機心<2.2>
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/01 16:34:55
<from 2.1>
『右翼が来る、援護しろ』
教導パッケージからの指示。
《了解 Roger》
と、我と同盟機の各機が応じる。
敵右翼面は、イージスタイプ/ダイアモンドタイプの複合陣形。
斥候攻撃ユニットと先鋒フリゲートが接近しつつある。
邂逅まで20分を切っていた。
直進してくる敵の標的は、おそらく我らの後方、友軍左翼面のイージスタイプだろう。
敵両翼が展開しているところを見ると、両翼から同時に仕掛けるシザーズアタックを呈している。
対する我が友軍はダイアモンド陣形でそれを迎え討つ。
邂逅まで残り10ミニッツ。
敵フリゲートの砲火線上に乗らぬよう、進行ベクトル域を広げたランダムローリングでそれを迎える。
3min/2min/1min---Go!
《Pod13、交戦! Engage!》
敵の火線の火を噴く密度が一層濃くなる。
しかし、それを恐れず、デルターフォーメーションで敵の懐へと切り込む。
相対速度は+20/距離ゼロへの急落下。
交差。
それが反転。たちまち内にマイナスへと転ず。
それは僅かマイクロセコンドの瞬き。
しかしその間に、敵の火線を擦り抜けやり過ごし/機雷を打ち込む。
互いに崩れる陣形。
閃光と共に墜ちて逝く、敵/味方。
火線が、死線が、そこにはあった。
そしてそれ以上の戦慄と興奮が!
敵の戦列を抜ける。
反転。
再び戦列を立て直す。
鏃陣形=アタックフォーメーション。
出力最大=フルドライブ!
追撃に入る。
機動性はこちらの方が上手だ。
それを上手にとって喰らい付く。
一撃を持って一機ずつ斬り墜とす。
散り散り/各機散開/巴戦と遷移する。
ドッグファイト!
制域権を死守するため/己が役目を果たすため/そして、その存在意義を示すために。
我は、我の敵を撃つ!
それが、それこそが我=DX-70/機動戦闘ユニット。
我は、翼を持つ者。鋼の翼を持つ者也!
そうだ。
我は敵機を追っていた。
既に、弾倉は底を尽き、誘導機雷も残ってはいない。
しかし、敵を追った。
前方には友軍機がいたからだ。
その進行ベクトルと、予想回避進路は交差している。
そして、その友軍機は攻撃するための残弾が残っている。
その情報は、錯綜するリングファイアネットに瞬く間に波及していった。
したがって友軍機にもそれは伝わったに違いない。
だが、反応はなかった。応答及びその素振りの認識はできなかった。
その友軍機は教導パッケージを積んでいたのだ。
我の任務は、ミッションを遂行することである。
その目的は、敵機を一機でも多く撃墜するという結論に帰結する。
その手段は厳密には問われなかった。
あらゆる可能性/選択可能な手段の中から最も効率的かつ有効的な行動を選択し、実行する。それがマザー及び教導パッケージから発令された行動選択原則であり、我の起動理念である。
故に我は、その原則に基づき行動した。
敵機は、我の火線上からより長く逸れるように軌道変遷するよう行動する傾向がある。したがってその退路を友軍機の予想進路の方へ振り分ければよかった。
そして強制的に敵機を、その予想進路を友軍機の想定軌道ベクトルと交差、衝突するよう仕向けたのだ。
そして、教導パッケージ<ルーベン>と敵機は衝突した。
<とぅーびーこんてぃにゅー>
まだ機械だけが闘っているイメージはぬぐえません