北の少年 砂海編 36
- カテゴリ:自作小説
- 2010/06/15 11:44:07
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
カイルは笑い続けるジェンから離れて、肉の残りを口に咥えるだけ咥えた。
「猫」の口ではたいした量にはならないが、カイルが食べるには十分だ。
だが、カイルは自分で食べようとはしなかった。
ジェンは不思議に思って、笑いをおさめ心の声で問いかけた。
(どうした?食べないのか、カイル)
(うん、ジェン、あんなあ、これなあ、人狼に持っていってもええやろか?)
ジェンには遠慮のないカイルだが、さすがに人狼のことに関してはかなり話にくいらしい。
かなりいいにくそうに、ジェンに聞いてきた。
どうやらジェンの負傷はかなりの部分、自分の責任だと思っているようだ。
ジェンはカイルを安心させようと、勤めて明るく答えた。
(私はかまわない。なにか考えがあるんだろう、カイル。思うとおりやってみろ)
(そうか、おおきに!)
カイルはそれだけいうと、一目散に部屋を駆け出していった。
「さて、今度は何をするつもりかな。わが相棒は」
その姿を見送って、ジェンは小さく呟いた
カイルは再び人の目を忍んで、人狼が閉じ込められている小屋に向かった。
あたりはすっかり夜が明けて、きつい日差しが照りつけている。
小屋の入り口には見張りを交代した傭兵が1人、あくびをしながら壁にもたれて立っていた。
ピクリとも動かない人狼に、油断をしているようだ。
(しめしめ、これなら簡単に忍び込めそうや)
カイルは早朝に忍び込んだ小屋の窓から、再び中に入っていった。
薄暗い小屋の中には、獣臭い臭いが充満していた。
人狼はカイルが別れたときのままの、床に寝転でいた。
カイルの気配に気がついているだろうに、まったく動こうとはしなかった。
ただ無気力に、その場に寝ているだけだ。
(どや?腹減ってるんと違うか?飯にせえへんか?)
そう話しかけてみたが、答えは無かった。
カイルは風下側の窓からこの小屋に入ったので、位置を移動して自分の臭いが相手に解るように風上に動いた。
カイルの考えが正しければ、人狼は気が付くはずだ。
『ロウ・ヴェイン』の臭いに。
カイルの予測通り、人狼の様相が一変した。
ぐったりとしていた頭をぐっと持ち上げ、金色の目を大きく見開いて、小さな「猫」を睨みつけた。
「おまエ、メタモルフよ。なぜおまエからロウ・ヴェインの臭いがするのダ?」
軋む声でそう聞いて、じっとカイルの瞳を見つめてくる。
人狼の目には驚愕と疑問とがあふれていた。
先ほどまでの無気力さは、どこにも見受けられなかった。
(ようやっと、俺と話す気になったか?まずは飯、食わへんか?腹へっとるやろう)
カイルはそっと鉄格子の間をすり抜けて、人狼のそばに咥えていた肉をそっと置いた。
毒が入ってないことを示すため、少しだけ自分も食べて見せた。
(どや、旨いで。生やないから、ちょっともの足りんかもしれんけどな)
人狼は不思議そうにカイルと目前の肉とを見比べ、じっと考え込んでしまった。
カイルの行動に、どう反応したらいいのか解らないようだ。
(まずは、体の要求に従えばええねん)
カイルは少しその場から離れて、ゆっくりと毛づくろいを始めた。
そののんびりとした様子に安心したのか、人狼は上体を少しだけ起こして少量の肉を口にした。
(まるで狼に餌付けしとるみたいやなあ…)
カイルは、自分の心の中でだけそう呟いた。
人狼は人馴れしない獣がそうするように、カイルの方を伺いつつ少しずつ肉を食べていった。
カイルが運んだ肉は少量だったが、人狼はかなり長い時間をかけてそれを租借した。
時々、鼻を動かしてカイルの臭いを嗅いでいる。
「おまエ、昨日倒したおンナの臭いもするナ」
(そうやろうな)
「あレ、おまエのえらんダ人なのカ?」
(せや)
「あレは、生き延びたのカ?」
(せやから、俺はここにいてる)
「そうカ、あレを生き延びたのなラ、あのおんナはたいしたモノだ」
人狼はしばらく考えこみ、再びカイルに話しかけてきた。
「あのおんナに敬意を表して、教えてやル。俺をここによこしたのハ、ロウ・ゼオンの黒い魔法使いダ」
カイルの脳裏に1人の男の映像が現れた。
上等な黒絹の長衣を纏った、細面の赤毛の男。
青白い肌で端正な顔立ちだが、どこか醒めたような雰囲気と、冷たい灰色の目をしていた。
その瞳を覗き込んだら、背筋に寒気がしそうな冷ややかな感じがした。
(こいつがそうか?)
「ロウ・ヴェインの臭いヲこれが俺に教えタ。ロウ・ヴェインを探し出したラ俺に森をくれルと言ったノダ」
この言葉と同時に、カイルの心に北の大地に広がる黒々とした針葉樹の森がぱっと広がった。
憧れと自由への強い欲求、これは人狼の感情だ。
この森を狼の姿で自由に駆け回りたい。
これが人狼の強い激しい望みのようだった。
カイルみたいな性格、とてもいいものだと思います。
敵」には敵の言い分がある・・・戦いだけが解決方じゃないって、私は思ってる。
これは甘い考えかもしれないけどね。
行動ではもちろんないんだろうけど、
なんか2人(匹)のあいだのやりとりに、ほんわかしたものを感じてしまう。
人狼の不器用さと本能がせつなくなるな~
言葉のコミュニケーションはとても大切です。
話さずとも通じるは、なかなかできません。
まずは言葉から。
最近、痛切にそれを感じます。
人も そうなれば 面白いと思いましたが
そうなると 言葉がいらなくなってしまうので・・・
「言葉」は 互いを理解するのに 大事ですもんね^^
そうなってほしいなあ^^
でもどうなるかまだわからないんだよ^^;
だだ自由がほしくて森を狼の姿で駆け回りたい
だけなんだね^^
いい人狼みたいでカイルと仲良くなりそうですね(^_^)v