北の少年 砂海編 24
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/25 18:44:14
このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣(メタモルフ)の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。
長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;
感想のコメントはとても励みになりますです^^v
治療魔法士が見守る中、ロヴの翳す短剣の光は、ジェンの傷口にまとわりついた黒いもやを完全に消し去った。、
その後、徐々に短剣の光も薄れていき、やがて何事も無かったかのように元に戻っていった。
不可思議な魔法の行使は、すべて終わったようだ。
カンテラの灯りに照らされた光景は、おだやかな表情で眠るジェンと、その枕元で金の瞳を爛々と光らせて少年をみつめる「猫」。
短剣を翳したまま荒い息をつく、少年の姿だった。
全身から滝のような汗を流して、ロヴは翳していた短剣をゆっくりと鞘に収めた。
固く握り締めていたせいで、なかなか柄の部分から指を離すことができなかった。。
ロヴは苦労して何とか指をはがして、繊細な金の装飾と宝石に飾られた鞘をなでた。
『ロウ・ヴェインは命じる。姿を変えよ』
再び、力ある言葉をつぶやくと、短剣は闇の中でまた皮鞘の短剣に変化した。
そこまで終えてから、無表情だった少年の顔に子供らしい幼さが戻ってきた。
瞳に戸惑ったような表情を浮かべて、助けを求めるように治療魔法士のほうを見つめる。
「…ロヴ…」
「先生、もう、ジェンは、大丈夫、かな」
ロヴは、すっかり枯れてしまった声で、一息ずつ言葉をはきだした。
話すだけでも億劫なほど、少年は疲れ果てていた。
かける言葉がみつからなくて、治療魔法士は大きく首を縦にふるしかなかった。
ジェンの左腕に巻いた包帯をはずして、その傷口を確認する。
まだ新しい、淡い紅色の傷跡があるだけだった。
いずれ白っぽい傷跡が残ってしまうだろうが、もう何の心配も無かった。
たぶん、左わき腹の酷い怪我も同じ状態になっているはずだ。
ここまで確認してから、やっと言葉がでるようになった。
「大丈夫。後はジェンの目覚めを待つだけだ」
「そう…か、よかった」
初めて、ロヴの顔にかすかな笑顔が戻った。
ジェンの負傷を知ってからというもの、ロヴの表情は不安と焦燥で青ざめ思いつめたものだった。
誰もが愛してやまない邪気の無い少年の笑顔は、治療魔法士の心にかすかな陽光のように感じられた。
「君も休みなさい。後は私が見ているから」
詳しい話は後でいい。
自分がみた高度な治癒魔法の件は、あとで確認すればいい。
治療魔法士はそう判断して、ロヴを休ませたのである。
「お嬢さん、まあ、しばらく悩むのはあとにせんかね」
違約金を払うにはどうしたもんかなあ、とぶつぶつつぶやくジェンに、ハランはそう声をかけた。
ジェンはやっと自分の思いから我にかえって、目前の老人の存在を忘れ去っていたのに気がついた。
いくらロヴの祖父であり人の気配が皆無とはいえ、目前の存在を忘れ去るなんてジェンには初めてのことだった。
傭兵として培った警戒心が、いつの間にかなくなっていたという事だ。
それが信じられら無くて、ジェンは唖然としていた。
改めて自分が死にかけているという事実に、向き合わせる事にもなった。
だが、やはり取り乱すことはない。
彼女は傭兵になってから、いつも死の存在と隣り合わせに過ごしてきた。
ある意味、死は最も身近な存在だ。
それに死にかけたのは、これが最初でも無かった。
「すまない。ハラン殿、あなたのことを無視してしまった」
ジェンはそう言って、深々と頭を下げた。
「いや、まったく、お前さんって人は」
ハランはとうとう、声をたてて笑い出した。
先ほどからのジェンの反応は、ことごとくハランの予想を裏切っていたのだ。
「いや、孫はいい人と巡り合ったものだ」
そう言ってハランは笑い収め、真剣な表情で話しはじめた、
「今、私の孫がお嬢さんを生かそうと努力をしていてな」
「私を?どうやって?」
ロヴはただの少年だ。
確かに、何かの魔法で守られてはいるようだが。
そう疑問に思ったとたん、ハランはその考えを読んだかのように話を続けた。
「ロヴは無意識に、魔法を使っているのだ。お嬢さんを死なせたくないばかりに。たぶんやりとげるだろうな。あれの力は、底知れないから」
ハランの灰色の目が、ジェンの視線を捉える。
彼の目は真剣そのもので、視線をそらすことを許さなかった。
魅入られたように、ジェンはだまって彼の話を聞いていた。
「今しか伝えられないから、どうか忘れないでほしい、傭兵ジェン。今までは私がロヴを守ってきた。それは彼が最も私の存在を、大切に思っていたからだ」
(一年近くも、無防備なロヴが無事に過ごせたのは、あなたのおかげだったのか)
「そうだ、守りの魔法の正体はこの私だ。が、それももう終わりだな。ロヴが最も大切に思うようになったのは、傭兵ジェンになった」
ハランの目に、再びほのかな青い影が浮かんだ。
「孫も成長したものだ。人を恋するようになったとは」
なんだか、そういう風になってしまいました><
ロヴは自覚してるんかいな?
たかりんの脳裏にそんな映像が浮かんだんですか?
そんな風に感想をもらうと、すごく嬉しい。ありがとう^^
ロヴにも恋の自覚があるのかな??
ラトちゃんの文章はすごく美しい情景が目に浮かぶけど、
前半のカンテラの明かりに照らされたベットサイドの光景はまた
絵画のようですごく素敵でした。
どうもながらくお待たせしましたm( )m
喜んでいただき、幸いにおもいます^^
そのようです。ロヴがそういってますので^^;
ハランさん、いかがでしたでしょうか?
ロヴじゃなく、ジェンの枕元にたちましたがw
ロヴは やっぱりジェンに恋してましたか~ (〃ω〃) ポッ
ジェンは・・・? 恋の行方も楽しみです♪
そうかもしれないね。
強い女性は私も好きだけど、ジェンは??w
憧れたんだと思います。
男性でも女性でも憧れると思いますwww
ロヴは、大人の階段を少し登ったかなw ?
しかしジェンのどこがよかったんだろう??W
立派な人になったので安心ですね^^
でも、ジェンに恋心するなんて
はずかしい様なうれしい様な......(*^_^*)