Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「次期王の行方」3

「平行世界シリーズ」

 次期王の行方

第3話

 

「こんにちは~」

 声をかけて先に役所に入ったのはマキセ。

「マキセ…クーデノム殿」

「先月分の回答書、持って来ました」

 そう言って持ち出したのは分厚い書類の束。

「ありがとうございます」

 お礼をいいながらクーデノムから書類を預かると、所の責任者を呼んできた。

「わざわざありがとうございます」

と、年配のかつての上司に礼を言われ、促された椅子へと腰を降ろした。

「最近、何か変わったことはないですか?」

「特にありませんけど…そういえば、最近王宮の人がよく下町にやってきますね。何か調べものをしているとか」

「次期王探しですね」

「え、もうですか?」

 クーデノムの言葉に少し驚きの表情を見せる。

 現王が即位してからまだ十年も経っていないのだ。

「今回はどんな条件を…?」

 毎回、王の選び方が違うのは周知の事実のため、それを楽しんでいる者も実は多い。

「実の息子を探出して王になるよう説得しろ、てことだ」

 クーデノムの後ろに控えるようにして立っているマキセが楽しそうに口を挟む。

「王に子供が…初耳ですね」

「だから皆、必死で探しているんだ」

 苦笑したクーデノムの言葉に思い出したようにマキセが、

「そうそう。なかなか見つからないから王がヒントを出したって聞いたぞ。“灯台もと暗し”って」

「では私たちもよく知っている人物なのかもしれませんね」

「意外とね」

「王と言えばまた……」

 楽しそうに言い放った責任者の次の言葉に、クーデノムはため息をついた。

 

「こんな所で何していらっしゃるんですか?」

 扉の大きく開かれた建物の中で目的の人物を見つけたクーデノムは呆れた声を背後からかけた。

「おぉ、クーデノムじゃないか」

「貴方は今日は書類に総て目を通して決裁しているはずではなかったのですか? こんな所で遊んでいる時間などない量を今朝、お渡ししたはずなんですけど」

 クーデノムの怒りなど素知らぬ顔で楽しんでいるのはクスイ国王だ。

 国営の賭博場。王が来るのを職員も慣れているのか、苦笑しながら二人の様子を伺っている。

「まぁまぁ、一応ダーッとは目は通したよ」

「放ってきた事には変わりないでしょ!?

 彼の言葉に肩をすくめた国王だが、全然懲りた気配は見せない。

「はっはっは、ところでクーデノム、次はどれが来ると思うかね」

リスのような小動物の入った囲いの前で掲示板を見上げ悩んでいる。

 数匹を一斉に放って速さを競わせるゲームだ。

 本日の今までの結果も比較されるように貼りだされている。

『3―4が調子いいみたいですね」

「一番人気の連立だな」

 クーデノムと一緒に来ていたマキセが掲示板を見ながら言った言葉に国王も肯く。

 しかし、少し考え込んでいたクーデノムは別の番号を口にした。

「……2―4ですね」

「ほぅ……2―4か。当たったら仕事に戻ることにしよう。じゃ、2―4に1000ルート」

「は、はい」

 楽しそうに言い放つ国王の番号と掛け金をゲームの担当の者が慌てて紙に書き記した。

 1000ルートの言葉に周囲の客も興味深そうに寄ってきた。

 1000ルート…一般の労働者の年収くらいの金額だ。

「なんで2―4なんだ?」

 マキセがこそっとクーデノムに小声で話しかける。

「あの動物の生態ですよ。起きていても1日の活動期は数時間だけ。午前中に調子が良かったものはもう動かなくなります。だから調子の出てきた2番と4番がいいんですよ」

 

                                     【続く】

第3話のお届けです。

「次期王の行方」はクーデノムとマキセの会話を書くのが楽しかった覚えがあります。
会話だけじゃつまらないよなぁ…てことで、コノ賭博場の場面が生まれました。





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