Nicotto Town



チベットへの旅9


6時起床。
手早く支度を済ませ、同室の女の子たちを起こさないよう、そっと部屋を出る。
昨日はあまり眠れなかった。
出っ放しの湯がバスに響くし、5時ごろから酔っ払いが廊下でわめいていたのだ。
ちょっと貧血気味で、バス停に行く道も遅れがちであった。

バスに乗って駅に着いたのは、7時10分ごろ。
ちょっと間があるので、粥をかっ込む。
ダフ屋は中国人料金の席しか買えないので、私たちの切符は中国人料金だ。
当時の中国は、バスや電車にも中国人料金と外国人料金があり、確か2倍くらいの差があったし、通さないといけないとされる中国旅行社を通すとまた倍くらいに跳ね上がった。
だからダフ屋を使う人は多かったのだが、このころは密告が奨励されていたので外国人とばれると公安に突き出されるらしい。
「ほかの人に外国人とばれないようにしなよ」とダフ屋に注意されていたので、無言で列に並ぶ。

寒い場所なので、寝台には毛布が2枚ついていた。
中段だし寝不足なので眠ってしまおうとするがなんとなく眠れず、12時にアラームをセットして毛布の中で本を読んだりしているうち1時を過ぎていた、と思ったら夢だった。
まあいいや、と寝なおしたところで本物のアラームがなる。

「青海湖」と言う駅を通るのだ。
外を見ると、遠くに濃い青が見える。

客(鈍行)なので弁当売りも物売りも来ない。
昨日買った桃で飢えをしのぐ。
途中駅に売店を見つけ、急いで降りてビスケットを買う。
ホテルよりずっと高いが、今は仕方ない。
夕方トイレに行こうとしたら、K君が中国の人と話している。
彼は中国に語学留学に来ているので、中国語が話せるのだ。
私ももうちょっと語学が堪能だと旅が広がるだろうなあと思う。
一緒に夕食をとることになり、食堂車に行く。
やっぱり高いけど、まあまあの味。
列車中のお湯がなくなってしまい、仕方なく瓶詰めジュースを2本買う。

夜中の12時ごろ、急にうるさくなった。
ダフ屋から買ったチケットがばれたらしい。
K君が「5人です」と馬鹿正直に言ったので、日本人探しが始まったのだ。
私は寝ぼけているふりをして「こいつは的を得ないから明日にしよう」と言われて寝直しをかけるふりをしたのだが、K君がわざわざ起こしにきたのでパー。
彼も初めてだから仕方ないけど、こういうときは「一人」とか「二人」と言っていればそれだけで済んでいたのだ。
後で支払った分を割り勘にすればいいんだから。

実際の値段よりずいぶん高いことを吹っかけられたので長いこと言い合いをする羽目になった。
「公安にしょっ引くぞ」とか「強制帰国だ」とか言われたらしいが、こっちも中国では大声の人間の主張が通ると言うことを知っている。
酒臭い野次馬が尻馬に乗ってはやすのを睨み付け、つたない英語でがんがん主張して、中国語で言い返されても「中国語はわからない!」と言っていたら、どこからか親切に通訳をしてくれる中国人の客が来てなだめてくれ、外国人料金との差額分だけ払えばいいことになった。
しかもどこかで計算を間違えたらしく思ったより安い値段を提示されたので、「計算違う」と言うK君の足を踏んで、人民元を持っている私がまとめて支払う。
FECでなんか、払うか。

通訳してくれた中国人紳士、迷惑をかけたのはこっちなのに「大丈夫?昔はこんなことなかったんだけどね」と言ってくださった。
こちらこそご迷惑をかけてすみませんでした。
ありがとうございました。

さっさとベッドに戻り、毛布をかぶると目が閉じ、寝息が出る。
実際はぜんぜん眠れなかったが、悔しいのでずっと寝たふりをしていた。

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2010/07/02 08:14
当時の公安は怖かったです。
外国人に対してはまだしも、中国人相手には威張り散らしているのを見たことがあります・・・。
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2010/07/02 00:02
中国の公安っていいうわさ聞かなかったですよね最近まで…(*@へ@。)

ちょっと怖い中国のお姿が目に浮かびました・・
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2010/06/30 06:07
Rinoさん
外国人料金、今はないそうです。
諸外国とは物価が違うから、というのはわかるのですが、中国人の中でもおかしい、これでは中国を嫌いになる人が多くなる、と心配する人もいました。
新しくできた民間の旅行社の中でも「これは国の暴利だから」とこっそり中国人料金で買ってきてくれて、逆に困ったこともあるのです^^;

ジョバンニさん
あの頃は政策が・・・密告を奨励するのはよくないですね。
でも今の日本のマスコミもほんのちょっとしたことを大げさに騒ぎ立てますから、似たような社会を作ろうとしているように思えて仕方ありません。
誰かによほど迷惑をかけるのでなければ、喫煙も飲酒も、ちょっとした息抜きの賭け事も、したってただの自己責任だと思うんですがね。
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2010/06/30 01:53
中国は怖い所ですね…(^-^;
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2010/06/30 00:39
K君~!!(←つっこまずにはいられません^^;)
外国人料金が普通というのもびっくりです。
今はどうなんでしょう??

旅行記に表示されてる中国っぽいアバターが
本の挿絵みたいでまた良いですね♪(*^^*)
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2010/06/29 21:14
いや、私のようにできないのも困ったものです。
帰国してから一度この頃のみんなとあったことがあるのですが、私はすっかりいつも「なんて言ってるの?」と聞いていた人、になっていました^^;
ただ、留学って語学だけやっても仕方ないよな、と思ったのも事実です。
だって本当に話したいことがあれば、こうやって誰かを通して話すことも可能ですからね。
せっかく留学するなら、勉強だけでなくいろんなことをしたり思ったりするのが一番の財産になるんじゃないかと思います^^
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2010/06/29 20:33
ヘタ?に(K君シツレイ!)語学ができると、とんだことになるってことでしょうか?^^;
私の友人も、ストレートな日本語で、中国語と会話してました。
それで、けっこう通じてるらしいのが、おもしろかったです。
やっぱ、勢いで負けないってのが、一番なんでしょうね。
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2010/06/29 17:22
いひひ。
多分すばやかったでしょうね。
まあもう15年以上経っているので、時効ということで^^;
背景は暗いので、ちょっと華やかなものと合わせてみました。
ちょっと七夕っぽいかな、と本人は思っています。
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2010/06/29 14:28
話は変わるけど、背景似合ってますね。

当方は「遅くまで遊んでるんじゃありません!」って感じになるのに・・・
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2010/06/29 14:26
K君の足を踏むときには、残像も残らないようなスピードだったんでしょうねw

白目になり、声も上げられないK君www



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