機心<1.1>
- カテゴリ:自作小説
- 2010/04/21 22:33:32
1
Reloading...
ブリーフィングルーム内に文字が現れる。
ソリッドのメインフレームがブリーフィングルーム内にシステム・ログを再生する。
Record No.124208470924
UTC : X*/YY/#!] 00:01:00
記録はそこから始まっている。
時刻は夜時間。
LINK>PN######....
...
NOW LINKING…
<接続>
システムのセットアップが完了する。
光学映像記録。
白い大地に黒い空。
月面の風景。
場所はルナティック技研クルツ研究工廠。
プロジェクトの試験運用を行う基地のひとつ。
それが誕生した場所。
Mission No.#########>>>>>>
..............
..............
..............
以下ミッションの内容項目が永延と続く。
この記録は拠点防衛システム、DX-70の飛来侵入体迎撃ポッドのものだ。
ポッドは、パーフェクトクローズド=完全自律モードを有し、侵入体によるセンサ撹乱や太陽フレア嵐下での防御管制システムの支援なしに単体での迎撃を行う。
その形状は正八面体/テトラポッドのような金平糖。突起には迎撃用のメーザーと誘導爆雷、そして姿勢制御のアポジモーターを装備している。
ミッション・データの転送が完了するとポッドはマスドライバで投射、迎撃へと向かう。
Mission standby ready>>>>
Run,Mission
マザーからのリンクが切断され、制御管制が甦る=覚醒。
そして、間もなく宙へと放り投げられるのだ。
ドライバのハードポイントに固定される。その場全体が電荷を帯び始め、装甲外の磁場が反転。1/6地球引力から引き剥がすマザーのリニアレールが起動したのだ。
射出口に至るまでに第二宇宙速度が付与される。マザーの恩恵だ。
もし、マスドライバが何らかの原因で使用できない場合は、離架用ブースターロケットを装備するか、自前の鋼の翼=12chベクタードスラストで飛び立つしかないが、前者は発進までの時間が、後者は戦闘飛行時間の大幅な減少という大きな課題があった。
振動。
翔け抜ける戦慄=磁場の本流。
Lifting out>
周囲の風景が後方へと去る。
跳ね上がる高度数値。ほとんど無限と言っていい世界へ。
制約と数値で埋め尽くされた宇宙へ。
飛行管制システムおよび交通管理システムとデータリンク。
全方位索敵モード。
アポジモーター起動/最初の目標座標へ。
哨戒飛行開始。
飛行可能領域はこれまでのミッションと同じく、クルツ管制域を主とするマザーを中心とした半径1000kmの防衛域。
哨戒飛行中のポッドは4=友軍機。
ミッション開始後00:12:13:24。
マザーより通達。
《哨戒飛行経路w13894から軌道変更し、ポイント198:128:227へ向え》
命じられるがままに軌道変更スラスト。
噴射時間00:00:24:90。
ポイント到達予定00:12:23:00。
支援友軍ポッドなし=単独任務。
十分後。
光学監視センサ及びWERレーダーから機影を感知。
邂逅まであと数分。
既にファイアコントロールは起動している。
灰色の宙に浮く物体。
それは接近してくる‘モノ’に過ぎない。
唐突に、
《this is enemy! あれは、敵だ!》
とマザーが告げる。
灰色のドローン/仮想敵機。
しかし、それは、その一命で禍々しい嫌悪の対象に変わる。
そう、あれは敵だ。
敵は撃墜しなくてはならない。
それ以外に選択の余地はない。
ファイアコントロール>リンク>センサシステム。
可能な限り速やかにそれを討たなくてはならない。
マニューバリングモード>モードF。
スラスト、オン。
軌道変更。メーザーを照射。
<Pod No.13 Engage! 戦闘開始! >
とマザーに報告。
戦闘機動で敵機に接近/宣戦布告する。
誘導機雷を射出。
それは弧を描いて、飛んでゆく。
すかさず回避運動に入る。
刹那、閃光。
接近信管が作動/誘導機雷が炸裂し弾頭の礫弾をばら撒く。
敵機は跡形もなくデブリに変わる。
そして、その破片は超高速で拡散、これが危険だ。
ばっちい敵の破片。
浴びない様に斬り抜ける。
これがなかなか難しい。
シミュレーションでは何度となく痛い目にあった。
しかしそれも過去の話。鮮やかにかわして見せる。
<Pod No.13 splash enemy! 敵機を撃墜>
マザーより回答。
《敵機の撃墜を確認した。速やかに帰投せよ》
<了解>と返信。
反転し、帰還軌道へ。
マザーからの誘導波の波に乗って、帰還シークエンスを開始。
帰投は発進よりも難しい。
処理すべき相関情報の量が発進より圧倒的に多いからだ。
<go to 1.2>
無機質な機械だけが動いている──どういうに
人がドラマを生んでいくのか注目するところ。