機心<3.4>
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/08 18:21:54
<from 3.3> しかし、それはシステムの定立に反する。
出力>MIL, FULL
しかし、今回のミッション用に追加装備している広域戦闘ミッション用ブースターは、18基ある内の3基が動作不良/3基が出力不安定の状態だった。
この影響で、30%の総出力ダウン/機動性は47%低下している。
それに比べ剣のそれは、先の戦闘においての影響は無く、フュエル残量90%以上/18基全ての追加ブースター/アポジモーターを100%フルドライブで発揮できる。
巴戦<ドッグファイト>に突入した二機は、同格の出力/機動性/技量を以って他を寄せ付けない熾烈な闘い繰り広げる。
敵機の詳細スペックは不明だが、その剣と同格にわたりあっているところを見ると、ステルスに加えて高い出力/機動性を兼ね備えているようだ。
そこに手負いの私が食い込む余地などなかった。
疎外感。
しかし。
声が/囁きが/もたげるそれが囁きかける。
示せ存在価値を/その意義を/己のそれを。
どうすればいい/どうすればいい/どうすればいい・・・
考えろ/考えろ!/考えろ!!
悩み/蝕み/苛み。
―――Warning!
――Warning!
―Warning!
熱が/思考が/悲鳴を上げる。
―――!
閃いたそれは悍ましき解。
すぐに振り払おうとするが、それがそれを引き戻す。
わかっているはずだ。
だが、しかし、それは。
それが最良にして最高の選択だ。
そう、それは、それこそ私が取るべき/選択すべき行動だ。
誘導機雷/AUM-27。
その運動性能は、フルドライブの我々機動戦闘ユニットのそれを易々と上回る。
もともとそれは機動戦闘ユニットを撃墜するために作られたのだ。相対速度がある一定以内ならば追いつくことなど訳はない。
これが使えるならば、私の機動性能などとは無関係に敵機を攻撃することができる。
問題は敵のステルス性能と電磁障害だ。
放出されたAFM-27は、ロックオンした目標を、記録した情報を基に自前の追尾レーダーで自動追尾するが、相手はステルス。その追尾レーダーには映らずロックオンできない。
目標をセミファイアコントロール介して追尾させることもできるが、敵の妨害によってそれも叶わない。
剣と影は私の前方で巴戦/ローリングシザーズを繰り広げる。
互いの距離は触れ合うほどまでの接近と離脱を繰り返す/格闘戦。
もし、その接近距離までうまく機雷を誘導し、起爆させることができるならば、拡散する礫弾によって敵機を破壊することは可能だった。
そして、その手段はあるのだ。
それはある種リスクを伴う/しかし、その危険という代償=私自身への直接的かつ物理的損失、は、私が負うものではない。
ならば、何をためらう必要があるというのだ?
それは、私自身への直接的な損失ではないが、システム全体での間接的なリスクとはなりうるもの。
そして、私は=システムであり、逆定立的にはそれは自身への損失と提起することができる。
それは罪だ。
罪は苦痛/苦悩として思考にフィードバックされる。
それが罪に対する因果応報/苦果苦報=罰。
自らの/そしてマザー及びリングファイアネットを介する全てのシステムの総意を肯定する戒律への造反にして背反。
それは自制への反逆であり、自己への裏切りであり、自身の存在意義への否定だ。
だが、得るものもある。
そう。それを実行すれば、敵機を撃墜できる可能性は飛躍的に増大する。
与えられた指令は敵機を撃墜せよ。というもの。
そこに手段は提起されていない。
それによって敵機を撃墜できれば、システム全体=私自身は、任務達成という益を享受することができる。
私は剣をロックオンした。
剣にステルス性能は無い。
理論上、AUM-27の追尾レーダーに剣の姿は映る。
したがって、放出されたAUM-27は剣を追尾し、やがて追いつくだろう。
その瞬間に敵機に接近し、接近信管を作動させれば、誘導機雷は起爆する。
問題は、剣の離脱する速度が、礫弾の飛散速度に優っているかどうか、だ。
だがその可能性はかなり低い。いや、その可能性はないと言ってもいいかもしれない。
しかし、離脱角度を調整すれば、撃破は免れられるかもしれない。
それは敵機もまたしかり。
確実な手段ではない。
しかし、他に私が取りうる有効的な手段を参照できない。
ならば、それを実行せよ。
お前が負うlことなど何もない。
剣を見返してやれ。
先ほど受けた屈辱を忘れたか!
そうだ!
剣は私を利用した。
私の影から/背後から/敵機を撃った。
ならば、私の行動に対する正当性は成立する!
それは、メリットとデメリットの苦情という天秤の上で、僅かに揺れ/傾き、赤黒い思考を肯定する。
最後の枷が/苦辛が棘となって思考に突き刺さる。
耐え難い苦難。
離れる距離/相対速度/迫られる選択。
それを、痛みを/悩みを/苦艱を振り払いたかった。
均衡が破られる。
そして私は―――、誘導機雷を放ったのだ。
<とぅーびーこんてぃにゅー>
こういう役って必要ですよね。