだけが王じゃないのさ」
「……ま、優秀な側近の補佐役がどうにかしてくれるんだろ」
諦め顔で親友の顔を見る。
「あはははは…それこそ心配だなぁ」
「マキセは私が王になることを承諾すると思っていたのか?」
「うーん…半々で確信かな」
「なんですかそれは?」
「『クーデノムは押しに弱い』が王宮では暗黙の了解だからさ」
「……………………」
押し黙るクーデノムを見て、マキセは楽しそうに笑い続けた。
【END】
2004.10
てなことで、最終話でした。
予想は当たりましたか?
この話の続編はありますが、どうしようか迷い中。
「次期王の行方」より倍ほどの長さがあるんだよねぇ…
タイトルは「次期王の花嫁」
どこかにUPしてたかなぁ?(長いからしてないかも)
「平行世界シリーズ」は現在で10作以上の短編があります。
本編がなかなか書きあがらず、サイドストーリーがポロポロ生まれている作品です。
気が向いたらまたUPしていきたいと思います。
前に、一度。俺もファンタジーを書いてみようと思いましたが、世界観を構築するのがすんげぇ大変だと言う事に
気付きなげだしてしまいました(笑)
やっぱり世界観がしっかりしていると、話が膨らんで書いていて楽しいだろうなあ。と、羨ましくなりました^^
軽快な作品で、読みやすかったです。ありがとうございました。
このまま次期王の花嫁も読ませていたただきます(わくわく)
それもこれも、まず世界観が確立できてるからでしょうね^^v
その作業がファンタジィでは一番大変で、一番大事なんですけどねー。
あきさんの書かれる会話は本当に自然で流れるようです。
うまいなあ!
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
褒められたら調子に乗っちゃいますよ(笑)
ま、自分の文章はまだまだなのは自覚してますんで(泣)勢いと雰囲気を楽しんでもらえれば(爆)
ちょっと長くなりそうですけど、「次期王の花嫁」をUPしていきたいと思います。
その前に「本物~」か「偽物~」をUPしたほうがより一層楽しめるかも知れませんが、さて。
世界観が伝わるファンタジーを書くのって、相当な力量が必要だと思いますw
あきさん、すごいですよーw
ぜひ、「花嫁」も読んでみたいデスw
勢いまかせの小説でしたが、楽しんでもらえたら幸いです♪
頑張って続きをUPしていきます。(面白いかどうかはちょっと疑問ですが(笑))
これからもよろしくお願いします。
「平行世界」の国々。
南陸
賭博の国・クスイ 剣術の国・ルクウート 魔導の国・ソハコサ 工業の国・ヤナンテトシム
学術の国・カルマキル 森林の国・ポイコニー 音楽の国 ? 漁業の国 ?
北陸
商業の国・テニトラニス 農耕の国・リサニル 砂漠の国・タヤカウ
??? 精霊の国
実は本編は魔導の国なんですがねぇ……(笑)
小説、一通り読ませて頂きました。
読みやすくて後味すっきりな文章だと思います。正直見習いたいです。
すみません偉そうに言えるような字書きじゃないんですけどね。続き楽しみにしてます。