北の少年 砂海編 37
- カテゴリ:自作小説
- 2010/06/19 13:49:12
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
(お前、北の森に帰りたいんか?)
脳裏に広がる針葉樹の黒々とした森を見ながら、カイルは静かな調子で人狼に問いかけた。
今、カイルの心に広がっているのは、目前にいる人狼の心象風景だ。
同時に、悲しいまでの郷愁の思いが感じ取れた。
共感能力の強い共生獣だからこそ、感じ取れる思いだ。
(お前はこの森で育ったんか?)
(いヤ、おれハあの黒の魔法使いに育てられタ。ここガどこかしらヌ)
(そうなんか…)
まったく知らない森なのにここまで強い郷愁を感じるているのは、魔法使いの元で育てられた時期にこの記憶と感情を刷り込まれたに違いない、そうカイルは考えた。
そしてこのような事ができる、敵の魔法の腕前と技量にも舌を巻くしかなかった。
ジェンが「視た」というロヴの祖父ハランが最期に対峙した魔法使いとは、この黒の魔法使いに違いないと思われた。
(これは、かなりの難敵やなあ)
ハランが自分の魂を代償としてロヴにかけていた守護の魔法も、完璧で強力な魔法だ。
そのハランも魔法使いとして、相当な力と技量であったはずだ。
だからこそ、一年もの間あれだけ素直な少年が、すこしも精神と肉体を損なうことなく無事に旅を続けてこれたのだ。
それだけ力の強い魔法使いだったハランを探し出して、彼を倒した黒の魔法使い。
ハランの魔法返しを受けてダメージを受けただろうが、それも快復したようだ。
再び「ロウ・ヴェイン」の探索を開始して、ハランの守護魔法の追跡をしながら、アルバの都までロウ・ゼオン国の正騎士を刺客として送りこんできたのだから。
そして今度は、人狼を使ってきた。
もし、ハランの守護魔法が無かったら、ロヴは今頃この世にいなかったかもしれない。
ハランの魔法がなければ、ロヴの匂いを人狼が嗅ぎ分けてその命を奪っていたはずだから。
ハランの守護魔法は、人狼の臭覚すらも惑わせるほどの、五感を惑わせる強力堅固な魔法だった。
だから、今は自分にも纏わりついているロヴの匂いを人狼に嗅がせて、試してみたのだ。
カイルの予想通りの反応を、人狼は示した。
この守護魔法が働いたからこそ、そのかわりのように次に「ロウ・ヴェイン」の匂いがしたジェンが、この人狼に狙われたのだが…。
だが、今はその魔法の守護もない。
ロヴは自分自身の命を、まだうまく使いこなせない自分の力で守っていかなければならない。
ジェンも、そしてカイルもその手助けをするつもりではいるが、どこまで相手に通じるだろうか?
カイルはなんともいえない不安感を、拭い去ることができなかった。
ロヴがハランの手紙を持ってジェンの元に戻って来たとき、ちょうどラルムと治療魔法士の二人が彼女を訪ねてきた。
ジェンは寝台から抜け出して、すっかり強張った腕や背中をゆっくりとほぐしていた。
その様子は、とても死線をさまよった怪我人にはみえない。
治療魔法士の目からみると、ジェンは顔色に血の気が無い以外は、健常な人間となんら変わらなかった。
まだ顔色のすぐれないロヴの方が、よほど瀕死の重病人に見えた。
「ジェン、もう起きて大丈夫なのかな?」
治療士としての立場から、一応彼女にそう問いかけると、ジェンはにこやかに大きくうなづいた。
怪我をしていたはずの左脇腹を掌で軽くたたき、大丈夫と示して見せた。
「ロヴはどうかな?顔色が悪いが、眩暈や吐き気はしないかな?」
自分自身も簡単な治療魔法が使える彼は、急激な力の行使がどれほど体に堪えるかよく解っている。
昨晩の力の行使をみていた治療魔法士は、ロヴの体力の消耗がどれほどだったのか検討すらつかない。
今はそちらの方が、ジェンの症状よりよほど気にかかった。
ロヴは彼の問いかけに、掠れた声ではっきりと答えた。
「大丈夫です。先生」
その少年の声の調子に、ラルムは何か目覚めた時の少年と、今のロヴとの微妙な違いを感じた。
ラルムはロヴの青白い顔に、今までに無かった「男」の表情を垣間見たような気がした。
しばらく二人だけにしていた間に、ロヴとジェンの間で、何か大きな変化があったのだ。
自分も少年から大人への門をくぐってきた男性として、ラルムはロヴの成長を敏感に感じ取った。
(ふん、いい表情をするようになったな。ロヴ)
ジェンと違って、少年の成長を素直に喜ぶラルムであった。
人狼の扱い、どうにかめどがついてほっとしたよ。
なんとなく殺して終わりは、趣味じゃないし。
ラルムは…ジェンのこと好きなのかな?
やっと、女性なんだと自覚しただけのような気がするけど^^;
いつかそこで暮らせるようになれればいいな~って思っちゃう。
これをエサにされて生きてきたかと思うと…
育てられたといったって、黒の魔法使いとの関係は愛ではないってことだよね。
ロヴは一応恋のライバル?になると思うんだけど。
ラルム君、素直によろこんじゃっていいのかな~???^^
なんだか、中ボスを強くしすぎたかも^^;
うまくクリアーしてくれるかなあ。
なんとか頑張ってみます。
そうですね、大人になっていくロヴ。
そう感じてもらえたら、作者としては嬉しいですよ^^
ロヴが 確実に成長していて 今後の 2人の対峙が 楽しみです^^
少しずつ伝わってきますね。
ラルムやみんなに見守れられてる
ロヴは幸せですね(*^_^*)