Nicotto Town


COME HOME


「甘い毒を飲んで」

「甘い毒、持ってなあい?」

甘えているような声色で。小夜さんはオレに聞いた。そのほほ笑みはいつものように心を見透かせない、鉄壁。

「持ってませんよ。そんな物騒なモノ」

愛しい人からの質問だ。オレは正直に答える。第一、毒を持つことなんてないのに、それに「甘い」という条件が加われば答えはいつだってNOだ。普通の毒なら持ってたかもしれない。スズランとか、トリカブトとか。

「そう。使えない人」

そんなに優しい顔して言うことは冷ややか。目は相変わらず笑っていない。ほんの少し傷ついたオレはそれを微塵も感じさせないよう、努めて通常どおりに聞き返した。

「一体いきなり毒なんて、何故?」
「別にね、大した理由なんてないのよう」

声は、穏やか。夜空ののように、オレの耳に届く音は暗く澄み渡っている。

「ただ、苦しまずに死にたいなあ、って」
「……そうですか」

続きを促す気なんてない。それだけ気ければ充分だった。しかし、小夜さんは言葉を紡ぐ。自分を晒すことの少ないこの人にとっては、珍しい行為だ。

「最初は死ねればなんでもいい、って思ってたんだけど。リストカットは痛いし首つりは苦しいし。練炭は準備が面倒だし、免許を持っていないから車で海にダイブも出来ない。睡眠薬は体質によっては百錠飲んでも効果がない、って聞いて。ワタシ薬に強い人間でしょう? それでアア困った、って思ったら毒があるじゃないの。それで、ね」

そんな都合良い話があるか、とは思ったがこの人の思考回路はしょせんそんなもんだ。世界は、自分を中心に回っていると思っているこの人なら。

「女王様は、死に際までわがままなんですね」

聞こえないように言ったつもりなのだが。

「そうよ。だから、ね? 使えない家来さん、絶対的な主の為に、甘い毒を」

向けられたのは、小夜さんの美しさが花開く瞬間。
拒絶を許さないそんの表情は、甘い毒のようにオレの体を這い廻る。

***
とりあえずネタの大まかな流れとして後先考えず文字を打ったもの。
修正する予定。





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