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■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝(68)

■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第十五(2)

而して文藝が漸く此くの如き域に向かはんとすると共に、全般の思想界また、傾き行く所は宗教にあるか。世人或は未だ意識せずして、さま/″\のものを要求しつゝあることもあらん、而も其の落ちつく所は、宗教を求むるの聲なりしことを發見するの日、必ず來たるべし。たゞ我がいふ宗教は、此の所にも既成の宗教を指すにあらず、一層廣き意味に於いてするなり。各個人各個の教義出づるも妨げず。またわば求むる宗教は、理知の調和を要するものにも非ず。宗教は所詮感情なり、理知の絶したる所に生ずる一種の感情ならざるべからず。從つて之れに到達する方式は、悟入的、頓悟的なるの外なからんか。而かして此くの如き感情は、傳染的なるか、または個々自發ならざるべからざるか。此は我が茲に答ふる能はざる所なり。
宗教の意義、上の如くなる時は、之れに入らんこと甚だ容易、また随意とはいふべからず。一旦之れに入る時は、其の持續及び復現も必ずしも難事にあらざること、學者等のいふが如きものあらん。されども、先づ入ること、易からず。此に於いてか文藝の門を開いて、我等は、そこに少時ながらの妙法を示さんと欲す。



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*註1:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註2:全般
「全」の正字体。
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*註3:傾き行く所・落ちつく所・此の所・所詮・所に生ずる・能はざる所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註4:宗教・教義
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg

*註5:意識
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg

*註6:さま/″\
「/″\」は踊り字・くの字点の濁点形。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/odoriji_dakuten.jpg

*註7:要求・要する
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註8:既成
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg

*註9:一層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。

*註10:感情
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註11:絶したる
「絶」の正字体。旁の「色」が「刀」+「巴」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg

*註12:到達
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註13:随意
「随」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註14:難事
「難」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/nan.jpg

*註15:學者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg


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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
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■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1




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