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■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝(10)

■近代文藝之研究|研究|囚はれたる文藝 第二(4)

こゝに嬉しきは、カントかな。智識、理性に無上の權威をば持たせながら、傍らに一種の別なる力あることをも忘れず、純理性、實理性の上に、更に微妙なる判斷力といふものゝ存在を認めて、而して此の判斷力の重なる發現は、快不快等の感にありとなす。味ひ深く、優しく、温く、懷かしき觀方にはあらずや。見られよ、カントが場を降るとき、青赤の兩道は殆んど相合せんとしてまた分かれたり。
次いで心ゆくものは、ショーペンハワーが意志の説なり。彼れに取りては一切の根元實在は意志なり。されども我れは此の所に於いて意志といふ名を嫌ふ。我が内的經驗には情といふ名こそ一層明瞭にして事實に切なるを覺ゆれ。
我れとショーペンハワー等と、押さへたるは同一實在の活動ならんこと有り得べき結論なり。されども之れを意志と呼ぶときは、黒、冷、力の氣餘りに盛んなり、我はむしろ、熱あり、光りあり、色彩あり、香芬ある活動を想像して、情念と呼ぶものに與せんと欲す。



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*註1:智識
「識」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shiki.jpg

*註2:更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg

*註3:判斷力
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg

*註4:認めて
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg

*註5:温く
「温」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/on_atataka.jpg

*註6:青赤
「青」の正字体。「月」は「円」。
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:兩道
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註8:分かれたり
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg

*註9:次いで
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg

*註10:説なり
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註11:此の所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註12:嫌ふ
「嫌」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ken_iya.jpg

*註13:内的經驗
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。

*註14:情といふ名・情念
「情」の正字体。「月」は「円」。

*註15:一層
「層」の旧字体。「曽」が「曾」。

*註16:黒
「黒」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koku_kuro.jpg

*註17:熱あり
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。下記 URL の文字は作字したもの。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg

*註18:色彩
「彩」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sai_irodori.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2010/05/03 00:31
●七さん:
こんばんは♪(^_^)/
目を留めてくださいまして、ありがとうございます。
これは、僕が書いているわけではなくて、
僕もほとんどわからないままに、ただ書き(打ち)写しているだけです。
でも、なるたけ、理解はしたいとは思ってますが……。(^_^;

この文章のモトになっているのは、
国立国会図書館のデジタルライブラリーというところにあるのですが、
でも、そこに出ているのは画像(書籍をスキャンしたもの)なんです。

画像データですと、ただ見るぶんにはいいのですが、
文章をそのまま引用することができません。
文字データとして、テキスト化しておくと、
たとえば学生さんが、卒論で上の抱月の文章を引用する場合、
簡単にコピペできます。
あるいは、抱月の書く癖を研究テーマにしたいと思っている人が、
抱月は一人称を「我」と書いたり「我れ」と書いたり「吾」と書いたりしていて、
では、その比率はどうなっているのか、と調べようとする時にも、
画像データだと、いちいち1つずつチェックしながら調べないといけませんが、
文字データとして、テキスト化してあれば、文字検索すればすぐ分かる利点があります。
ほかにも、文字データにしておくメリットはもっとあると思います。

島村抱月は、漱石や鴎外ほどメジャーじゃないので、
著作のごく一部しか、文字データ化されていません。
なので、少し抱月にかかわりと興味を持っている者として、
細々とでもいいから、抱月のこの『近代文藝之研究』という著作を、
文字データ化してみようと思っているんです。

『近代文藝之研究』には、論文的な物のほかにも、
書評やエッセイ的なものも入っています。
もしかしたら、そのうち七さんの興味あるテーマのものが出現するかもしれませんので、
これに懲りずに、たまにチラッと覗いてみてやってください。m(_ _)m
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2010/05/03 00:08
(-"-;)むつかしい言葉ですね。



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