機心<5.3>
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/27 22:39:53
<from5.2>
Rebooting...
再起動。どのくらい時間が経過したのだろうか。
気づけば私はそこにいた。
思考が混乱している。
それは収まりつつあるが、まだ完全には醒めていない。
どうなっているんだ?
状況を再認識する。
接続>リングファイアネット。
自分が自身で無いような感覚。悪い夢でも見ていたかのような。
ログの澱か/アップデートの後遺だろうか。
システム・ログを参照する限りでは、リングファイアネットを含むシステム全体を再編成したかのようだ。
異変は感じられない。
そこに、微かな不自然さを感じる。
気にはならない程度のものだが。
マザーより指令。
確認>ミッション内容。
所属不明機<アンノウン>が、防衛領域に向かって侵犯軌道で接近中。
その数=2。
フォースセル/4機編隊。
編成=Pod No.03, No.04, No.07+私。
格納ハンガーからリニアカタパルト/発進口へ。
発進位置で固定。
重力に逆らう磁力本流が翔け上がる。
シャッター解放/Take off.
四機は同時に発進。
Mission start>
転身/ブースター起動。
四辺編隊/ダイア陣形で急行する。
アンノウンに警告―――変化なし。
判定=敵機<バンディット>。
機影/Uk<イエロー>からBd<レッド>に。
戦闘態勢。
僚機<バディ>はPod No.07。
交戦Engage!
敵機散開/Ⅴ字に軌道変更。
しかし、防衛領域への侵入回避軌道ではない。
敵機は、我々の予想進路を避けるように進行軌道を変えたにすぎない。
展開=バディごとに敵機の追尾を開始。
二手に分かれるダイア陣形。
左へ=Pod No.03,No.04のバディ。
右へ=No.07+私。
先鋒=No.07が翔け出す。
フル-ドライブ=ファーストアタック。
邂逅/交叉する二機。
Bd02回避運動。
高い機動性=No07の攻撃を紙一重で回避。
セカンドアタック/スタンバイ。
接近する赤い機影。
有効射程域まで残り5sec。
Bd02を捉える=Lock on!
その姿を見た瞬間、私は戦慄を覚えた。
それは紛れもなくFA-5だった。
だが撃たずにはいられない。
FIRE!
外れた!
フル-ドライブ=追跡開始。
縺れ合う挌闘戦に突入/ローリング・シザーズ。
接近/離脱を繰り返しながら、お互いに機を窺う。
私は奇妙な感覚に陥る。
何から何までそっくりなのだ。
鏡を相手に一人遊び<ソリタリア>をしているような。
同じスペック=果てしないイタチごっこ。
しかし、先に後ろを捕ったのは、私だった。
ロール反転。
敵機は、上昇+横転<インメルマンターン>で引き剥がそうとする。
弧を描いて、舞い踊る二羽=追う者と追われる者。
まるで天が、周囲の背景が、静止した我々の周りで、踊っているかのような奇妙な感覚に捕らわれる。
だが、それも刹那に過ぎない。
一瞬先を行く敵機が僅かに内角へ突っ込んだ。
何ッ!?
刹那、前方視界からそれが消えた。
上かっ!
上後方に敵機を視認する。
逆推進装置〈スラストリーバーサ〉が起動している。
内角に捻り込むつもりだ。
すかさず私も前上方へリバースをかける。
同時に、メインブースターのノズルベクトルを目一杯下へ。
弾かれた様に、背景は後ろへと流れ、逆立ちした敵機が飛び込んでくる。
Lock on!
照準器が前面一杯に広がる敵影を捉えた。
私は面と向かってその面を拝んだ。
これは!?
急横転〈ブレイク・ロール〉
一瞬躊躇した。
それは衝突の恐怖からではなく、なにか別の―――。
FA-5の機首の/配されたセンサ群のその奥に見えた何か。
―――それが。
それが、一瞬だが、見えた気がした。
それは、致命的だった。
しかし、やつは撃たなかった。
撃っていれば、命中率は7割を超えていたはずだ。
敵は外観から判断するに私と同じFA-5。
ならば、私と同じ攻撃性能を持っているはずだ。
だが、被弾してはいない。ログを参照しても、攻撃の形跡はなかった。
ならば、なぜ撃たなかったのか?
攻撃による私の損傷片からのダメージリスクを考慮して、だろうか?
しかし、それ以上に奇妙だったのは、敵の回避運動に入るタイミングだ。
ログを参照した限りでは、そのタイミングは、私のそれをほぼ同時。いやまったく同じと言ってもいいくらいの時間差しかなかった。
これはどういうことなのか?
反転/イタチごっこ<ローリング・シザーズ>再開。
タイミングも/傾向も/志向も、すべてが酷似している。いやまったく同じと言っていい。
ルフラン/デジャヴ。
まるで、よく知っているものを見ているかのような感覚。
敵は何を考えているのか?
真似なのだろうか?
いや、何かが違う。
後ろを捕ったのは敵機だった。
私は敵機を振り払おうとする。
そして―――。
!
私はあることに気が付く。
その仮定を確かめるべく、一気に離脱を図る。
伏線を張った上で。
私は降下横転<スプリットS>をかける。
敵機もそれに対抗すべく軌道変更運動に入る。
そして敵機は、見事に私の期待応えてくれた。
―――そうか。そういうことか。
いま、それが、わかった。
この違和感の正体が。
<Go to 5.4>
今度は何が起こるやら。
主人公のいる組織は、どういうところなのでしょう。上司は嫌な奴でしたっけ? たよりになる部下、お荷物の先輩とか、やりとりを頻繁にやりつつ、状況説明をくわていくと、読者は「世界」に入りやすくなります。